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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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146話 狂気という名の善意

【戦況】


美羽みう・シャイニ VS 狩魔かるま

 シャイニの能力により、狩魔の死亡という形で決着がついた。しかし、和也と優貴の戦闘で発生した瓦礫が降り、シャイニの背中を押した美羽がその瓦礫の下敷きになってしまう。シャイニは美羽を連れてあるアリスを訪ね、美羽は一命を取り留めた。


②サーシャ VS ローラン・ジョニー

 ジョニーの能力を使ったローランの策略により、サーシャは致死率100%の状況に追い込まれる。その中、ローランは命を助ける代わりに全てを話す取引を持ちかけた。そしてサーシャはその取引に乗ることにした。

 サーシャの時間稼ぎによって、その場に眼音まおが到着した。彼女の能力によって、ローランとジョニーを制圧した後、近くで合流することにした。


すみれ VS ルドラ(天舞音あまね芽衣めいは別方向へ)

 菫は椿の死亡により、真の能力『詐欺罪』を使う。天舞音と芽衣と別行動し、ルドラの元に到着。本体に『窃盗罪』を使うと、ルドラの暴走は停止した。その後、アリスの元へ。


椿つばき VS 頼渡らいと

 椿は突如発現した住居侵入罪の力で、ノアの介入をくぐり抜けて頼渡をナイフで刺した。その後、【暗殺の一夜(アサシン・ナイト)】の代償で、ノアを殺せずに椿も命を落とす。


和也かずや VS 優貴ゆうき(ノアは頼渡の元へ)

 優貴の一撃により、下の階にいたシャイニと美羽に被害が及ぶ。和也との話し合いの上、優貴は和也と共に行動することを決めた。


届称かいしょう VS 有象無象の罪人共

 ノアにより、届称・眼音は和也と分かたれてしまう。届称は眼音を撤退させる時間をかせぐため、行き着いた先に居た罪人共に立ち向かう。


しょう VS サミュエル

 サミュエルの能力を突破した翔は、撤退するサミュエルと希を尻目に、バードルードと共にノアの所へ向かった。


⑧バードルード VS のぞみ

 希の能力空間で混乱したバードルードは、第三の人格を出す。バードルードの能力によって精神崩壊寸前に追い込まれた希は空間脱出とともに、倒れる彼を置いて休息をとった。その後は上に同じ。


聖華せいか VS アダム・フローリー・アタラ

 日本に攻め込んできた多くのRDBのうち、姿を消す能力者のアダム、()()で人を攻撃するフローリー、京之介(きょうのすけ)和葉かずはの武器を奪ったアタラの三名が聖華を攻撃する。  

 聖華が苦戦する中、かつての同僚であるあや白虎びゃっこが聖華の前に現れた。



 複雑化した戦況の中、誰がどのような勝利を掴むのか。

 天舞音あまね芽衣めいは、すみれと別れてから一本道を突き進んでいた。



「……この道、本当に誰かのところに着くんですかね?」

「うぅん……と、とにかくまだ進んでみよう! そこの曲がり角の先にあるかもだしさ!」


 天舞音は誤魔化すように笑うと、奥の曲がり角を指さした。



「とにかく早く接敵しないと……」

「君はまたそうやって──まあでも、そうだね。ボクたちぐらいじゃない? あまり闘ってないの……」


 ニヒルな笑みを浮かべ、曲がり角を曲がった。その先の部屋に居たのは──



「じゃあ、ここをダイドコロにしよーよ!」

「ダメ! ここはカイダンにしないと、この二かいにつながらないでしょっ!?」


 不自然なほど白い、黒い格好の少女二人の姿だ。少女たちは天舞音と芽衣に気がついたらしく、ぱあっと笑顔を見せた。

 あまりに明るく純粋な笑顔に、芽衣は若干戸惑う仕草を見せる。しかし、隣で臨戦態勢に入る天舞音を見て目を丸くした。



「ノワルとブラン──油断しないで、芽衣ちゃん」

「あの子たちをご存知なのですか?」

「うん……前にあの子たちと闘ったんだけど、酷く厄介だったよ。白い髪のブランは『周囲の罪人の欠点を増幅』させ、黒い髪のノワルは『周囲の罪人の利点を欠点』にする。発動される前に、短期決戦でいくよ!」


