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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
9章 彼らが行動を始めた状態から真実を知り始める解明譚
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105話 再再会

 『来客』──優貴は、和也と聖華に会うとそっと微笑んだ。

 優貴ゆうきを見たとき、和也かずやは気だるさなどどうでもよかった。

 『再会の喜び』や『生きていたことへの安堵あんど』以上に、『彼が放つ唯一無二の絶望感』がより、和也の心を深くえぐった。



「奇遇じゃないか、優貴。今まで何をしてたんだい?」


 口調こそ明るかったものの、聖華せいかが臨戦態勢を解くことはなかった。



「すみません、聖華さん。用事があって外してました」

「退職届が出てないのを見るに、いつかは()()()に戻ってくる──って思っといてもいいのかい?」

「……今のところは、なんとも言えないですね」


 聖華の口ぶりからして、彼女は優貴がRDBに入っていることは勘づいているようだ。

 それは和也も同じだった。彼は聖華とは違い、真っ直ぐに疑問をぶつける。



「なんで、RDBに行ったんだよ。取締班じゃ、ダメだったのかよ」

「和也──俺は……そこに居るべきじゃないって思っただけだ。俺の意志は関係ない」

「じゃあ、お前はどっちが────ぐっ!?」


 和也の腹に、鈍痛が襲いかかる。

 彼の体は水切りの小石のように、地面と触れては離れを繰り返して吹き飛ぶ。背中と地面の摩擦によって、ようやく停止した。



「和也っ! あんた、随分と物騒なこったねえ」

「これでも、RDBとして振る舞わないといけないので。でも安心してください、殺しはしません」


 優貴は聖華にも、容赦なく拳を振りかぶる。聖華は数歩後ろに引き、道中で右足を踏み込む。



「《発動》!」


 聖華と優貴の間に、二つもの障壁バリアが展開される。彼の拳はその障壁に防がれることになった。



「あたしたちが、大人しくやられるとでも?」

「ふっ、でしょうね」


 優貴は微笑した。その口元を隠すように、左手で首元の青いマフラーを上に伸ばす。

 余った右手の指を全て折り曲げ、手のひらを隠す。そしてその拳を腰の上で構え、腰を浅く落とす。多少違えど、その様子はまさに正拳突きの構えだった。



「【堕罪の反抗(ドロップ・レジスト)】」


 正拳突きの中段のように殴る。

 ただ、そこに『暴行罪ぼうこうざい』が加わっている。結果としてその威力は、聖華に予想できないほど強烈なものになっていた。


 障壁を、二枚同時に壊したのだ。



「すみません、聖華さん」


 優貴は右腕を伸ばした勢いを回転力にし、聖華に背を向けると、左脚で聖華を蹴り飛ばす。



「がっ……!」


 和也ほどではないものの、聖華も地面に倒れ込んだ。

 聖華と和也は互いに顔を合わせると、錆びたような体を無理やり動かして立ち上がる。

 


「優貴……お前、俺を殴るのはいいけどよ、聖華さんを殴るのは違うだろ。お前、散々世話になったんだろ?」

「確かに、聖華さんは色んなことを教えてくれた恩師でもある。戦い方の基本、基礎体力を付けるためのトレーニング、そして実践練習。どれも、かけがえのない時間だ」

「だったら──」

「だけど、話は別なんだ。聖華さんに習ったとはいえ、聖華さんに手を抜かないって話じゃない」


 優貴は冷酷にそう告げた。しかし和也は、優貴の奥底に秘める思いを肌で感じ取っている。



「嘘つくなよ、お前が苦手な蹴り技じゃねえかよ。俺にだって、あんなへなちょこみたいな拳で殴ったじゃんか」

「──殺さないって言ったからな」


 優貴は顔をそむける。



「……あたしはね、優貴。あんたが強くなって欲しいから色んなことを教えてきたんだよ。でも、今になって後悔してるよ。あんたを強くさせるべきじゃなかったって」

「聖華さん、優貴にだってなんか理由が──」

「理由とか知ったこっちゃないね!」


 和也は聖華の顔を見る。



「理由はどうであれ、あいつはRDBとして行動するって言ったんだ。だからあたしら取締班は、全力であいつに抵抗しないといけない。これが……()仲間としての、あたしなりの決意なんだよ!」


 彼女の顔も声色も、怒りと悲しみが混ざっている感情を表している。

 だがその混ざった感情は、優しさのような温かみがあった。

 遅れてしまい、申し訳ございません。


 ご愛読ありがとうございました。次回も宜しくお願いします。

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