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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
133/174

133話 増援

【戦況】


美羽みう・シャイニ VS 狩魔かるま

 シャイニの能力により、狩魔の死亡という形で決着がついた。


②サーシャ VS ローラン・ジョニー

 ジョニーの能力を使ったローランの策略により、サーシャは致死率100%の状況に追い込まれる。その中、ローランは命を助ける代わりに全てを話す取引を持ちかけた。そしてサーシャはその取引に乗ることにした。


天舞音あまね芽衣めいすみれ VS ルドラ

 三名はルドラの能力で表れた触手に苦戦。少しずつ着実に進むも、ルドラの元にたどり着けずにいた。


椿つばき VS 頼渡らいと

 椿は窃盗罪せっとうざいで頼渡の能力を奪うことに成功した。しかし同時に、頼渡の能力で右手を壊してしまう。


和也かずや VS ノア・優貴ゆうき

 ノアにより、和也は届称かいしょう眼音まおと分かたれてしまう。ノアに一撃を与えるも、代わりに優貴から一撃を食らう。


届称かいしょう VS 有象無象の罪人共 (眼音まおは出口へと向かっている)

 ノアにより、届称・眼音は和也と分かたれてしまう。届称は眼音を撤退させる時間をかせぐため、行き着いた先に居た罪人共に立ち向かう。


しょう VS サミュエル

 サミュエルの能力により、翔は能力空間に閉じ込められてしまう。サミュエルの能力により、翔は自殺寸前までに精神を追い詰められていた。


⑧バードルード VS のぞみ

 希の能力により、バードルードは能力空間に閉じ込められてしまう。死ぬことのない殺し合いの中で、希はバードルードの多重性格について分析していた。


聖華せいか VS アダム・フローリー・アタラ

 日本に攻め込んできた多くのRDBのうち三名が、聖華に攻撃する。姿を消す能力者のアダム、()()で人を攻撃するフローリー、京之介(きょうのすけ)和葉かずはの武器を奪ったアタラに対し、聖華は闘争心を燃やしていた。



 複雑化した戦況の中、誰がどのような勝利を掴むのか。

 親しい人を殺す感覚、美羽みうは何となくそれを理解できた。涙がれてもなお泣くシャイニの横にしゃがむ。



「……美羽ちゃん、私、何か間違ってたのかな?」


 シャイニは生気のこもってない声で話す。気持ちの整理はしきれてない割に、しっかりと話せる状態であるようだ。

 彼女はさらに話す。



「お姉ちゃんは、私のことどうでもいいのかなって思ってた。()()()から変わっちゃって、他の人を平気で傷つけるようになった。お姉ちゃんから離れたのも怒ったからじゃない、ただ……怖かった。いつか私も傷つけられるんじゃないかって。……今、気づいたよ。直接向き合おうとしない私も最低だったんだね」


