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歪に素敵な短編集  作者: 啓鈴
歪め時間の砂時計
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第Ⅲ話 『対談』




















 Q. こんにちは、こういった機会は中々無いので僕は貴方と対談できて非常に良かったです。





 A. そうですか。僕みたいなのでいいならいくらでも取材してください。





 Q. でわ早速ですが、貴方は誰ですか???





 A. 私は赤ちゃんです。ついさっき母体から取り出されたばかりです。





 Q. それはそれは、おめでとうございます。





 A. おやおや、貴方は嫌味な人ですね。本当におめでとう等と思っていますか???





 Q. おめでたいじゃないですか。何か拙いことを言いましたか???





 A. ……その前に一つ貴方に聞きたいことがあります





 Q. なんですか???





 A. 『この世に生まれてきたのは本当に幸せ』なんでしょうか???





 Q. 随分と難しい事を仰いますね……そうですね。少なくとも不幸ではないと思っていますよ。





 A. じゃあ質問を変えましょう。


『貴方が死んだ時にもう一度、この世界に生まれることが出来る』ならどうしますか???





 Q. うん……それは難しい質問ですね……多分そのまま死ぬでしょうね。





 A. それはなぜでしょうか???





 Q. 生きなければ幸せだとか不幸せだとかそういうのは一切無くなるから……ですかね???





 A. その通りです。全く持ってその通りです。


 つまり生きなければ何かに苦しむ事は無いんですよ。


 勿論生きなかったら幸せを感じることは無い。


 でもそれを不幸せだなと思う事も無い。


 人間として始まってしまったからが故の悩みと言えますね。


 だから僕はこの世に誕生してしまったのは非常に残念な事だなと思うんですよ。





 Q. (難しい事を言う赤子だな……)























 ■





















 Q. じゃあこの世に生まれることは失敗だといいたいんですか???





 A. そうですよ。よくこういう事を聞きませんか???


『お前達は3億分の1に勝った勝ち組なんだ。生まれながらにして勝ったんだ』


 これは受精する確立です。


 こう見れば、まるで自分はさも勝ったかのように思うかもしれませんがぜんぜん違いますよ。





 Q. 違うんですか???





 A. 違いますよ。ちょっと視点を変えれば真逆の解釈だって出来ます。


 例えば、こう考える事は出来ませんか???


『本当に勝ったのは2.9999.999の方、負けたのは1の方』





 Q. 随分と変な考え方をしますね。





 A. そうでしょうか??? 僕はさっき言いましたよね。


 この世界に生れ落ちてしまうのは非常に残念だと……。


 だからこの世界に誕生するのが“負け”。


 この世界に誕生しないのが“勝ち”


 貴方はそう思いませんか???





 Q. そういう考え方もあるとは思う程度です。





 A. じゃあ少し眼を閉じましょう。


 もし貴方がこの世界に生きていなければ……想像してみてください。


 一体この“意識”はどうなるのでしょうか???


 夢を見続けるように映像を見続けるでしょうか??? 違います。


 夢というのは脳の活動、脳が無ければ夢は見ません。


 じゃあ一体この意識はどうなるのか。


 答えは『無』です。


 何も無い。本当の意味で何も無い。


 意識が無いんだから迷う事も無いし悩む事もありません。


 そもそも自分が何だったかもわからない。とにかく何も無い……。





 Q. ???





 A. すみません。少し混乱してしまったようですね。


 まあ生きていなければ本当に何も無かったと思っていてください。





 Q. (こいつ頭狂ってる)























 ▲





















 Q. 結局貴方は何が言いたいんですか???


 回りくどくてよく解らない箇所があります。





 A. そうですか。それはすみません。


 じゃあ直球で行きます。


『死にましょう』





 Q. は???





 A. 死ぬんだよ


 生きているのが間違いなら死ねばいいじゃないか。






 Q. ……。





 A. 死んだら何もなくなるんだよ。


 何も迷う事はないし何も怖がらないですむ。





 Q. ……。





 A. 死んだら何も無くなる。


 痛みも絶望も怒りも殺意も……感情という感情が無くなる。


 結局ね。生きてきてしまった以上のリスクを背負う必要があるんだよ。


 それから解き放たれたいなら死ねばいい。







 Q. 黙れ糞餓鬼。























 ●






















 A. 落ち着きましょうよ。深呼吸深呼吸。





 Q. ……おーけー……。





 A. きっとね。人間なんて皆考えてる事は同じなんだよ。


 どこかで絶対に死ぬ事を考えている、当たり前さ。


 死ねば何からも逃げる事が出来る。





 Q. どういう事???





 A. 死ねばさ、悩みとか失敗とか絶望とかそういう物から一気に逃げれるんだよ。


 なんだろね。どんな物からも逃げる方法――それが死なんだと思うよ。





 Q. ……。




 A. ……。





 Q. ……。





 A. ――そうだ。ここで特別ゲストの登場です。





 Q. 特別ゲスト???





 A. おーい“死体”くーん。
























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