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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
126/174

126話 空間の分離

 本日は短めとなります。


 翔とバードルードは、希とサミュエルに出会う。

 * * * *





 サミュエルはしょうとバードルードに優しく微笑みかけた。



貴方あなたがたには、懺悔すべきことがありますか?」

「答える。無いって言ったら?」

「そうおっしゃると、貴方は嘘をついたことになる。人間は誰しも、悪事無しで生きてゆくことはできないのです」


 翔は怪訝けげんな表情を向ける。



「理解できない。じゃあどうして、懺悔があるか聞いたの?」


 翔は無駄話で時間を稼ぐことで、脳内で最適な策を練っていた。どのように()()すれば良いのかを。



「私が聞きたかったのは、懺悔の『存在』ではなく『程度』です。貴方の罪の重さによっては、神罰を下さなければなりません」

「これこれサミュエルよ、お主は神父じゃぞ? 神気取りはよせ」

「──そうでした。私としたことが、神罰を下せる立場にあると妄言を」


 サミュエルは咳払いを一つする。その瞬間──



「……ここ、は?」

「神罰をくださるのは、あくまでも我があるじ。故に、主様にお見せしましょう。の者の罪を」


 サミュエルの背後には、一年はもちそうなほど大きい蝋燭ろうそくと、圧倒的な存在感を放つ祭壇がある。そして両隣には、木製の長椅子が列になって並んでいる。

 翔は、なぜ自分が『教会』に連れてこられたのか理解できなかった。恐らく、これがサミュエルの能力なのだろう。



「懺悔を聞くなら懺悔室なのでしょう。しかし、ここが最も主様がお聞きしやすい。さあ、貴方の罪を告白しなさい」


 ステンドグラスの逆光に照らされたサミュエルの顔は、先程まで無かった冷酷がにじみ出ていた。



   *



「し、翔、さん?」

「サミュエルは随分と張り切っておるな」


 バードルードの目の前で、翔とサミュエルが消えた。奇妙な現象に、彼の意識はかすんでいく。



「そこまで驚かなくてもよい。いまや、能力は複雑化しておる。そのような能力もあるのじゃ」

「し、しん、だ……?」

「今は死んでおらぬじゃろうな。じゃが、あやつの能力は相当にえぐい。いくらあのリアムでも、耐えられんと思うがのう。さて──わっちらも向かうとするか」


 のぞみは赤い傘をさす。刹那、二人は希の作った空間にたどり着いた。



「……あ」


 ついに、バードルードはその場に気絶した。



「ん? 随分とうぶな子じゃのう」

「……確かに、()()()はうぶだな。だが、俺様はどうだぁ?」


 突然バードルードは立ち上がると、希の首を掴んで床に叩きつける。



「た、確かに……お主は乱暴者じゃのう」

「おい、こっから出さねぇと殺すからな」

「やってみるといい」


 逆鱗に触れたのか、バードルードは首を絞める力を強めた。



「はっ。なら死にやがれ、ババア」


 バードルードは、その場で希を窒息させた。次の瞬間、希の死体が一瞬で消失した。

 彼は何が起きたのかと辺りを見渡すが、特にこれといった異変を見つけられなかった。ただ、障子の向こうから足音がするのを除いて。



「……あ?」

「本当に乱暴な子じゃのう。苦しかったぞ?」


 障子を開けて希は入室した。



「……何でもありか?」

「よく気がついたのう。この場にいる限り、わっちもお主も死ぬことは無い。当然、こういうのもありじゃぞ?」


 希は開いた傘の先を彼に向ける。傘は突然、強風が吹いた時のように外側に紙をひるがえさせる。そして、大口の怪物となって彼の頭を飲み込む。



「ぐっ!?」


 彼の足は床から離れてゆく。腕や脚で必死に暴れるも、傘は彼の頭を離さない。

 希は蛇のように動く柄を、持ちにくそうに何度か握り直す。



「心理学の観点から見ると、お主の多重人格は何やらの自己防衛に見える。……じゃが、随分と面白いのう」

「なに、がだよ……!」


 希はくすりと口を抑えて笑う。



「お主、そっちが本当の人格なのじゃろう?」

「っ……!」

「お主の過去で何があった? なぜ、あの気弱な人格が産まれた?」


 バードルードは動かなくなった。



「黙秘はわっちが悲しく……ああ、すまない。窒息してしまったのか」


 傘に咥えられたバードルードの死体は、その場から消失した。

 今回は短めでしたので、どこかで埋め合わせしたいと考えております。


 ご愛読ありがとうございました。


 次回も宜しくお願いします。

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