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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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149話 消える敵

戦況はスキップします。

 聖華せいかはフローリーから一定の距離を保ちながら闘っている。彼女の攻撃に敵意は無い──しかし。



(ヒビが入ってたとは言え、あたしのバリアを突進で壊したんだ。あの子の体には絶対触れられない……!)

「なんで逃げるんですか……! 私は、人形じゃないのにっ……!」

「周り見ずってとこは認めるのかい?」

「っ……!」


 フローリーの表情が変わった。嫌なところを強引につつかれたような顔をした。

 彼女は聖華に近づくのを止めた。ただうつむいて、目元辺りを手で擦っていた。



「……もう、分からないんです。どうすればいいのか、何をしたらいいのか……。私には、もう──アタラとアダムしか居ないんです……」

「……そうかい。ただね──」


 聖華は彼女の目を真っ直ぐ見つめる。

 それに応えて、彼女も聖華から目を離さなかった。



「──本当に、その行動は正しいのかい? 誰かに命令ばかりされてないかい? もしそれに気づけるようになったら……新しい出会いがあるかもねえ」


 聖華は自分のことと重ねて話す。

 かつて黄龍おうりゅうの命令に従うだけで、何も考えずに闘っていた、過去の自分に話すように。



「詳しくは言わないけど、今思ったらあたしもあんたと似た境遇だったんだよ。でも、自分の過ちに気づいた。だから、今はこんな最高の場所で、最高の仲間と居る」

「──どうやって気がついたらいいんですか、そんなこと」

「……この闘いが終わったら、きっと気づくさ。だからあんたは──安心して、何も考えるな。全力であんたの仲間を信じてな」


 聖華は戦闘態勢をとる。



「……あたしが、暴走するあんたを止めといてやるから」



   *



 白虎びゃっこはアダムの攻撃を余裕の表情で回避する。



「はっ、鈍すぎだろ。リハビリにもならねぇなぁ」

「なになに、この人! 煽り気持ち悪すぎて吐き出しそう! なんなら怒っちゃった! 殺そうか? 殺そうね!」


 アダムはナイフをひたすらに振り回している。ただ、がむしゃらではなく、白虎の急所を的確に狙っている。



「一つだけ、よりムカつくことを教えてやる。俺様は無能力だ。能力の発動はもうできねえからなぁ。それでもお前に勝てるがな」

「ああ、本当にムカつくことだったね! そんなに速く死にたいの? 速く死にたいね!」

「……何をやってるんだ、あいつは」


 白虎の様子を見て、あやはつくづく彼をここに連れてこなければよかったと後悔した。



「よそ見している場合か、おばさん! くらえっ!」


 アタラは小馬鹿にしたような声で銃を撃つ。

 彩のこめかみを銃弾が貫く。噴水のように血が噴き出し、彩は倒れた。

 しかし、幻想のように彩は消えた。



「ちっ、弾が無くなっちまった。本当に厄介だな、その能力」


 アタラは特に驚きはしなかった。むしろ、既に何度もやられている技に辟易へきえきとしていた。



「お互い様だ。いくら分身を出そうと、持ってる武器を奪われたら手出しできん」


 アタラは背後を向く。そこには、自分の手に息を吹き込んで寒さを耐える彩の姿があった。



「相性は互いに最悪……ってところか? おばさん」

「そのようだな──それと、私は年増ではないぞ」

「あたしより年がいってんだ、そりゃおばさんだろ?」


 アタラは目線を自分の手元に移す。彩の分身から奪い続けた武器が山のように積み重なっている。



「随分と溜まってきたな──そろそろか。おいアダム! 行くぞ!」

「やるの? やろうね!」


 アタラは眉間に人差し指をあてる。一方、アダムは持っているナイフを舐める。



「いくぞ──【兵士完成(イージー・アーミー)】!!」

「【存在性の証明(ビカム・クリア)】!」


 アタラの手元から武器がいくつか消滅する。それはアダムとフローリーに手渡されたようだ。



「──そういうことができるのか」


 彩は顎に手を当てつつ、分身を出しすぎたことを反省した。

 とは言っても、アタラの能力の範囲や効力を調べるためにしたことだったので、間違いとは言いきれない。



「厄介になる前にケリを──」


 彩がそう言いかけたときだった。アタラの姿がどこにも見当たらない。



「……さっきいたあの男の能力か? 自分だけじゃなく、味方の姿も消せるのか」


 彩は妙な気配を感じ、すぐさま分身と場所を入れ替えた。──直後、交換された分身は銃声とともに崩れ去った。



「危機察知能力すげえな、おばさん。その通り、あたしはアダムの能力で姿を消したまま銃を撃つことができる。アダムの『犯人蔵匿罪はんにんぞうとくざい』は姿隠しの能力。自分が攻撃しようとする瞬間は解除されるが、周りにつけた場合は半永久的につけられる」

「っ……」

「さあ、始めようぜ?」


 アタラは傲慢な態度で言った。

ご愛読ありがとうございます。次回もよろしくお願い致します。

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