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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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138話 光を失った光が放つ光

【戦況】


美羽みう・シャイニ VS 狩魔かるま

 シャイニの能力により、狩魔の死亡という形で決着がついた。しかし、和也と優貴の戦闘で発生した瓦礫が降り、シャイニの背中を押した美羽がその瓦礫の下敷きになってしまう。シャイニは美羽を連れてある少女を訪ねる。


②サーシャ VS ローラン・ジョニー

 ジョニーの能力を使ったローランの策略により、サーシャは致死率100%の状況に追い込まれる。その中、ローランは命を助ける代わりに全てを話す取引を持ちかけた。そしてサーシャはその取引に乗ることにした。


天舞音あまね芽衣めいすみれ VS ルドラ

 三名はルドラの能力で表れた触手に苦戦。少しずつ着実に進むも、ルドラの元にたどり着けずにいた。


椿つばき VS 頼渡らいと

 椿は突如発現した住居侵入罪の力で、ノアの介入をくぐり抜けて頼渡をナイフで刺した。その後、【暗殺の一夜(アサシン・ナイト)】の代償で、ノアを殺せずに椿も命を落とす。


和也かずや VS 優貴ゆうき(ノアは頼渡の元へ)

 優貴の一撃により、下の階にいたシャイニと美羽に被害が及ぶ。和也との話し合いの上、優貴は和也と共に行動することを決めた。


届称かいしょう VS 有象無象の罪人共 (眼音まおは出口へと向かっている)

 ノアにより、届称・眼音は和也と分かたれてしまう。届称は眼音を撤退させる時間をかせぐため、行き着いた先に居た罪人共に立ち向かう。


しょう VS サミュエル

 サミュエルの能力により、翔は能力空間に閉じ込められてしまう。サミュエルの能力により、翔は自殺寸前までに精神を追い詰められていた。


⑧バードルード VS のぞみ

 希の能力空間で混乱したバードルードは、第三の人格を出す。バードルードの能力によって精神崩壊寸前に追い込まれた希は空間脱出とともに、倒れる彼を置いて休息をとった。


聖華せいか VS アダム・フローリー・アタラ

 日本に攻め込んできた多くのRDBのうち、姿を消す能力者のアダム、()()で人を攻撃するフローリー、京之介(きょうのすけ)和葉かずはの武器を奪ったアタラの三名が聖華を攻撃する。  

 聖華が苦戦する中、かつての同僚であるあや白虎びゃっこが聖華の前に現れた。



 複雑化した戦況の中、誰がどのような勝利を掴むのか。

 シャイニが声の方を向くと、そこには白い長髪の女の子が居た。何故か目を隠すように包帯で巻いている。



「きみが、『不老不死』だったり『どんな傷でも治せる』人? ──いや、お願いっ! 傷を治してっ!」

「わ、分かりました! とりあえず私のそばへ!」


 シャイニにはもはや、彼女の正体を考察する余裕がなかった。彼女もシャイニの焦りに感化されたのか、慌てた様子で話す。


 言われるがまま、シャイニは彼女の元へ美羽みうを運ぶ。

 彼女は手探りで美羽の胸に手を当てる。心臓が弱々しく動いていることを確認すると、次に自分の胸に手を当てる。


 両手を組むシャイニは、彼女の行動を静かにただ見守っている。それくらいしか自分にできることがなかったのだ。



「では、治療を始めますね」


 彼女がそう言った次の瞬間、美羽の全身が途端に光を放ち始めた。

 スポットライトよりも眩しいその光に、シャイニは思わず目をつぶって顔を逸らす。しかし、そのまま逸らし続けたいと思う人間の本能に抗って、シャイニは光に網膜を刺されながらも治療の光景を見る。

 最悪な視界の中で見たのは、美羽のあちこちから流れ出ていた血が引いていき、深い傷も塞がっているという事実だ。



「……すごい」

「残念ながら、私の能力はあなたの言ったような大層な物ではありませんよ。人を『不老不死』にはできませんし、『全ての傷を塞ぐ』こともできません。私の本当の能力は──」


