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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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145話 知識欲

【戦況】


美羽みう・シャイニ VS 狩魔かるま

 シャイニの能力により、狩魔の死亡という形で決着がついた。しかし、和也と優貴の戦闘で発生した瓦礫が降り、シャイニの背中を押した美羽がその瓦礫の下敷きになってしまう。シャイニは美羽を連れてあるアリスを訪ね、美羽は一命を取り留めた。


②サーシャ VS ローラン・ジョニー

 ジョニーの能力を使ったローランの策略により、サーシャは致死率100%の状況に追い込まれる。その中、ローランは命を助ける代わりに全てを話す取引を持ちかけた。そしてサーシャはその取引に乗ることにした。


すみれ VS ルドラ(天舞音あまね芽衣めいは別方向へ)

 菫は椿の死亡により、真の能力『詐欺罪』を使う。天舞音と芽衣と別行動し、ルドラの元に到着。本体に『窃盗罪』を使うと、ルドラの暴走は停止した。その後、アリスの元へ。


椿つばき VS 頼渡らいと

 椿は突如発現した住居侵入罪の力で、ノアの介入をくぐり抜けて頼渡をナイフで刺した。その後、【暗殺の一夜(アサシン・ナイト)】の代償で、ノアを殺せずに椿も命を落とす。


和也かずや VS 優貴ゆうき(ノアは頼渡の元へ)

 優貴の一撃により、下の階にいたシャイニと美羽に被害が及ぶ。和也との話し合いの上、優貴は和也と共に行動することを決めた。


届称かいしょう VS 有象無象の罪人共 (眼音まおは出口へと向かっている)

 ノアにより、届称・眼音は和也と分かたれてしまう。届称は眼音を撤退させる時間をかせぐため、行き着いた先に居た罪人共に立ち向かう。


しょう VS サミュエル

 サミュエルの能力を突破した翔は、撤退するサミュエルと希を尻目に、バードルードと共にノアの所へ向かった。


⑧バードルード VS のぞみ

 希の能力空間で混乱したバードルードは、第三の人格を出す。バードルードの能力によって精神崩壊寸前に追い込まれた希は空間脱出とともに、倒れる彼を置いて休息をとった。その後は上に同じ。


聖華せいか VS アダム・フローリー・アタラ

 日本に攻め込んできた多くのRDBのうち、姿を消す能力者のアダム、()()で人を攻撃するフローリー、京之介(きょうのすけ)和葉かずはの武器を奪ったアタラの三名が聖華を攻撃する。  

 聖華が苦戦する中、かつての同僚であるあや白虎びゃっこが聖華の前に現れた。



 複雑化した戦況の中、誰がどのような勝利を掴むのか。

 サーシャは『無法騒動』や『七人の学者』のことを、ローランとジョニーに話した。その話の合間合間に、くだらないジョークや雑談を披露した。

 自分が話す時間を、できる限り引き延ばすように。

 例え一寸の期待でも、彼女は状況が変わるまで粘りたかった──のだが。



「……とまあ、こんな感じかな。」


 いつもは飄々(ひょうひょう)として話し続けるサーシャでも、発言の制約下でこれ以上話すのは厳しかった。



「クハハ、残念だったな。どうやらこの状況が一変することはないらしい」

「……意図までバレちゃってるんだ」

「どうする、まだ何か話すか? もしお前たちのリーダー……薙田なぎたこうがいれば、この状況は変わったのになあ」

「ソーリー、ローラン。広とはフー?」

「元レジスタンスリーダーだ。お前が入る前、レジスタンスの奴らを庇って命からがら逃げ出した」


 サーシャの顔が険しくなる。



「ドイツでRDBの活動をしてた時、一度レジスタンスは俺様たちに牙を向けたんだ。そん時には既にレジスタンスの存在を知ってたが、広は『レジスタンスは一人だ』とかぬかして去った」

「あの時はやられたよ。まさか、レジスタンスと協力関係を結んでいた組織にローランが潜伏してたなんてね」

「ああ。知りたいことを全部教えてくれたおかげで、レジスタンスの人数、目的、作戦の全てが予測できた」


 当時、レジスタンスの一人がローランに、ありとあらゆる情報を提供してしまったのだ。

 そのせいで広は逃げたものの、追撃者によって生死をさまよった。



「アイドンノー、ローラン。人数がアンダースタンドしてて、ワイこいつらをオール追放しなかった?」

「クハハ、簡単な道理だ。残りの奴らを泳がせておけば、もっと面白い情報が聞けるかもしれねえだろ?」


 ローランは椅子から立ち上がる。その顔はどこか歪んだ笑みを見せていた。



「正直言って、俺様はRDBなんかに情はねえ。俺様が欲しいものはただ一つ──情報だ。そのためならどんなものでも犠牲にできる。家族や仲間、俺様自身の命でさえ!」

「……異常な()()()、それが君の正体か」

「知識欲──クハハ、そうだ! 俺様はそれを満たすために生きてきた! 家族をこの手で解剖した時から、俺様はどんな手段を使ってでもこの世の全てを知りたいと思った。他人の何もかもを侵害してでも、情報は規格外でも何でも手に入れる!」


 サーシャには分かる。彼が嘘を一つも言ってないことを。だからこそ──



「……イカれてるね、君は。でも、君がレジスタンスを逃がしたせいでこの戦争が起きてる。自分が戦争で死んでも良かったの?」

「構わねえ。俺様は自分の命を可愛がる性格じゃねえんだ。人生っつうのは、知識っつうスコアをより多く稼ぐゲームだ。俺様が死んでも、そのスコアが消えることはねえだろ? ただ、どうせ死ぬならより多くの知識を持って死にてえだけだ」


