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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
136/174

136話 急展開

【戦況】


美羽みう・シャイニ VS 狩魔かるま

 シャイニの能力により、狩魔の死亡という形で決着がついた。


②サーシャ VS ローラン・ジョニー

 ジョニーの能力を使ったローランの策略により、サーシャは致死率100%の状況に追い込まれる。その中、ローランは命を助ける代わりに全てを話す取引を持ちかけた。そしてサーシャはその取引に乗ることにした。


天舞音あまね芽衣めいすみれ VS ルドラ

 三名はルドラの能力で表れた触手に苦戦。少しずつ着実に進むも、ルドラの元にたどり着けずにいた。


椿つばき VS 頼渡らいと

 椿は突如発現した住居侵入罪の力で、ノアの介入をくぐり抜けて頼渡をナイフで刺した。その後、【暗殺の一夜(アサシン・ナイト)】の代償で、ノアを殺せずに椿も命を落とす。


和也かずや VS ノア・優貴ゆうき

 ノアにより、和也は届称かいしょう眼音まおと分かたれてしまう。ノアに一撃を与えるも、代わりに優貴から一撃を食らう。


届称かいしょう VS 有象無象の罪人共 (眼音まおは出口へと向かっている)

 ノアにより、届称・眼音は和也と分かたれてしまう。届称は眼音を撤退させる時間をかせぐため、行き着いた先に居た罪人共に立ち向かう。


しょう VS サミュエル

 サミュエルの能力により、翔は能力空間に閉じ込められてしまう。サミュエルの能力により、翔は自殺寸前までに精神を追い詰められていた。


⑧バードルード VS のぞみ

 希の能力空間で混乱したバードルードは、第三の人格を出す。バードルードの能力によって精神崩壊寸前に追い込まれた希は空間脱出とともに、倒れる彼を置いて休息をとった。


聖華せいか VS アダム・フローリー・アタラ

 日本に攻め込んできた多くのRDBのうち、姿を消す能力者のアダム、()()で人を攻撃するフローリー、京之介(きょうのすけ)和葉かずはの武器を奪ったアタラの三名が聖華を攻撃する。  