 天舞音はそう言って深呼吸する。ついでに気持ちを落ち着かせると、「《発動》」と言う。

 しかし──



「っ……!? ううっ……」

「あ、天舞音さんっ!? 大丈夫ですか……?」

「──大丈夫だってば、うるさいなあ」

「……え?」


 芽衣は自分の耳を疑った。しかし彼女のその、明らかに苛立っている表情が、自分の聞き間違いでないことを裏付けていた。



「まさか、この子たちは既に能力を……? 天舞音さんの能力の利点と欠点は……ええと、なんでしたっけ……?」


 罪人はふつう、よっぽどの事がない限り、自分の利点や欠点を意識して闘わない。他の罪人ならなおさらだ。


 天舞音のこの様子を見るに、利点か欠点のどちらかは『感情の起伏』に関するものだろう。

 そしてなぜか彼女は動かない、というより動けなさそうだ。つまり、もう一つの方は動きに関する何かだろう。



(私のは『俊敏性の上昇』と『出血量の増加』。ということは、能力を発動したら動きが遅くなって出血量もより増してしまう……。──それよりは)


 芽衣は能力を発動せず、二人の少女に近づいた。



(さすがに、私一人でこの子達を抑えることはできるはず……。能力を発動しないで二人を──)

「えへへ、おねえちゃん」

「これ、なーんだ!」


 白と黒の上着をそれぞれ脱ぐ二人。その体に巻かれていたのは──大量のグレネードがくっついた帯だった。



「……なに、してるの?」

「なにって? もしかしてこれがなにかわからない──」

「知ってるよ、爆弾でしょ!? それで何しようとしてるのって聞いてるの……!」

「ん? もしおねえちゃんがちかづいてきたら、これをどかーんするんだよ?」


 ……無垢。それは、鳥肌が立つほどの無垢な顔だった。まるでそれが当たり前みたいな、さも常識みたいな──



「……やめ、なよ。悲しむ人も、いるんだよ……?」


 後ろで天舞音は泣いていた。感情の起伏が激しいにしろ、それを否定する気持ちは芽衣と同じようだ。



「そうだよ……命をそんな軽く見ないで。世の中──特に私たち罪人は、生きるだけで大変なことなの。中には生きたくても死に方も選べないで死んだ人がいるの……! だからそんなこと──」

「そんなひとがいるんだ……」

「かわいそうだね……」


 まるで他人事みたいに、彼女らは言う。



「だって、じぶんでしにかたをえらばないとリッパなレディになれないんだよ?」

「なのに、しにかたもえらばせてくれないなんて……かわいそうだよね、ノワル」

「うん、わたしたちはちゃんとえらぼうね、ブラン」


 芽衣はこう思ってしまった──あまりにも狂っていると。どうしてこんな考え方になってしまったのか。彼女らも、自分と同じように()()()()()()()()()なのだろうか。



「……はあっ、やっと解除できた。まさか、既に二人の能力が発動してるなんてね」

「天舞音さん、大丈夫ですか?」

「うん、とりあえずはね。……にしても、どうしようか? 百歩譲って──芽衣の言う通り、彼女らを殺すにしても、近づくだけでボクたちも爆発に巻き込まれる」


 天舞音の眉間にシワを寄せた表情を見て、芽衣も不安になった。



「──そうだ!」


 天舞音はこの状況を打破する策──いや、()()を思いついた。



「ノワルちゃん、ブランちゃん。実はボクたちも──立派なレディになりたいんだ! ね、芽衣ちゃん」

「え……? あ、う、うん! そうなの!」

「そ、そうなの?」

「ほんとうに?」

「本当さ! だから、君たちと同じように死に方を選びたいんだ! ──だけど、爆弾で死ぬのって痛いらしいよ? ボクはそういった死に方は嫌なんだよね……。だから、他の方法を一緒に考えてみない?」

(もし彼女らの狂気が()()なものだったら、きっと聞いてくれるはず……! 頼むよ、これ以外でこの状況を抜け出す方法なんてないんだよ……!)


 天舞音と芽衣の能力では、単なる手榴弾に対する対処法がなかった。だから、話術でどうにかするしかなかったのだ。

 ブランとノワルは後ろを向いてヒソヒソと話している。……天舞音と芽衣に聞こえる声で。



「バクダンっていたいの? ぼすもかるまおねえちゃんもそんなこといってなかったよね?」

「わたし、どかーんしたことないからわからないや……。でも、あのおねえちゃんたちもリッパなレディになりたいんでしょ? つまり、わたしたちのミカタ?」

「たしかに……! うん、ミカタだよ!」


 ノワルとブランはこちらを向いて、向日葵ひまわりのようにはにかむ。



「じゃあいっしょに、ナットクできるしにかたをさがしにいこう!」

「もしかしたら、ぼすが知ってるかも……! おねえちゃんたち、ついてきて!」

「う、うん! ありがとう! ……ほら、芽衣も!」

「あ、ありがとう、ございます……?」


 感謝の言葉を言われ、威張る態度を見せる二人。そして奥を指さして進もうとしていた。

 天舞音と芽衣はそれについていくことにした。


 芽衣はこの二人を見ていて、『本当にRDBは悪なのか』分からなくなっていた。ましてや、彼女らを殺すべきなのかどうかも。

 ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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