第四話 『この手誰の手』
その日、東 恵美は友達と一緒に買い物に来ていた。
まさかあんなことになるなんて……。
「ねえ恵美!! ちょっとあの喫茶店行こうよ!!」
「はいはい、どうせ私がイヤって言ってもいく事になるんでしょ???」
「さすが恵美様様。よく心得てらっしゃる」
そう言って私と鈴はショッピングモールの中にある小さな喫茶店にいく事にした。
勿論、私は本気でその喫茶店に行きたくないわけは無い。
その時、耳の中に奇怪音が入ってくる。。
パチ……パチ……。
「ねえ鈴。何か変な音しない???」
「え???」
バァァァァアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!
急に目の前にあったゴミ箱が爆発して吹き飛んだ。
爆風でゴミ箱の破片が私の上を飛び越えて真上の方にあるガラス窓の枠組みが外れてガラスが落ちてきた。
「うっ、わっ……」
目の前が真っ暗になって、全身に激痛が走った。
その激痛で私は気を失った……。
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気が付けば私は病室のベッドの上に横たわっていた。
この鼻をさすような病院のにおい……好きではない。
そして右腕がずきずきと痛んだ。右腕を見るとその腕は包帯でぐるぐる巻きにされている。
その時、前触れもなく扉が開いた。
■
病室の扉が開いた入ってきたのは私のお母さんだった。
瞳に涙を溜めてこちらにスタスタと走ってきてベッドの私に抱きついた。
正直少し痛かった。
「恵美……また心配ばかりかけてぇ……」
「お母さん……ごめんなさい」
「……恵美のせいじゃないんだから……それよりもう大丈夫??? 右腕は痛まない???」
右腕は痛かった。正直千切れるんじゃないかと思うくらいに痛かった。
だけどお母さんにはこれ以上心配をかけないために大丈夫だと言った。
そういえば……そういえばあそこに一緒にいた鈴は一体どうなったんだろう???
「お母さん……鈴は……鈴はどうなったの!?」
「それが……爆風で吹き飛ばされて壁に叩きつけられたみたいで……。
病院に着いたときにはもう駄目だったみたいなの」
「……『嘘』……???? じゃあ……」
「…………」
それ以上お母さんは何も言わなかった。
正直鈴がもう駄目だって事は解っていた。
あの爆発の時、隣を見たら鈴はそこには居なくて私の真後ろの壁にもたれ掛って血を流していた。
……私だけ生きていて……良かったのだろうか……???
するとお母さんの真後ろに居たお医者さんの人がカルテを見ながら私に言う。
「君は運が良かったんだよ。
実は君の腕は落ちてきたガラスで一度 切 断 されてしまったんだけどね。
人間の体って言うのは 切 り 離 さ れ て も暫くの間、生体反応が残るからね。
もう少しでも君の手術が遅れていたらもう 切 り 離 さ れ た ままだったんだけど」
切 断 ? ? ?
切 り 離 さ れ た ? ? ?
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一体……どういう事だろう???
私の腕が一度切断された???
じゃあこのギブスの中は???
「大丈夫よ、恵美。貴方はすごく運が良かったんだから。神様にお礼を言いなさい」
「あ……うん。それよりあの爆発は一体何だったんですか???」
「それは警察の仕事。仮説としては何らかのテロ集団が関与しているみたいだよ」
そうして医者の人はTVをつけるとあのショッピングモールが映った。
真下には「テロか!?」とデカデカと題名付けられている。
その後は医者の人から右腕の説明を聞いた。
なぜ切断されたのか??? 退院は出来るのか??? 元の生活に戻ることが出来るのか???
私の質問は全てYESだった。もし私の腕に生体反応が残っていなかったら後遺症が残ったらしい。
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一ヵ月後、私は無事に退院した。
右腕は今では自由に動かすことが出来る。本当に何も無くてよかった。
その後はお母さんと一緒に鈴のお葬式に参加してから家に帰ってきた。
それから数日後……。
私は右腕に時々起こる違和感に悩まされていた。
違和感――と言っても特別何か出来ないわけでもない。
ただし違和感があるのだ。まるで何か間違ってしまっているようなそんな違和感。
■
それからさらに数日の事。
今日から夏休みなので私の学校は昼までだったから早めに左手で鞄を持ちながら帰路を歩いていた。
夏が近づいているのか、セミが鳴き始めて、最近は猛暑日が多くなっている。
余りの暑さに私はポケットに手を入れて120円を取り出すとそれを自販機に入れてジュースを買って近くの椅子に座る。
「あっついな~~~~」
飲み終わった後にやはり後悔してしまった。家はもうすぐそこなのだから我慢すれば良かった……。
これからは自分に厳しくならないといけないと思いつつ、この性格は直らないだろうと開き直ってしまう。
そうして私がゴミ箱にスチールの空き缶を捨てようかなと思った時――。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!!!!!!!
予想もしなかった。まるで骨が折れるような音が右手の中からした。
恐る恐る右手を開いてみる。
そこにはまるで紙くずのようにグチャグチャに丸まっていたスチール缶があった。
「うっ……うわっ!?」
私は驚いてそのスチール缶を地面に投げ捨てると家に向かって全力疾走した。
……力は一切加えていなかった。それにどれ程加えたところでスチール缶だ。
一体なぜ……????
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さらに事件は続いた。
クーラーの設定温度を25℃にして現代科学の素晴らしさを満喫しながら私がベッドの上で携帯を弄っている時。
私が少しゴロンと横に転がった瞬間。
――携帯のボタンを押していた右手が突然と私の首元に対して攻撃してきた。
「うっ…………がっ……」
それも途轍もない力で、こんな力が私にはあるはずが無い力で……。
このままじゃ殺される。本当に自分の右手に殺される。
私は無我夢中になって机の上にあるボールペンに手を伸ばす。
……後5cm……3cm…………届いたっ!!!!
「うわああああああああああああ!!!!!」
勢い良く私は自分自身の右腕に向かってボールペンのペン先を振り下ろした。
血がにじみ出て鋭い痛みが全身を襲う。
すると右手は我に返ったように私の首を締め付けていたのを止めて重力に逆らわずにベッドの上に落ちる。
あ
れ
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私はそこで始めて気がついてしまった。
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翌朝。
「お母さん!!!! 私の右腕変なの!!!」
「まだ違和感があるの???」
「違うの!!! この腕、私の首絞めたり……ご飯のとき無意識に箸を折ったり……」
するとお母さんは難しそうな顔をする。
当たり前だ。誰でもこんなことを言われたらそりゃ不思議に思うだろう。
「まだ慣れてないだけじゃ……」
「それにね……それにね……
私 右 手 首 に ホ ク ロ な ん て 無 か っ た よ ! ! ! !
ね ぇ ! ! こ の 手 は 一 体 誰 の 手 な の ! ? 」
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私の思ったとおり、私の切断された瞬間に手の行き先を知っている人は居なかった。
知っていたとしてももう、この世には居ない。
その後、私の話を信じてくれたお母さんはすぐに医者の人に相談してくれて、私は右腕を切断してもらった。
私の体の一部に知らない人の体がくっついているのが怖かったから……。
これはその後、私が調べて解ったことなんだけど。
実はあのショッピングモールでは以前にバラバラ殺人があったらしい。
そして被害者の女性の死体をどれだけ捜しても『右腕』だけは見つからなかったらしい。
そう言えば医者の人は生体反応は死後1時間だと言ってた様な気がするんだけど……。
気のせいかしら???