 聖華が苦戦する中、かつての同僚であるあや白虎びゃっこが聖華の前に現れた。



 複雑化した戦況の中、誰がどのような勝利を掴むのか。

 時間は十数分前に遡る。



「っ……くそ! お前、力強くなってないか!?」

「この青いマフラーの効果だ。ここでやられるつもりは無いからな、このくらいはしないといけないんだ」


 優貴ゆうきの拳が和也かずやの頬をかすめる。もはや和也は避けるので精一杯だった。

 和也が攻撃する隙は与えられず、ただひたすら優貴の猛攻は続く。前と違い、優貴に手加減などない。



「っ……どうすりゃいいんだよ!」

「安心しろ、和也。お前は殺さない。ただ、少しの間だけ──」


 優貴は和也に近づくと、右脚を大きく振りかぶる。



「──眠っててくれ。後は、俺がやるから」

「っ!?」


 脚を振り下ろされると思い、上方向に防御する和也。

 優貴はそれを見越して、上体を大きく後ろに逸らす。そして両手を背後の地面につけると、着地していた左脚を大きく振り上げる。



「っ、かはっ……」


 和也はノーガードで優貴の蹴り上げを顎に受ける。体が大きく宙に浮かぶと、後頭部が地面へ直撃した。



「やっぱり優貴は強いね。お父さんは鼻が高い──」

「黙れ、俺はあんたを父親だと認めてない。それにあんたのこと、まだ納得できてないからな」


 和也が数秒動かなったのを確認すると、優貴は視線を彼からノアに移す。



「なにがRDBだ。なにがヘイワだ。そんな『停滞』は無意味だ、それどころか非情だ」

「非情? それはなぜ?」

「この世に永遠かつ完璧な停滞なんて存在しない。その停滞が終わった時、この世界はどうなる? この世界に生きる人達はどうなる?」

「へえ、お人好しだね。僕に似たのかな?」


 まだ父親だと主張する彼を無視するように、優貴はノアから目線を逸らす。



「とにかく、俺はそんなのはごめんだ。()()()を殺さない限り、この世界は終わりを迎えるんだ。他の誰かじゃない、俺たちがやるんだ」

「本当に殺せるのかな? 奴がどれほど強いかも知らないのに?」

「……きっとやれる。今の俺たちなら、きっと」


 彼を信用できていない証拠に、ノアはやれやれと首を振る。



「……ダメだ、話の大半は理解できなかったぞ。っしょっと」


 和也は寝ている状態から軽快に立ち上がる。気絶したと思い込んでいた優貴は少し驚いた顔をする。



「聞いてたのか?」

「ん。倒れてるフリしたらなんか聞けねえかなって思ってたけど、やっぱ優貴の話はムズくて分からんな」

「……昔のお前だったら、起き上がれる時はすぐに起き上がって来たのにな」


 和也はノアを見る。



「敵っつうのは分かってるけどよ、優貴と二人きりにしてくれねえか?」

「……おっと、少し急用を思い出したよ。僕はこれから他の戦闘への応援に行かなければいけないんだった。じゃあ優貴、ここでお別れだ……期待してるよ?」


 ノアは壁を通路状に変形させ、その中に入っていった。和也は呆れた顔でその顛末てんまつを見ていた。



「……なんで二人きりに?」

「お前、父さんとも対立してそうだったろ。つまり、RDBとの方針とも考え方が違えってことだよな? じゃあ今、お前の考えに共感してくれてる奴っているのか?」

「それは……それより、なんで急に人数なんか気にするんだよ」

「ずっと一人で、辛かったよな」


 和也の言葉に、優貴は驚くと同時に胸の苦しさを覚えた。



「優貴。お前が何を悩んでるのか、何をしたいのか、きっと話せねえんだろ? だからお前は一人で背負い込むことになっちまうんだ」

「……急に、なんだよ」

「わりい、俺はお前に『教えてくれ』ばかりで、お前の気持ちなんて考えてなかったんだ。相談できねえ辛さなんて」


 優貴は歯を食いしばる。喉の奥から、怒りのこもった言葉が溢れてくるのを感じた。



「なんでだよ……! なんでお前は……まだ俺なんかに優しくするんだよ! いいか、俺はRDBなんだ、お前の敵なんだ! お前は何も考えずに、俺を攻撃してればいいんだよ!」

「いーや! もう考えねえのはごめんだ! 俺はどんな結果が待ってようが、どんなことにも向き合うって決めた! 俺の過去だって、お前のことだって!」


 優貴は目をつぶる。和也もそれを見て足元を触る。



「「《発動》!」」


 声が重なる。

 動き出すのも同時で、共に拳で攻撃した。激突した二つの攻撃は同格、押し合いとなった。



「俺のことはもう何も分からないって言ってただろ……なら、もう考える必要なんてない! 考えるだけ無駄だ!」

「無駄じゃねえ! お前の話を聞いても分かんないかもしれねえ! でも……お前の口から出た、一つだけの言葉で分かった。お前は、この世界を、皆を、まだ大事に思ってるってことを……!」


 優貴の動揺が押し合いに影響する。和也は拳により力を込める。



「一人のお前に寄り添うなら十分だろ! もっと聞かせろよ! もっとぶつけろよ! お前の悩みも不安も全部!」


 和也の拳が優貴の拳を弾く。和也はすかさず、もう片方の拳を優貴の腹に入れ込んだ。



「ぐっ……!」

「もう一人で背負い込む必要ねえんだよ! じゃねえと……いつまでも、お前のことが分からねえんだよ! 何回言わせんだよ、バカ!」

「っ……ああ、教えてやるよ! 俺はもう……どうすりゃ正解なのか分かんなくなってんだよ! 【断罪の拳ジャッチメント・フィスト──」


 優貴は体勢を整えて上を見る。先程ノアが天井を破壊したため、次の階の天井まで見えた。

 その天井を目掛けて跳び上がる。体を半回転させたのち、天井に足を着地させる。

 さらに、ヒビが入るほどの力で天井を蹴り押す。重力に脚力を足した拳は和也に向いている。



「──急展開ドラスティック】!!」


 和也は両腕を構え、優貴の拳を防御しようとする。しかし、和也の想像以上の力だった。

 その衝撃は、和也の体を通して地面を粉砕した。



   *



 二人はそのまま下の、さらに下の階まで落ちていった。その階には、狩魔かるまの遺体と、美羽とシャイニが居た。

 さらにその階に、瓦礫の雨が降り注ぐ。



「えっ、何!?」

「シャイニちゃん!」


 シャイニの上から大量の瓦礫が落ちるのを見た美羽は、シャイニの背中をトンと押す。



「っ!? 美羽!」


 体勢を立て直した優貴は、美羽に手を差し伸ばす。しかし、いくら『暴行罪ぼうこうざい』と言えども、届かなかった。

 美羽の能力も間に合わない。




 ──美羽の体は、大量の瓦礫の下敷きになった。

 遅くなってしまい申し訳ございません。


 ご愛読ありがとうございました。


 次回もよろしくお願いします。

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