2日目 Game
保健室。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!??!?!?」
どうやら奏海が目を覚ましたようである。
「マウスツー、マウスツーーーーー」
ロビィがなかなか目を覚まさない奏海に人工呼吸をしようとしていた。
隣にはいろんな意味で涙目の秀と香がいる。
奏海は本能のままにロビィの顔面にパンチをお見舞いした。
「きゃ、きゃぁ!?ロビィ先輩!?奏ちゃんひどいよ!ロビィ先輩が心配してくれてるっていうのにっ!」
香はロビィを起こしながら奏海に言った。
正直、余計なお世話である。
「アハハ・・・」
“もうイヤ!”と奏海が思っていると、真剣な顔をした秀と目が合った。
「あ、あの・・・大丈夫?」
どうやら秀の方こそ心配していたようだ。
「ハ、ハイ・・・・あ、あの秀せんぱ」
「Oh~~!それは良かったねCute Girl!やはりMeのまうす・つー・まうすが良かったのかもね!?!?」
奏海の言葉を遮ったロビィの発言に、奏海はそのまま硬直してしまった。
「してないしてない本当だから!!!!!」
秀と香が慌てて否定する。
「大丈夫だよ奏ちゃん!しっかりしてー!!!」
(もうダメだ、お嫁に行けない・・・)
しかし奏海に2人の言葉は届かなかった―
キーンコーンカーンコーン
「はい、今日はここまで」
中等部理科担当の白州 大地が言った。
「はぁ、これから部活か・・・」
奏海はちょっとうんざりしていた。
「奏ちゃんHurry!!ロビィ先輩が待ってる!!」
香はロビィ口調が少し移ってしまったようである。
「う、うん・・・」
奏海はあまりロビィに会いたくなかった。
正直あのテンションと口調についていける自信がない。
ロビィには会いたくないが、体育館に行けば秀に会える。奏海はほんの少しだけ期待して、重い腰を上げた・・・
奏海と香は朝と同じ、体育館前のプランター付近に腰を下ろして草を抜き始めた。
「Hello!Cute GirlとLovely Girl!」
「あっ、ろびぃ先輩♪」
嬉しそうな香とは反対に奏海は心底“来るんじゃねー!!”と思ったが、秀も一緒なのを見て、笑顔を作った。
「TodayはOther schoolのStudentsがGameしにComeなんだよ!」
「ロビィ先輩のEnglishステキ!!!」
香は1人黄色い声を発している。
「確かエベレスト高校だったと思うぜ?」
秀が答えると、
「What!?エベレストHigh schoolだって!?」
ロビィがうろたえ始めた。
「どうしたんですか?ロビィ先輩?」
「あそこにはNow、Meのお師匠サマがComeしてるらしいんだ・・・」
ロビィの師匠。それだけで嫌な予感満載である。
そしてその予感は見事的中する。
「ロビィ!?ロビィじゃないかI!?」
「お師匠サマ!」
「久しぶりだNe~!」
その師匠と呼ばれた青年はロビィに抱き付いた。
「No!師匠!Lovely Girl達がSeeingです!!」
ロビィはなぜか赤面している。
「あ、あの、師匠って・・・???」
関わりたくないとは思っていたが、とても気になって仕方がない奏海は、勇気を振り絞って聞いてみた。
「Bokuはロビィの師匠なのSa!」
(だから何の!?)
「へぇ、ロビィの!あ、俺は伊吹秀っていいます!お名前何ていうんですか?」
なぜか普通に自己紹介した秀は、右手を差し出して仲良く握手をしていた。
「Oh!そういえば!名乗ってなかったNe!これは失礼!BokuはロビンソンSa!」
「じゃぁじゃぁ、略してロビーですか!?」
香が横から嬉しそうに口を挟んだ。
「So!よくわかったNe~!!」
“こりゃ参った!”といわんばかりの仕草で香に答える師匠改めロビー。
「師匠、NowはエベレストHigh schoolにいるんだよね?」
「エベレストって世界一じゃん!すげー!」
「きゃぁ~ロビィ先輩の師匠のロビーさんってステキ!」
友人たちのおかしな会話に奏海はついていけなくなり、1人で何やらブツブツつぶやきながら除草作業を再開した。
(もうイヤ・・・なんでロビィの師匠でロビーとか誰も突っ込まないの???)
4人が話し込んでいるうちに大分草を抜いてしまった・・・。
(そういえば今日、朝のワイドショーの占いが最下位だった気がする。もしかしてロビィとロビーに会うことを予兆していたのか!?いやいや、秀先輩にも会えたしなぁ・・・。)
バスケ部の練習試合を見物しながら奏海はとてもとても深く考え込んでいた。
ダムダムダム・・・パシュ! ダムダム・・・サッ!!
「おーっ!!ナイッシュー!!」
なんと秀のシュートがきれいに決まった。
「うわぁ!!秀先輩すごーい!!」
奏海が感動しているとコート内にいるロビィも喜んだ。
「How sweet!!さすがはShuだね!」
「ロビィ先輩も頑張ってPlease!!」
香も負けじとロビィを応援する。
「No!!Boku達も負けないYO!!」
敵チームもなかなかのようだ。
「はぁ・・・・はぁ・・・さすが・・・強いな・・・」
「No!Bokuらの力はこんなもんじゃないYO!」
ロビーもやる気のようだ。
(秀先輩頑張って・・・)
―ザシュッ!
奏海の思いが通じたのか、残り3秒のところで秀がゴールを決めた。
「How sweet!」
ロビィは興奮している。
ピーーーー
試合終了のホイッスルが鳴った。
「No~~~~~!負けるなんTe~~~!!」
「師匠!Meはやりましたよ!!!Win!!!」
ロビィは自分ひとりで勝った気になっている。
「きゃ~~~ロビィ先輩かっこいい~~!!」
香も大して活躍していないロビィの周りをぴょんぴょん跳ねている。
(最後に決めたのは秀先輩なのに・・・!!)
ロビィの隣には彼のせいですっかり影が薄くなった秀がポツンと立っている。
「ロビィ先輩!今日一緒に帰りませんか!?!??!?」
香はロビィを誘っているが、St.フジヤマ学園は全寮制なのであまり意味がない。しかし
「Yeah!Lovely GirlとGo homeできるよ!いいだろ~Shu~♪」
「な、なんだとー!!奏ちゃん、俺たちも一緒にGo homeだー!!!」
誘ってもらえてうれしい反面、ロビィ口調の移っている秀の姿に戸惑いを隠せない奏海であった・・・