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歪に素敵な短編集  作者: 啓鈴
歪な愚形の果実共
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第二話 『殺言葉』






 俺の名前は木村健治(きむらけんじ)。今日からこの会社で働く事になった。


 ネクタイもしっかりして、髪の毛もセットして家を出た。


 ……何もかも上手くいったと思った。だけどどうだ???








「……会社までどうやって行くんだったっけ……???」








 なんという事だ!!!


 ここまで来たのに入社初日から遅刻なんて許されるはずが無い!!!


 今から家に帰って道を調べるか??? いやそんな時間は無い。


 風邪を引いた事にして休むか??? ……あり得ない……。


 もっともっとありそうな嘘をつかなければ……。


 そうだ――大学の時にこれを使ったら簡単に部活を休めた……!!! 違和感も無いし誰も俺を疑わない!!


 俺は会社に電話する事にした。










『もしもし、●●株式会社ですが』




「もしもし、こちら木村健治という者なのですが……実は昨夜母が危篤しまして……」




『解りました。心が落ち着くまで会社には来なくて結構です。上の者には私が伝えておきます。でわ』










 完璧だ!!!


 なんて俺は演技派なんだろう!!! 誰も疑いやしない。


 そうだ。一応殺してしまったんだから母には謝っておくことにしよう。


 もう一度携帯の番号を鳴らした。




















 ■



















 数回のコール音の後、受話器を取るような『ガチャ』という音が聞こえる。


 いつもならそれと同時に俺は誰もが言うであろう言葉を言うのだけれど何だか様子がおかしい。


 誰かがすすり泣くような声。この声は……姉か???






「俺だけど……姉ちゃんどうかしたの???」





「ヒッ・・・ク。。。ヒッ・・・ク・・・さっきネ・・・お母さんが・・・ァェァ」





「ごめん。もう少し大きな声で言って」




















「お母さんが死んだ」


















 ・















 ・















 ・

















 まさか言った事が本当になってしまうとは、とんでもない偶然もあるもんだ。


 そういうわけで俺は本当に病院まで来て病院のベットの上に横たわっていた母さんを見た。


 突然の交通事故で死んでしまったらしい。


 俺はずっと唖然としていた。唖然と言うより魂が抜けたような顔。


 明日からどうしよう。。。少しの間、実家に居ようかな???


 仕事はどうする??? あの人は少しの間休んでいいといったが本当だろうか???


 会社の初日から二日も休んでいいとは思えない。一体どうすれば……。


 とにかく会社に電話した。









『はい、もしもし●●株式会社ですが』




「もしもし、木村健治という者なんですが」




『ああ、明日から会社には来られるんですか???』




「実は……姉が後追いで自殺してしまって……」





















 俺は一体何をしているんだ???



















 ▲


















 こんな馬鹿げた作り話が通用するわけが無い。これじゃ今日のサボりの事もばれてしまう!!!


 二呼吸後に受付の女の人の声が返ってくる。



















『解りました。上の者には私が連絡しておきます』



















 ……なんだと……???

















 ・
















 ・

















 ・


















 朝の目覚めは最低だった。


 まず何処かからする異様なまでの生臭いにおいで頭がガンガンする。


 昨日の夜もまともに寝ることは出来なかった。散歩がてら公園にでも行って来るか。


 そう思って布団から出てリビングに出る。






















 部屋の中心で血まみれの姉が倒れていた。




















「ウ・・・・ウゲッ・・・・ッッ!!!!」














 込み上げる物を台所にはき捨てた。死んだ人間とはここまでくさいものなのだろうか。


 そうして自分の携帯を手にとって警察を呼ぼうとボタンを押す。




















 ピロロロロロロロ口♪




















「はい、もしもし???」




『君!!! 入社当日から何サボってるの!!!』




「え??? 受付の女の人に電話したんですが……」





















『ハァ??? うちみたいに小さいな会社は受付の子なんか雇ってないよ!!!





 それよりやる気が無いんならもう来なくていいから!!!』






















 じ ゃ あ 俺 が 電 話 し た の は 誰 だ ? ? ? 





















 ●




















 電話が切れると同時に全てが繋がったような気がした。


 俺が言ったとおりに人が死んでいった。それも言葉だけで。


 勿論そんな事あり得ない。オカルトや幽霊何かあるはずが無い。


 じゃあ誰がしたか??? 俺はしていない。これだけは解る。






「……俺の言った事を知っている奴は他に誰が居る……いや一人しか居ない。




 あの受付の女しか居ないっ!!!!!」






 俺が二人の人間を殺した事にしたのを聞いていたのはあの受付の女だけ。


 その時、また携帯がなった。










『もしもし、●●株式会社ですが???』




「テメーがやったんだろ!!!! 何の為に二人を殺したんだよ!!!!」




『……』




「二人を殺した事にした事を知ってるのはお前だけなんだよ!!!」




『ふぅん……これまで何百人と同じような事をしましたが気がついたのは貴方が初めてです』







 女はそれでも勝ち誇ったように言う。







『何の為にっ!!!! 何で二人を殺した!!!』




「警察は呼んでおきました」




『質問に答えろ!!!』





















「簡単な事ですよ。●●●が▲▲▲で■■■だからですよ」




















 警察が到着したときには木村健治は携帯を握り締めながら死んでいた。


 彼の顔は何かとんでもないようなことを見てしまったような顔だったらしい。























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