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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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130話 真実、そして痛み

 毎話の始めに戦況を紹介することにします。



【戦況】


美羽みう・シャイニ VS 狩魔かるま

 シャイニと美羽の能力により狩魔は負傷。なお、シャイニは自らの能力で出したかせに繋がれて身動きがとれない。


②サーシャ VS ローラン・ジョニー

 ジョニーの能力を使ったローランの策略により、サーシャは致死率100%の状況に追い込まれる。


天舞音あまね芽衣めいすみれ VS ルドラ

 三名はルドラの能力で表れた触手に苦戦。少しずつ着実に進むも、ルドラの元にたどり着けずにいた。


椿つばき VS 頼渡らいと

 不明


和也かずや VS ノア・優貴ゆうき

 ノアにより、和也は届称かいしょう眼音まおと分かたれてしまう。ノアに一撃を与えるも、代わりに優貴から一撃を食らう。


届称かいしょう VS 有象無象の罪人共 (眼音まおは出口へと向かっている)

 ノアにより、届称・眼音は和也と分かたれてしまう。届称は眼音を撤退させる時間をかせぐため、行き着いた先に居た罪人共に立ち向かう。


しょう VS サミュエル

 サミュエルの能力により、翔は能力空間に閉じ込められてしまう。サミュエルの能力により、翔は自殺寸前までに精神を追い詰められていた。


⑧バードルード VS のぞみ

 希の能力により、バードルードは能力空間に閉じ込められてしまう。死ぬことのない殺し合いの中で、希はバードルードの多重性格について分析していた。


聖華せいか VS アダム・フローリー・アタラ

 日本に攻め込んできた多くのRDBのうち三名が、聖華に攻撃する。姿を消す能力者のアダム、()()で人を攻撃するフローリー、京之介(きょうのすけ)和葉かずはの武器を奪ったアタラに対し、聖華は闘争心を燃やしていた。



 複雑化した戦況の中、誰がどのような勝利を掴むのか。


 サーシャはローランの言葉に戸惑っていた。

 ローランが突然言い放った『生かしてやる』という台詞(セリフ)に、サーシャは驚きつつも明らかに怪訝けげんそうな顔をした。

 ただ、戸惑っていたのはサーシャだけではなかった。



「ワァッツ!? ローラン、ユーは何をセイしてる!? こんなインポスターはさっさとキル!」

「クハハ、まあ待てジョニー。当然タダで生かしはしねえよ、取引をするだけだ」

「取引ねえ……明らかに怪しいけど?」


 ローランは椅子から立ち上がる。そして、窓ガラス越しにサーシャを見下ろした。まるでモルモットを眺める実験者だ。



「お前は周りの罪人とは明らかに違う。()()を知っている。そうだろ?」

「……その何かを話したら、生かしてくれると? 君がその取引を守る可能性は?」

「クハハ、()()可能性を検討する余地もねえ。お前にとっちゃ、やるだけタダの取引だ。はぐらかしながら話して死ぬか、話さずして死ぬか、真実を全て話して生きるか、選べ」


 サーシャはこの取引の悪意を理解した。



(あっちはボクを殺すスイッチを持っている。まず取引を受けない時点で殺される。取引を受けても生かされるかどうか分からない。だけど生きる()()()が高いのは、明らかに取引を受ける方。だから、受けるだけタダの取引ってことか)


 彼女はため息を一つつく。その行為で心が休まるわけもない。ただの暇つぶしだ。



「いいよ、話してあげるよ。嘘偽りない真実を」


 サーシャは無法騒動、発言禁止の制約、七人の学者についてを全て話すことにした。





 * * * *





「はは、逃げてばっかりだね♪ ほら、もっと戦おうよ!」

「っ……!」


 頼渡らいと椿つばきに対しても、容赦なく『公務執行妨害罪こうむしっこうぼうがいざい』の洗礼を浴びせる。

 足で地面を思い切り踏み、出てきた破片を加速して椿に蹴り飛ばしていた。威力は銃に劣るものの、一つでも直接当たれば内出血はまぬがれない。


 らちが明かないと判断した椿は、口で手袋を脱ぎ捨て、髪の束を握りしめる。



「っ……《発動》! ぐっ……あ」


 一度に多量の情報が頭に流れる。地面が回るような立ちくらみに耐えきれず、その場に座り込む。

 本当はこの隙を生じさせないため、彼は発動をためらっていたのだ。



「何その能力、面白いね♪」


 当然、頼渡はその隙を逃さずに攻撃をする。

 頼渡が飛ばした破片は、椿の頭や顔、胴体を無慈悲に襲った。



「がぁっ! くっ……!」

「あれ、まだ立てるの? 僕もう何個当たったか数えてないけど、結構痛手だった気がするけど……」

「……俺を、痛みだけで止められると思うな! いくぞ、頼渡!」

「あれ、なんで──」


 頼渡が言い終わる前に、椿は片目を右手で隠した。



「《発動》! 二分の間、能力を発動するな!」

「っ!?」


 椿の命令で、全員の能力が発動できなく──



「……普通に能力を発動できるけど? 何のハッタリ?」

「『命令罪めいれいざい』が、発動できない……!? どうして」


 椿の能力で発動できない理由は一つある。それは、コピーする元の能力者の()()だ。



しょう、くん? いや、彼がこんな短時間でやられるはずない……。き、きっと、敵の能力のせいか」


 そういう椿の言葉は震えていた。

 余計な思考は、今だけは振り払うことにした。今は何かしら行動しなければいけない。



(ダメだ、戦いに集中しろ! 考える前に行動しろ!)


 椿は足に右手を触れる。



「《発動》!」

「なに?」


 そう言った後、椿は頼渡に向かって走り出す。頼渡は何か察知し、破片をいくつも飛ばす。

 椿はそんな破片の横雨の中でも、必死に前へ前へと進む。



「っ! この!」


 頼渡は焦ったように、更に数を増やして破片を飛ばす。中には、もはや瓦礫がれきのような大きさのものまである。

 和也の『暴行罪ぼうこうざい』が適用されてる中でも、瓦礫が体に当たった衝撃で、椿の体からミシッと音がする。それでも、前に進み続けた。



「だったら……こうだ!」


 頼渡は床に手を触れる。それにも能力が適用され、椿の次に踏み出した一歩は床に大きく弾かれてしまう。

 しかし、椿はとっさにその場で跳び上がり、あえて体を床に弾かせた。


 とてつもない速さで空中に浮き上がった体を縦に半回転させる。そして天井に足をつき、深呼吸しながら頼渡に向かって全身を飛ばす。



「《発動》!」

「なんで倒れないの!? 早く倒れろよ! そういう能力なの!?」

「いった……だろ? 俺を、痛みだけで、止められると思うなぁ!」


 椿は『暴行罪』を解除する代わりに、天舞音あまねの『窃盗罪せっとうざい』を発動した。

 頼渡の体に右手が当たった瞬間、反作用を十倍にされたため右手から聞いたことも無い音とともに、鋭い痛みが襲った。


 だが、窃盗罪の能力の条件は確かに成立した。その結果──



「あれ、僕の能力が発動しない! お前、何をした!」

「ぐあぁぁぁっ!」


 頼渡の能力は椿に奪われ、椿はもう使い物にならない右手から溢れる痛みにもだえていた。

 ご愛読ありがとうございました。


 次回も宜しくお願い致します。

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