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歪に素敵な短編集  作者: 啓鈴
歪な愚形の果実共
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第五話 『仮面記念日』












 俺の名前は江六英二(えむいえいじ)変わった名前だろ???


 職業は自動車整備士。夢は日本一の自動車整備士になること。


 その為、今じゃ自分の家を使って『江六モータース』という自動車整備の会社を開いている。


 客は一週間に一人か二人なんだけどやっぱり自分が好きな仕事をするって言うのは凄く楽しい。


 このお話は俺の仕事場に一台の車が入ってきた所から始まる。







「いらっしゃいませ!!! どうなさいましっ……た???」





「いや実はね、何かエンジンから変な音がするんだよ!!! ん? どうかしたのかい???」







 いや……どうかしたのかいって言われても……。


 年齢は…………解らない。


 服装はジーパンに革のジャンパーをしている。


 だけどそんなことは関係ない。




 この人の顔……アフリカ部族の神が宿ると言われてそうな独特の『仮面』を被っていた。









「取り合えず来週には受け取るからさ!!! それまでに直しておいてくれよ!!!」





「あ……ありがとうございました……」







 そう言うと仮面の男の人はトボトボと歩いていった。



 一体あの人はなんだったんだろうか??? もしかするとそういう趣味があるのだろうか???


 気を紛らわす為にTVをつけて見る。


 情報番組。画面の右下に『今日はいよいよ!!!』表示されている。






















 あれ??? 今日って何かあった日だったっけ???



















 ■



















 ――画面が女子アナウンサーに切り替わって俺は絶句した

















 ひょっとこの仮面を被りながらマイク片手に話している


















『今日はいよいよ“仮面記念日”です!!!


 私は今、スクランブル交差点に来ています。


 見てください!! この“仮面”をつけている人達を!!』












「嘘……だろ……???」










 真後ろの横断歩道の何百という人間が仮面をつけて歩いている。


 それぞれ皆の仮面は違ったけど確かに全員が仮面をつけている。


 何かのドッキリか??? チャンネルを変えて見る。










 料理番組。仮面をつけている。



 バラエティー番組 『俺をブサイクとは言わせないからな!!!!』



 顔見せろよ。



 通販番組 『今日はこの最高級の仮面を……』



 旅番組 『何でもここにはとても珍しい仮面があるとか』




















 はぁ??????????

















 ・
















 ・
















 ・


















 とにかく俺は町に出てみた。仮面、仮面、仮面。


 皆仮面をつけていた見たことがあるような物から無いような物までとにかく皆つけていた。


 さっきすれ違った男はタイガーマスクだった。関係あるのか???


 信号待ちOL達の会話が聞こえてくる。







「ねえねえ、その仮面どこで買ったの???」



「解る!? この仮面の良さがわかる!?

 実はネットオークションで1千万円で落札したんだよ!!

 まあ家は無くなったけど本当にいい買い物したわ!!」



「一千万円って安すぎない!? 私だったら三千万位出すけど???」





















 テメーらはどこの馬鹿だ。
























 ▲

















 取り合えず町を歩き回った結果、解ったことは二つある。


 一つ、どうやら今日は『仮面記念日』という日らしい。


 勿論俺には仮面記念日について何の思い出も無いし、こんな不思議な日も初めてだ。


 二つ、人々は仮面について大変な執着があり、仮面が無い人間が居ないほどだ。


 さて、どうしてくれようか……???


 俺は取り合えず洗面所に向かって顔を洗うことにした。これから……一体何をするべきか……???


 ――俺が顔を洗って鏡を見た時、絶句した。





























 真後ろに小さなおっさんが立っていた。



























 当然、今の俺ならその程度じゃ驚かない。何に驚いたのかというと……。


 このおっさんは仮面を『つけていなかった』、俺の同類というべきだろうか???


 俺がびっくりして振り返る。そしてゆっくりとその小さな口を開いた。







「やあ 江六 英二」




「何で、俺の名前を……いやそれよりお前は何で仮面をつけていない……???」




「仮面なら私はつけているさ。だがそれは表面上の意味ではあるまい」




「何の話をしている!? 俺の質問に答えろ!!」








 するとおっさんは嬉しそうにクククと本当に嬉しそうに愉快で愉快で仕方が無いように笑って見せた。


 そして何を語るわけでなく。懐から一枚のプレートを取り出した……仮面だった。



 それも不思議な仮面だった。その仮面には額に『悲』と書かれている。










「人はいろんな仮面を持っている物だ。




 社会での仮面、恋愛の仮面、悲哀の仮面、そして自分自身の仮面。




 つまり人間の感情の全ては仮面なのだよ




 喜ぶ仮面、怒った仮面、笑った仮面、哀れむ仮面。全部そろってその個人になる。




 そんな難しい顔をしなくていい。これは単純な話だよ。




 ただ単にこの『物語』はそれを知って貰う為のことだよ」







「物語……何のことだ!!! それよりこの世界はどうなってるんだ!!!


 何で……なぜ皆が仮面を被ってる!! 仮面記念日とは何だ!?」






「……そうか……彼らの技術はもうそんなに進歩していたのか……」











 彼ら……???


 技術……???



 まるで話が噛み合わない。このおっさんは……俺の知らない何かを知っているような。





















「仮面記念日。それを知ってしまった時には君はデリート(削除)されてしまう。



 それでも知りたいのか???」






「教えろ!!! 教えてくれ!!!」






















「仮面記念日とはね……





















 がー・・・ガー・・・ピーガー・・・ガガガガガガガガガガガ・・・・ガーーーガガガガガガg-アガガガガガガガガガガガ






















 体 ・ ・ ・ ・ が ・ ・ ・ 消 え て い く ? ? ? 





















 ●



















「おい、製品番号『ME―AG』はどうなった???」





「それが……バグのおかげで破壊するしか出来なかったので削除しました」





「また奴の仕業か……解った。電脳世界を一度リセットするか……???」









 ここは現実世界。


 灰色のコンクリートの部屋でパソコンがいくつも並んでそこに何名かの作業員が居る。


 そしてそのうちの一人の画面に『新作。仮面記念日』の文字が点滅している。








「本当にリセットするのですか……???


 いくら人工頭脳ですが意思を持たせることが出来る段階まで来ているのですよ???


 やはりプログラムの中のバグを取り除くのが一番……」







「もしプログラムに異常があるならもうとっくにそれは修正しているはずだ……。


 だとするとバグ……あのジジイはプログラムでは無いのか……???」





















「『電脳世界』――コンピューター内で人工頭脳を主人公として様々な状況に向かわせてそれを観察させる。


 言わば人間観察ゲーム。


 だけどもうこの世界を作り始めて3年が立ちます……。


 しかし今の段階は主人公に『意思』を持たせるまでしか出来ていません」


































「……あのバグが主人公に自分達が製品だと教えてしまったら物語はそこで終わってしまうだろう。



 一度主人公は放置して今はバグを取り除くことを考えた方がいい」

















「この製品が完成したら絶対に流行しますよ。



 もう後少しです。頑張りましょう!!!」





















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