148話 信用に足らない見張り
【戦況】
①美羽・シャイニ VS 狩魔
シャイニの能力により、狩魔の死亡という形で決着がついた。しかし、和也と優貴の戦闘で発生した瓦礫が降り、シャイニの背中を押した美羽がその瓦礫の下敷きになってしまう。シャイニは美羽を連れてあるアリスを訪ね、美羽は一命を取り留めた。
②サーシャ VS ローラン・ジョニー
ジョニーの能力を使ったローランの策略により、サーシャは致死率100%の状況に追い込まれる。その中、ローランは命を助ける代わりに全てを話す取引を持ちかけた。そしてサーシャはその取引に乗ることにした。
サーシャの時間稼ぎによって、その場に眼音が到着した。彼女の能力によって、ローランとジョニーを制圧した後、近くで合流することにした。
③菫 VS ルドラ(天舞音・芽衣は別方向へ)
菫は椿の死亡により、真の能力『詐欺罪』を使う。天舞音と芽衣と別行動し、ルドラの元に到着。本体に『窃盗罪』を使うと、ルドラの暴走は停止した。その後、アリスの元へ。
④椿 VS 頼渡
椿は突如発現した住居侵入罪の力で、ノアの介入をくぐり抜けて頼渡をナイフで刺した。その後、【暗殺の一夜】の代償で、ノアを殺せずに椿も命を落とす。
⑤和也 VS 優貴(ノアは頼渡の元へ)
優貴の一撃により、下の階にいたシャイニと美羽に被害が及ぶ。和也との話し合いの上、優貴は和也と共に行動することを決めた。
⑥届称 VS 有象無象の罪人共
ノアにより、届称・眼音は和也と分かたれてしまう。届称は眼音を撤退させる時間をかせぐため、行き着いた先に居た罪人共に立ち向かう。
⑦翔 VS サミュエル
サミュエルの能力を突破した翔は、撤退するサミュエルと希を尻目に、バードルードと共にノアの所へ向かった。
⑧バードルード VS 希
希の能力空間で混乱したバードルードは、第三の人格を出す。バードルードの能力によって精神崩壊寸前に追い込まれた希は空間脱出とともに、倒れる彼を置いて休息をとった。その後は上に同じ。
⑨聖華 VS アダム・フローリー・アタラ
日本に攻め込んできた多くのRDBのうち、姿を消す能力者のアダム、ドジで人を攻撃するフローリー、京之介と和葉の武器を奪ったアタラの三名が聖華を攻撃する。
聖華が苦戦する中、かつての同僚である彩と白虎が聖華の前に現れた。
複雑化した戦況の中、誰がどのような勝利を掴むのか。
菫たちの元に戻った希とルドラは、共に気に食わない顔をしていた。
「……終わったの?」
菫の追求に、ルドラは笑顔をつくって頷く。
「じゃあ、これからあんた達はどうするの?」
「──希をここに残して、自分たちはノアのところへ行きましょう」
「……危険性は?」
「低いっス。でも万が一のために、自分の能力でつくったこれを置いておくっス」
ルドラは手のひらから、無数の足を持つ生き物を溢れさせた。その生き物は生きる意味を与えてもらって、嬉しそうに粘液を吐き出す。
シャイニはその光景を見て、思わず後ずさりした。
「うげっ……ごめん。その能力、あんまり好きじゃないかも……」
「はは、そうっスよね。でも能力から出たものなんで、完全な命を持ってるわけじゃないっスよ。だから君たちにこれといった敵意を向けることはないんで、安心して欲しいっス」
ルドラは、シャイニの不快感の理由が『気持ち悪いから』とは知らず、それらを地面へ放す。
「ぎゃぁぁっ!! 何してるのっ!?」
「これらには、シャイニさんの仲間さんを守る命令を下しました。ああ、彼女から離れてないと襲いかかるかもしれないんで──って、その心配はなさそうっすね」
ルドラが言い終わる前に、シャイニはアリスを抱きかかえて美羽から身を離していた。
「ちょっとっ! アリスちゃんも巻き添えにする気なのっ!?」
「あはは、アリスは問題ないっスよ。そいつらは自分の血液で作ってるんで、自分やその血縁──まさにアリスを、攻撃対象に選ばないんス」
「いやいや、そうじゃなくって、それ以上に……あれを近づけさせることが──」
「シャイニさん……? どうなされたのですか?」
「……何でもないよっ! 安心してっ!」
それらは美羽の体を囲むように並ぶと、その場で停止した。先程まで騒いでいたのが嘘のように、足一本も動かさない。
「これで良しっス。希が彼女に手を出したり、建物が崩壊して天井が降ってきても、こいつらは全力で守ってくれるっス」
「ほう。こやつらは強いのか? そもそも、わっちの能力で彼女を連れ出すことはできるぞ?」
「あんたの能力に殺傷能力はないし、彼女を定位置から動かすこともできないっスよね? そもそも、攻撃する元気もないでしょう」
「見抜かれておったか。その通り、わっちも先程負けて逃げて来たばかりなのじゃ。ここから逃げる前に、アリスの容態を見に行こうとすれば、先客がおった──それだけじゃよ」
希は近くの壁に背を乗せる。
「ほれ、行くなら行くとよい。わっちはここで、この戦争の顛末を見ることにする」
「じゃあ、出発しましょうか──シャイニさん、大丈夫っス。会ったばかりなんであれかもしれないっスけど、どうか自分を信じて欲しいっス」
シャイニが美羽を心配する目を向けていたのを見て、ルドラは優しく微笑む。
「……うん、分かった。ルドラさんを信じるからね」
これ以上何も失いたくない──その気持ちが全面に現れた表情だった。
最近文量が少なくなってしまい、申し訳ございません。
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