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歪に素敵な短編集  作者: 啓鈴
歪な愚形の果実共
3/46

第三話 『嘘』

 これからする話は全て『嘘』です。


 登場人物もストーリーも作者の言う事も全て『嘘』であり『嘘』でしかありません。


 つまりこれは全てを偽った『嘘』の物語です。


 誰もが騙されるような『嘘』でしか成り立っていません。


 ここで良く考えてみてください。貴方は本当に生きていますか??? 私も考えて見ます。


 少なくとも私が生きているという事が『嘘』である可能性は零ではありません。

 もしかすると貴方は『嘘』で私も『嘘』かもしれません。


 だから『嘘』なんです。


 全部『嘘』なんです。


『嘘』に耳を傾けてはいけません。だから本来はこの物語も見てはいけません。


『嘘』は『嘘』であるように『嘘』も『嘘』であるように。


 この物語の全てが『嘘』であるように……。














 僕は生まれたときからお姉ちゃんが居る。


 歳は7歳離れている。僕は12歳でお姉ちゃんが19歳。


 これはそのお姉ちゃんが誕生の日に起きた『本当』のお話。

















 ■


















 それはある一言から始まった。


 今日はお正月。僕の家に親戚の人達が集まっていた。


 その時に僕のお母さんの兄。つまりおじさんが酔っ払った勢いでこう言った。










「知ってるか!? お前の姉さんはな実は男なんだよ!!!」




「……え??? どういうことですか???」




「そのままの意味さ!!! 見かけは女だがね、中身は立派な男なのさ!!! つまりあれだな。オカマってやつだな」









 おじさんはそのまま隣の人とお酒を飲み始めてしまった。


 それより僕のお姉ちゃんは男なんて……いやもしかすると驚かすための『嘘』かもしれない。


 その日から僕のお姉ちゃんを見る目は変わった。監視……まさしくそんな感じだった。


















 ・
















 ・


















 ・


















「ちょっと拓也!!! 早く起きないと学校遅刻しちゃうよ!!!」



「はーい。今行くよー」







 お姉ちゃんはいつでも僕の見方だった。あれは僕がもっと子供だった時。


 僕がいじめられて学校から帰った時、お姉ちゃんはそいつらをボコボコにしてくれた。


 ほかのことでもいつでも僕の見方だった。お姉ちゃんは僕の味方だった。






「……男、だったなんて……」






 確信があるわけでもない。もしかするとやっぱり『嘘』なのかもしれない。


 だけどお姉ちゃんは本当に男なのかもしれない。


 今度お母さんに聞いてみようかな……。


















 ▲

















 その日も僕はお姉ちゃんを監視していた。証拠を探さなくちゃ……。


 ついでにもうすぐお母さんは帰ってくる。いい機会だから聞いてみようかな。


 ちなみに僕にはお父さんはいない、僕が生まれてすぐに死んじゃったみたい。





 ピーンポーン♪





 玄関のチャイムが鳴った。お母さんだった


 よし!! 聞いてやる!!!






「あのね……お母さんに聞きたいことがあるの」




「ん??? どうしたの???」




「お姉ちゃんって本当は男の人なの???」







 その瞬間、お母さんの顔は複雑そうな顔をした。


 まるで僕が聞いてはいけないことを聞いてしまったかのような。


 そして震えるような声で言う。






「……いつから知ってたの??」



「親戚のおじさんが言ってた……それより本当なの???」




















「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 本 当 よ 。 あ の 子 は 本 当 は 男 な の 」




















 僕は絶句した。


 その後は来年に性転換手術というのを受けるらしいという話を聞いた。


 話の内容が難しくてわからない。







「お母さんも『嘘』をついてるのかもしれない…………探さなくちゃ……本当の証拠を……っ!!」







 気がつけば僕はバタフライナイフを持ってお姉ちゃんの部屋にいた。


 お姉ちゃんは今、お風呂に入っている。


 部屋の中を物色していると一つだけ開かない引き出しがあった。


 確かこの鍵穴にナイフを入れてガチャガチャすると……。


 開いた。



















 扉が開いた。





















「 拓 也 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 何 し て ん の 」




















 ●



















 同時に引き出しの中から出てきたのは一枚の写真。


 一人は小さな女の子。そして隣にいるのは……お姉ちゃん???


 そして部屋に入ってきたのはお姉ちゃんだった。







「あんた……その引き出し開けたの……!?」




「……」




「ちょっと……写真返してよ!!!」




「僕……知ってるんだよ……」







 僕は叫ぶように言う。







「……お姉ちゃんが……男だって事」





「……あんた何言ってんの……」





「ずっと僕に『嘘』付いてたの!? ずっと僕を騙してたの!?


 お姉ちゃんは!!! お姉ちゃんは偽ってきたんだろ!? ……本当だったんだね……」







 するとお姉ちゃんの口から予想もしなかった言葉が出る。


 それも僕の知っているお姉ちゃんじゃないみたいな口調で。







「んな訳ないでしょ。それにね、今までずっと『嘘』付いてきたのは拓也。あんたの方でしょう!?」





「……え……」




















「あんたはね、本当は女なんだから!!!!!!」



















 違う!!! 違う違う違う違う。




















「違う!!!」





「違わないっ! あんたは昔、お父さんが無理矢理に性転換手術を受けさせたのよ」





「嘘だ……違う……」





「あんたはまだ小さかったから覚えてないだろうけどね……。


 ……その写真……私の隣にいるのはあんたよ」
















 もう一度、僕は写真の女の子を見てみる。


 これが……僕????




















 ●


















「そうよ……あんたはね……、ずっと自分を偽り続けてきたのよ!!


 あんたこそ自分自身にも『嘘』付いてきたのよ!!」





「……違う……僕は……違う……。嘘だろ!!!! 嘘だといえよ!!!!!」





「ちょっ……やめてよ!!!!」





















「嘘だぁぁぁぁぁああああああ!!!!」



















「いやっ……キャアアアアアアア!!!!」


















 ・
















 ・
















 ・



















 ◆
















 次の日









「おい……三咲どうしたんだ???」





「……昨日ね、家に帰ったら拓也と舞が死んでた。ついでに拓也の遺言状があった」






「なになに……。



 僕は勢い余ってお姉ちゃんを殺してしまいました。何で僕が男じゃないって教えてくれなかったの???


 もう何が『本当』で何が『嘘』なのかわかりません……さようなら



 あらら……」






「本当にあらら……な話ね」






「お前が言ったら駄目だろうが。


 それにしても……舞ちゃんが男だったんじゃなくて、拓也君が女の子だったなんて」



















「拓也は男よ」


















「え??」





「あの子達はちゃんとした男と女よ」





「じゃあお前……俺に舞ちゃんは男だったって言ったのは『嘘』か??」





「『嘘』よ」





「何でだよ???」






「あの子達を引き取った時、舞が一枚の写真を持ってたの。


 その写真には舞の本当の妹が写ってたから。嘘吐くしかなかったの」





「……ちょっと待て、引き取った???」





「あの子達は『本当』の姉弟でもないし。私の子供でもないのよ」





「なるほどね…………ずっと『嘘』付いてたのはお前の方だったか」




















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