 ローランが話を続けるまで、サーシャは退屈そうな目をしていた。



「はあ……終わった?」

「クハハ、お前のために時間稼ぎしてたんだが……どうやら厳しいみたいだなあ。無理もねえ、ここは巧妙に隠されてる。お前が祈っても、誰の助けも来ねえ」

「今更そんな挑発──どうやって乗ればいいの?」


 サーシャは肩をすくめ、呆れた表情で言った。



「どちらにせよ、お前はもう能力を使えねえ。お前が《発動》と言った瞬間、ジョニーがお前を一瞬で殺す」

「そうだね……『ボクは死なない』って言っても生き延びれる訳が──」


 彼女は目を見開いた。

 ローランは、突然会話が途切れたことに疑問を持っている様子だった。



「……残念だけど、ボクは生きられるみたいだ」

「っ! ジョニー、今すぐ『キャンセル』を──」

「《発動》! そこまでです!」


 一人の女性が、二人のいる部屋の扉を開けた。ローランが言い終える前に、彼女はローランの前に立った。



「……クハハ、やられた。お前はとっくに《発動》を宣言してたんだな。なあ、いつだ?」

「君の人生をゲームと呼ぶなら──そうだね、会話のログをさかのぼってみたらいいよ」


 ローランは顎に手を当てた。



「会話……ああ、そういう事か。挑()──()()ってか? そんなのアリだったんだな」

「君の『略取罪りゃくしゅざい』を使ってばかりいると気づかないこともある。これは──広さんのテクニックだ」

「どういう状況かは分かりませんが、お二人がRDBで間違いないですね? サーシャさん」

「うん。助けてほしい、眼音まお


 ローランは笑いながら頷く。

 ジョニーは何がなんだか分からず慌てていた。



「確かに俺様は命が惜しくねえが──スコアは少しでも稼ぎてえから、今は生き延びさせてもらうぜ」

「スコア……? 何がなんだか分かりませんが、命は奪いませんよ? ただ私はサーシャさんを──」

「ここに敵が来たときの策も考えてるに決まってるだろ? 一流の軍師を舐めるな」


 ローランは椅子の肘掛け部分にあるスイッチを押した。しかし、何も起きなかった。

 少し驚いた顔をするローランに、サーシャは呆れて言う。



「君が何をしようとしてるか分からないけど、気をつけた方がいいよ。彼女は君が散々待ち望んでた──規格外だ」

「ごめんなさい、今はあなたに何かさせる訳にはいきません。ですので、あなたの身の回りにある無機物の情報は全て書き換えてしまいました」

「情報──すると、お前が監視カメラを狂わせてたのか」


 眼音はこくりと頷く。



「ですが、手荒な真似は致しません。サーシャさんを解放して頂ければこちらもこれ以上何も──」

「ダメだ眼音! 彼はボクたちを殺す策がある! 彼を何とかしてくれ!」

「サーシャさん……!? わ、分かりました! では──」


 眼音はローランの肩に触れた。その瞬間、まるで液体のように彼はぐたりと椅子に項垂れた。

 ローランはその状態で、あー、うー、と言葉を発していた。



「ワッツ!? ユーはローランに何をドゥ!」

「ドゥ……? えっ、と、一時的に彼の頭の情報や知識を全て消去しました。後で戻せますが、今の彼の脳は赤ん坊と同じようになってるので、このようになっています」

(眼音に嘘をついたボクも悪いけど、散々ボクをもてあそんだ君も悪いからね、ローラン)


 サーシャは三人に見えないように舌を出した。

 眼音はローランから離れ、念の為ジョニーとも距離をとった。



「あ、ところであなたはサーシャさんを解放できますか?」

「……シット! こんなところでミーがエンドする訳が、ないだろっ!」


 ジョニーは、焦点が定まってないローランの元に駆け寄る。眼音の制止する声も聞かず、持っていたナイフでローランの首を刺した。何回も何回も……。



「なんなんだコイツは! 散々人を弄んだ挙句これで終わりだと!? 本当にコイツなんかが軍師? ふざけんな!」

「な、なに、して……?」


 眼音の声は震えていた。サーシャも同じく、彼に恐怖を抱いていた。



「……取り乱してしまいました! ミーはこのダストに変わって、アメイジングな策をたてました! サーシャ、ユーをキルしてもいいですが、それよりももっと素晴らしい策です!」

「──まさか……! 眼音、急げっ!」

「えっ……?」

「《発動》! ミーがユーたちの敵である、ローランをキルしてあげました! 『オンガエシ』しなければいけません! 『タイカ』として、ユーたちは全員、ミーの命令を──」

「っ! ごめんなさい!」


 眼音はジョニーが言い終わる前に、腕に触れることができた。

 ジョニーは先程のローランと同じように、その場で崩れ落ちた。

 ──ただ、崩れ落ちたのはサーシャも同じだった。



「あ、危なかった……」

「サーシャさんっ!? 大丈夫ですか?」

「うん、気が抜けちゃっただけだよ」


 サーシャの返答を聞いて、眼音は胸を撫で下ろす。次に、人間としてほぼ機能しなくなったジョニーを気にかけるようにしゃがむ。



「今、この方は何をしようと……?」

「ローランの殺害をトリガーとして、ボクたちを『奴隷化』しようとしてたんだ。眼音が少しでも遅かったら、ボクたちはあいつの言いなりになって、取締班のみんなを殺してただろうね」

「そんな……」

「謙遜せずとも、ボクたちの能力は確かに脅威だ。乗っ取られたら大変なことになってたよ。……とにかくありがとう、今から合流しよう」


 サーシャはそう言うと、眼音に指示を出して扉を開けさせた。

 遅くなり、申し訳ございません。


 ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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