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歪に素敵な短編集  作者: 啓鈴
歪め時間の砂時計
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第???話 『追悼:ヤマアラシ』













 目の前には私が殺したらしい少年がデスクトップに顔を突っ込んだまま息絶えている。


 傍から見れば酷く滑稽な光景だけれど、私自身もそれが可笑しくて堪らない。


 どうやら彼は、このパソコンを使って私から隠れながら小説を書き続けていたらしい。


 馬鹿なことをしているな、と思う。


 だから言ってやったのに。















『 私  から逃   ゲラ れ  る    とデ も 思   っ た ? ?  ? 』















 って。


 まあ弁解の余地もなく私は彼を殺してしまったようだ。


 私自身がこうすることを望んだわけではない。


 私の中にいるもう一人の自分。


 そう言ってしまえば、お偉い心理学者様は馬鹿にするんだろうけれど、確かにもう一人の私は彼を殺してしまったようだ。


 実際に彼は滑稽な姿で死に絶え、私の右の掌どころか腕全体が赤く赤く染まっている。






 くひひひひひひひひひ、バっかじャねェの???






 彼を殺してしまったことで、私はもう彼の後を継ぐことはできなくなった。


 彼、ヤマアラシは不死烏の後を引き継いで小説を書き続けていたようだ。


 それ自体に文句はない。文句はないよ???


 だけど私から隠れ続けて、学校にも来ず、コルヴォを殺してしまったことが非常に恨めしい。


 あぁ、彼はいったい何処に行ってしまったというのだろう。






 またまたまたまた私一人ニなってしマウじゃなイか???






 ずるっと抜け出した彼の頭にはデスクトップの残骸が突き刺さり、留まる事を知らないように血が流れ出してきている。


 酷く綺麗な光景で、笑いが引っ込む。


 辛うじて稼動している本体のディスク入れ口のボタンを押して中からCD-ROMを取り出す。


 真っ白だったはずなのに赤く染まりだしている。


 あぁ、これは丁重に扱わなければ。


 これでこれで、彼の後を引き継ぐ事はできるだろうか。


 私の口から絶えず漏れ続ける声に耳を傾けずにいられない。



























 ラリリルレロリラリルラリルラリリルルレロロリラリルルルレレロレロレリリリ!!!




 ほるむらりまりまり    くるけれれけけれわ




 みみみわえみえみみ    みみみみみみみみみ




 ミミミミミミミミミミミミミミミミミミミミミミミミミミ!!!


                                                 」























 馬鹿じゃないのか、私はりるらではないはずだ。


 彼女が私のもう一人の人物なら、さしずめ私はらりるってところか。


 ……それではネーミングセンスがないかな。


 何しろ、私はこれからこの名前で私を表現していくつもりなのだから。


 ……彼をリスペクトして、ハリネズミとでも名乗ってみようか。


 ヤマアラシとハリネズミ。


 うん、そんなに個々に大差はない。


 後は個人の技量の問題だ。


 さあ、早速帰って私という人物を名乗らなければ。


























 さようなら、気狂わされた孤独なヤマアラシ。

























 ―――――――――――――――― Fin. ――――――――――――――――






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