 美羽に話しかけたのにも関わらず、独白のようにぽつぽつ話している。

 他人の家族事情に首を突っ込まないべきだ──そう考える前に口が動いていた。



「多分、かる──お姉さんは、始めからシャイニちゃんのことすごく大事に思ってたんだと思う」

「えっ?」

「お姉さん、能力を発動する時にサイコロを投げてたでしょ? でもサイコロじゃなくても、他の物でも良かったんだと思う」


 届称かいしょうの能力で閉じ込めたはずの狩魔かるまが外に出れたのも、発動条件が『物を落とすこと』だったからだろう。そのため、サイコロが無くとも出られたのだ。



「サイコロだった理由は……上手く言えないけど、シャイニちゃんとお揃いにしたかったんじゃないかな? 一つでも繋がりがあるようにしたくてさ」

「私への嫌がらせかもしれないじゃん。……って、こんなこと言うのも意地悪だけどね」

「それは──」


 美羽は言い淀む。どのように声をかけるべきなのだろうか。

 そんなことを考えてる間に、シャイニはすくっと立ち上がる。



「……でも、ありがとう。これが私とお姉ちゃんの運命なら、頑張って受け入れるよ」


 目元を赤く腫らして、シャイニは笑った。悲しさと諦めが混じった、そんな笑顔だった。

 彼女に対して何もしてあげれない悔しさから、美羽は口を真一文字に結んだ。



   *



 聖華せいかは右足を踏み鳴らす。



「《発動》! 【激昂げっこう掌底しょうてい】!」

「うわっ!」


 まずは拳銃を持つアタラを障壁バリアで吹き飛ばす。



京之介(きょうのすけ)和葉かずは! こっちは何とかする! だから今は逃げてくれ!」

「っ……すまん」


 和葉は悔しそうにそう言うと、顎を抑える京之介とその場を去った。



「隙が丸見え! 切ってあげようか? 切ってあげようね!」

「っ……!」


 突然アダムは聖華の前に現れてナイフを振る。頬から血が流れる。



「三対一で大丈夫? 手加減してあげよっか? してあげようね!」

「いや、平気さ。こちとら戦闘員の端くれなもんでね。()()()に苦戦するほどやわな鍛え方してないんだ」


 そう、この三人は戦闘慣れしていない。強いのは能力だけで、体術は聖華以下だ。

 しかしRDBは、なぜこの三人を日本に送り出したのだろう。狙いが全く見えない。



「ま、待ってください! 私は戦おうだなんて──」

「あんた、本当に戦いを止めたいならそこに居な。邪魔しないでくれ」


 聖華の冷たい怒りを察知したのか、フローリーはそれ以上何も言わなくなった。

 アダムは青い顔をしたフローリーの肩をぽんと叩く。



「フローリー、あの人は君を騙そうとしてるんだよ。戦いを止めたいなら君も協力してあの人を抑えてよ。落ち着いたあと、話し合いで戦いを終わらせよう」

「アダム、でも……」


 聖華はこれで確信した。アダムとアタラはフローリーを騙して利用していることを。

 それにしても、ここまで来るとフローリーすら怪しく見えてくる。この場面では明らかにRDBが『悪』だ。しかし、フローリーはまだ迷っている。まるで『判断力』が欠如しているみたいな──



「……そういうことか。あんたら最低だね」

「あ? 何に気がついたんだよ、おばさん」


 戦線に復帰したアタラが頭を掻きながら聞く。



「あのフローリーって子に、無理やり能力をずっと発動させてるね? 能力の欠点は『判断力の低下』ってとこかい?」

「おお、よく気づいたなおばさん」


 随分とあっさり肯定してくれるもんだ、そう聖華は拍子抜けした。



「だからあんなに自分で決める意思がない……周り見ずの人形になったのかい」

「わ、私は人形じゃないですよ! ほら、ちゃんと動いてますもん!」


 フローリーはそう言って、その場で一回転してみせた。相変わらず、戦場に似つかわしくない態度だ。

 人の話を聞かず、良かれと思って自発的な行動をする。彼女はそうやって何人傷つけてきたのだろう。


 アタラはフローリーの背中をトンと押す。



「ほら、あの人に誤解を解いてこい」

「はいっ!」


 フローリーはそう言って聖華に駆け寄っていく。聖華はその進行を止めるため、縦方向に障壁を展開する。



「そうだ! さっきおばさんに吹き飛ばされた時、いいもん拾ったんだ」


 アタラはそう言って、腰元から拳銃を抜き出す。遠くからであまり見えないが、あれは確か──



「デザートイーグル、しかも威力の高い50AEだ! そのバリアは何発耐えられる?」


 アタラはそう言って障壁を撃つ。わずか三発で障壁は崩れ去った。

 聖華はそれを見越して、さらにもう一枚展開する。



「まだまだぁ! ……って、なんだよ。たった四発しか入ってなかったのか。まあでも一発でヒビは入ってんな。なら──」

「──おいおい嘘だろ?」


 ヒビが入っていたとはいえ、フローリーの突進だけで障壁は壊れた。白虎の『傷害罪しょうがいざい』──いや、それ以上の……。



「何かぶつかった気が……とにかく、あの人に体を触ってもらわなければ」

「判断力の低下って恐ろしいねえ……」


 後ろは壁、横に逃げようにも消耗戦で恐らくフローリーに負ける。障壁は速攻で破壊される。いずれにしてもフローリーに捕まる運命のようだ。



「さて、どうしたもんかねえ……」


 聖華が頭を悩ませたその時──



「……おい、アダム!?」

「ん? あれ、これって誰の血?」


 アダムはそう言って首を傾げた。


 遠くからの銃声と共に、アダムの体から多量の血が溢れている。それを見たフローリーの体が、くるりとアダムの方に方向転換した。



「大丈夫ですか!?」


 心配した声色で彼に近づく。



「──急所は撃てなかったのかい?」

「あくまで分身がやったことだ。苦情はそいつに言え」


 聖華は誰がやったかを瞬時に察知した。それと同時に文句紛いの言葉を彼女にぶつける。



「……助かったよ、彩」

「礼は言葉じゃなく行動で示してもらおうか、聖華」


 そこには、かつての同僚である朱雀すざく──改め、彩の姿があった。



「それに、ここに来たのは私だけじゃない」

「ん?」

「なあ、これが退院祝いかぁ? ははっ、随分と俺にピッタリじゃねえか!」

「がっ……!」


 声の主は、アダムに緊急処置をしようとしたアタラに横蹴りを食らわせた。



「さて、しっかりと暴れてやるよ。報酬はてめえらの悲鳴だ」


 聖華のもう一人の同僚、白虎の姿がそこにあった。

 ご愛読ありがとうございました。


 次回もよろしくお願いします。

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