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歪に素敵な短編集  作者: 啓鈴
歪め時間の砂時計
37/46

第Ⅲ.Ⅴ話 『対談』


















 Q. 貴方は誰ですか???





 A. こんにちは、死体です。宜しくお願いします。





 Q. 行き成り本題に入りたいんですけどよろしいですか???





 A. どうぞ。





 Q. 実際に死んでみてどうでした???





 A. そうだね。心地よかったかな。


 自分のあるべき姿に戻っていくというか。


 段々と死に近づいていくのが凄く気持ちよかった。





 Q. ……。





 A. 不思議だ。欲が無いんだよ。何にも入らない。


 だから逆に、全ての物が手に入った気分……。満ち足りてる。





 Q. ……。





 A. それから何も怖くないんだ。全てを失ったからこれ以上失う物がない。


 将来とか試験とか追い立てられる物が一切無い。


 名誉とかお金とか安息とか満足感とかさ。


 生きている時にそれらを手にする事が生きる目的だと思ってた。


 でも生きている間はそんな物は手に入らなかったよ。


 死んだ後に全部手に入った気分になった。





 Q. ……。





 A. 人間はみんな死を遠ざけようとするけど。


 死の中に本当に望んでいる物があるのかもしれないな。





 Q. ……。





 A. ……。





 Q. ……。





 A. ……。





 Q. ……どうかしました???





 A. ……。





 A. ……。





 A. …………。





 Q. ちょっと……大丈夫ですk





 A.うわああああああああああああああああああああああああああ!!!






















 ■





















 A. 思い出すだけでもおぞましい!!!


 こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい!!!





 A. なくなるんだ全部なくなるんだ全てなくなる何もかもなくなる。


 何だろう。概念とか記憶とか感情とか。





 Q. さっき満ち足りてるって言ったじゃん。





 A. いったけどーいったけどーいったけどーいったけどー。





 Q. 何でそんな気持ち変わっちゃたのか説明してよ。意味解らない。





 A. なくなるんだ。





 Q. 失うって事か???





 A. 違う!!! 失う事さえ出来なくなるの!!!





 Q. 零になるってこと???





 A. 違う!!! 零になんてならない!!!





 Q. じゃあなんなのさ





 A. なんにもならない





 Q. なんにもならないの???





 A. 確かに死ぬと、辛い事は消える。満ち足りる。


 でもそれが凄く味気ない。


 辛いってのは、幸せの反対。両方あって始めての感覚だ。


 死ぬと、辛くも幸せでもない。どっちでもない。


 解るか??? この感覚がずっと続くの……ずっと……ずっと――





 Q. 味の無くなったガムを噛み続けるみたいな???





 A. ああ……。


 どれが幸せでどれが不幸なのか解らなくなるんだ。


 これが不幸なのかあれが幸せなのか……どれがどれでどれがどうなのか。





 Q. 意味わかんない。






















 ▲





















 A. だからさ。不幸でも幸せでもない、真ん中がずっと続くの。


 そしたら不幸とか幸せだとかって言う概念が解らなくなっていくんだ。





 Q. 解らない???





 A.だからもう幸せの度合いを表現する事が出来なくなるんだよ。





 Q. ……。





 A. じゃあ聞くけど君はどうやって幸せを定義する???


 君が幸せを感じるのはなぜだ???


 幸せを感じるのは不幸を知っているからさ


 でも二つとも無い。だから区別できないんだよ。区別する必要が無いんだ。


 区別する必要がないと……それはなくなってしまう。






 Q. ……意味不。





 A. じゃあ仮に人類が全員女だとしよう。


 そうしたら男と女って言う概念は必要ある???


 ないんだ。すると男女って言う概念は存在しなくなるんだ。


 そう……死ぬと同じようにして色んな物が消えていく。


 音も……何もかも消えちゃう……時間も……記憶さえも……味覚も……色も……。


 これが凄く怖いんだ。


 ……怖いという概念も消えるんだ。怖いのに怖がる事も出来ないんだよ。





 Q. でも生きるのも辛いよ。





 A. ……もしかしたらさ。


 人間て言うのは生きているときには死にたいし死んでいるときには生きたいんじゃないかな。


 それがずっと繰り返されていくんだ……永遠に……ずっとずっと――





 Q. 君は今どう思ってるの。





 A. 生きたい。





 Q. 即答かよ。





 A. ――死ぬのも生きるのもどっちも嫌なのかもね。























 ●




















 A. よく考えてみれば生きているときと死んでいる時。どっちも嫌な事がある。


 でも良いこともある。どっちも大差ないんじゃないのかな。





 Q. へー。





 A. 生きたいと思って生まれてきて……死にたいと思って死んでいく。


 前の記憶が無いから解らないけど、本当はそうやって無意味にずっとぐるぐるぐるぐる回ってるんじゃないかな。





 Q. 死と生と両方を経験したあんたが言うならそうなのかな。





 A. それなら人間って一体何なんだろね。


 死んだり生きたり死んだり生きたり死んだり生きたり死んだり生きたり死んだり生きたり。


 それならさ。君は生きてなよ。





 Q. えー……だって生きてるのだって辛いし。






 A. 死ぬのだって相当辛いさ。


 それなら生きてる中でどう楽しむか考えなよ。


 そうやって生きていくしかないんだよ。





 Q. ……そうか……なら僕は……






 A. ああ。そろそろ疲れた。


 ……じゃあ……辛いかもしれんが・・・生きて・・・、_・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 Q. あーあ。消えちゃった。


 まあいいや。





 Q. ありがとう。
























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