1日目 Encounter
ここは某地域にあるSt.フジヤマ学園。
これからはじまる物語は壮大な(!?)ラブストーリーである―
「おはよう~」
ここは中等部3-F。1人の少女が教室に入って挨拶をした。
「おはよう奏ちゃん。今日の部活は体育館前のプランターの手入れだって」
“奏”と呼ばれたこの少女、三上 奏海は園芸部に所属していた。
「え、体育館前?あの・・・・荒地?」
「荒地って奏ちゃん・・・まぁ否定はできないけど・・・」
先ほどから奏海と話しているこの少女は奏海の親友、比良山 香だ。
「今日、バスケ部の練習試合があるから、手入れしてほしいみたいだよ?」
体育館が試合会場になっているため、せめてきれいにしようということらしい。
「試合かぁ・・・あんまり興味ないなぁ」
奏海はあまりスポーツとは縁がなかった。
「まぁまぁ、奏ちゃんそう言わずにさ・・・」
朝のHRが始まるまでにはまだ少し時間がある。奏海は香に促されて、体育館前を見に行くことにした。
「ねえ、どこにプランターがあるの??」
「あ・・・あれ・・・かな??」
「どれ????」
「あの・・・草むらの影の・・・・」
そういって香が指差す方向を奏海は見た。そこはもはやジャングルだった。
「なんか・・・すごいことになってるけど・・・」
「うーん、ちょっと草抜いとく?」
「えー・・・・・」
奏海は面倒くさそうな声を発しながらも草を抜き始めた。こう見えても根は真面目なのである。
体育館ではバスケ部が朝練をしている。
「あっ、奏ちゃんあぶなっ―」
香が声をかけたが間に合わず、体育館から飛び出してきたボールが奏海の頭にヒットした。
「痛っ!?」
奏海はボールが当たった頭を抱えてうずくまっている。
「Oh~、Sorry~~~大丈夫かい??」
ボールを飛ばした張本人と思われる怪しい男が体育館から出てきた。
「痛ったー・・・・・」
「おーい、ロビィ何してるんだー?」
バスケ部の部員と思われる男がもう1人体育館から顔を出した。それにしても“ロビィ”とはこの男の名前なのだろうか。
「oh!秀!ここにいるcuteなgirlにballを当ててしまったみたいなんだ!」
“秀”と呼ばれた部員はラップ調のロビィに近づいていった。
「何やってんだよー。しかも中等部の子じゃんか。ごめんなー」
「Sorry!!!!!」
2人は頭をさすっている奏海に謝った。
「い、いいですよ別に・・・・・」
奏海はこれ以上この怪しいロビィという男とかかわりたくないと思っていた。
なんだか面倒くさいことになりそうだったので、早々に許して教室に戻ろうと考えていた。
しかしそうは問屋が卸さない。
「ね、奏ちゃん、ロビィ先輩ステキじゃない!?」
奏海の親友である香はあろうことかロビィを気に入ってしまったようだ。
「あ、あんた!!!正気!?気を確かに!?」
しかし香は奏海の訴えなど聞かず、既にロビィにメロメロである。
「先輩!是非お名前を教えてください!!!」
すっかり香の目はハートマークである。
「Oh!MeのNameは炉火井 多可志だよ!ロビィとCallしてくれ!」
「キャッ♪」
香とロビィは友人たちを無視して良い雰囲気を作っている。
「えーと・・・君・・・・」
「あ、ハイ。三上奏海です。」
どうもいたたまれなくなったのか、秀が奏海に声をかけた。
「三上さん。邪魔みたいだよ、俺たち」
「そうですね・・・・」
秀と奏海は2人を置いてこっそりその場を離れようとした。
・・・が。
「Oh!?どこへGoするんだい、CuteなGirlとFine Boy!!」
「ふぁいんぼーい!?」
奏海は驚いているが、秀は構わず奏海を引っ張って行った。
「いつものことだから、放っておいてくれ」
「は・・・はぁ・・・」
「Oh~つれないね、Fine Bo~~~~y(ぼぅ~~~~い)」
「ロビィ先輩、お話しませんか!?」
かみ合わない香とロビィの会話をプランターの影から覗き見る奏海と秀。2人は額に汗を浮かべていた。
「・・・なんだかロビィ先輩ってすごいキャラですね」
「いや、君の友達こそ・・・」
2人は「はっはっは・・・」と乾いた笑いを浮かべた。
「あれでバスケ上手いなんて詐欺だよなー」
「え!?上手なんですか!?」
秀のつぶやきに“ありえなーい!”と叫んだ奏海はさらに続けたが、
「だってロビィですよ!?いったいどんな字書くっていうんですか!?」
とパニックになっていた。
「うん・・・俺も最初は驚いたよ。えっと確か・・・」
秀は地面に“炉火井多可志”と書いた。もう当て字としか思えない。
奏海は話題を変えようと必死になってここはあえて突っ込まないことにした。
「そういえば先輩のお名前は・・・」
「あ、俺?俺の名前は伊吹 秀だよ」
奏海は秀の名前が普通で心底ホッとしていた。
「い、伊吹先輩は今度の試合に出るんですか?」
「一応出るけどまだ1年だしなー。応援に来てくれるの?」
「えっ、いやっ・・・あの・・・・ハイ」
こちらの2人も何気に良い雰囲気になってきている。
秀は“イケメン”の部類に入る顔立ちだった。奏海は面食いではないが、イケメンの男子とこんなに密着して話していて悪い気はしない。
「奏ちゃんが応援に来てくれるなら・・・あっ、ごめん馴れ馴れしかったかな」
「あ、いえっ・・・私も・・・秀先輩って呼びますからっ・・・」
2人は何となく顔をそらして赤面している。
「Oh~SweetなBoy&Girl~!LOVE×2かい!?」
ロビィがプランターの影で良い雰囲気になっている秀と奏海に気づいた。
「ら、ら、ら・・・!?」
奏海は動揺している。顔から湯気が出そうだ。
「Oh??大丈夫かい、Cute Girl???」
(ら、らぶらぶ・・・・・・・!!!!!)
色恋沙汰に免疫のない奏海は恥ずかしさと動揺でめまいを起こしている。
「えっ、ちょっと奏ちゃん!?」
そのまま奏海の意識は遠のいていった―