 光が収まる。シャイニは前のめりになって美羽の身体を見る。脚は未だ再生されていないが、それを除く全ての傷は治っていた。



「──()()()()()()()()、『内乱罪ないらんざい』です」


 彼女は美羽の呼吸や心臓を確認する。どちらも安定していることを確認すると、一息ついて彼女はシャイニの方面に顔を向ける。



「ごめんなさい、私にはこれが精一杯です。一命は取り留めましたが、脚のほうを治せませんでした。能力の性質上どうしても──」

「っううん、ありがとうっ! 美羽ちゃんが助かって、本当に、良かったっ……!」


 シャイニは震えた声で彼女に言う。その声を聞いて彼女は口元をほころばせる。



「あなたにとって、とても大切な方なのですね。声だけでも、あなたがどんな感情を抱いているか分かります……頭を前に出してください」

「ふえ? う、うん」


 彼女の言葉に疑問を持ちながらも、美羽の身体に被せるように頭を差し出す。

 ふと、頭に暖かい感覚を感じる。それは彼女の手だった。



「よしよし、もう大丈夫ですからね。安心してください」


 頭を撫でられる感覚に対してシャイニは、姉の顔を思い浮かべながらも思わずまた泣いてしまった。



   *



 シャイニは気持ちの整理をして、どうにかいつも通りのテンションに戻した。



「私はシャイニ、そしてこの子は美羽ちゃんっていうのっ! あなたは?」

「アリスといいます。これから宜しくお願いしますね、シャイニさん!」


 シャイニは改めて、このアリスという少女について思うところが山ほどあった。



「えっと、アリスちゃんはどうしてここにいるの?」

「ノアに言われたのです。ここが君の部屋だって」

「ノアに……かぁ。ねぇ、もっとアリスちゃんのことを知りたいんだけど、いいかな?」

「大丈夫ですよ。えと、見ての通り私は目が見えません。なので、ここで色んな植物を育ててるんですよ」


 シャイニは首を傾げた。



「目が見えないならどうして植物を育てるの?」

「ふふっ、だって楽しみなんです! 私の目が良くなった時、ここがどうなっているのかを確認できるじゃないですか──あ、今ここがどんな感じなのかは言わないでくださいね!」


 むしろどう言うべきか分からなかったため、シャイニは内心ほっとした。



「うーん、あと私があなたに教えられるのは私の能力ですかね。さっきも言いましたが、私の『内乱罪』は成長を操ることができます。分かりやすく言えば、年齢を増やしたり減らしたりできるってことですかね?」

「年齢? じゃあどうやって美羽ちゃんを治したの?」

「例えば今、シャイニさんが切り傷しちゃったとします。しかし、放っておいてもその傷は年齢を重ねれば──つまり、成長すれば塞がりますよね? ですが、塞がった切り傷の成長を巻き戻しても切り傷が出てくることはありません。なぜなら私の能力は、体が受けた()()()()を巻き戻すのではなく、年齢を巻き戻すだけですから」


 シャイニは分かったような分からないような、そんな複雑な気持ちを抱えていた。



「うーんと……つまりアリスちゃんの能力は、体を若返らせたり年老いさせたりできるってことだよね? あっ、さっきのは美羽ちゃんの身体をおばあちゃんにしてから元に戻したってことっ!?」

「そうそう、それです! ……ですが、私に直せない傷もあります。それが──」

「成長しても治らない傷、ってことだよね。それが、美羽ちゃんの脚……」


 アリスは頷いた。



「私の能力でも治る仕草もありませんでした。なので美羽さんの脚は、きっともう……」

「──そっ、か」


 シャイニは視線を落とす。



「えっと、こんなこと聞いて良いのか分からないのですが、美羽さんは何故こんな怪我を?」

「……今、RDBと罪人取締班が闘っているのは知ってるよね? 美羽ちゃんは──」

「お待ちください……! 今、なんと?」

「えっ? RDBと罪人取締班が闘っているのは──」

「闘って、いる? 何故ノアの()()が闘いを? RDBは『証券会社』のはずでは……?」


 アリスは酷く驚いた声を出していた。

ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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