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第16話 明かりが灯る夜



「……本当に、きれいですね」


リアがそう言うと、マリナは笑ってうなずいた。


「リアの声、とても楽しそう。よかったわ」


ふたりで並んで歩いていたとき──



「あっ、リア!」


ミナが気づいて駆け寄ってくる。


「こんにちは! マリナさん! リア、来てたのね。紹介するわ。こちら、リゼット」


「初めまして、リアちゃん! リゼット・フローレです! ミナやイファから話は聞いてるよ! あ、オルレアンのお菓子のお店、知ってる?」


ふわふわの巻き髪、くりくりとした大きな目。

太陽みたいな笑顔の女の子だった。


「……はい、あのパン屋さん、ですか?」


「そうそう! あれ、うちのお店なの! いつもは市場にもお店を出しているんだけど、今日は屋台も出してるから、あとで絶対来てねっ!」


「今日は屋台にあんた、いないじゃないの」


「あはは〜! ミナ鋭いねぇ! 実は、今日はね、これから舞台で踊るんだ!」


「……?」


「わたし、今年の、水の巫女なの」


えへへ、と照れ笑いを浮かべるリゼット。


「もしよかったら、ミナと一緒に見にきてね!」


「はいはい、リゼットったら……勧誘しないの!」


楽しそうに笑うミナとリゼット。

不思議と、リアの口角は微かにあがる。



「ふふ。リア、お友達ができて良かったわ。私は、ちょっと疲れちゃったから……今日は先に帰るわね」


マリナがそう言って、そっとリアの背中を押す。


「みんなで、楽しんでいらっしゃい」


リアは、こくりと頷き、ミナとリゼットと並んで歩き出した。






それからしばらく、三人は人混みを抜け、広場に設けられた舞台の前へと向かった。

舞台には、灯りを受けてきらめく水鏡が敷かれ、リゼットの舞を待つ人々でいっぱいだった。


「よーし! そろそろ、私の出番だ! 頑張ってくるね! きっと二人とも、わたしに見惚れちゃうよ〜! じゃ、またあとでね!」


リゼットは手を振って、舞台裏へと駆けていった。

リアとミナも舞台がよく見える場所を探す。


「ここならよく見えるかな」


ミナがそっとリアの腕を引いて、広場の石段に腰を下ろす。

すると、静かに音楽が流れ始めた。



舞台の中央には、白と青の衣をまとったリゼットが現れ、美しく舞う。

水のようにしなやかな動きは、彼女の美しさを際立たせていた。

光を受けて輝き、銀が散る。

まるで本物の水の精霊のようだった。


リアは目を見開き、息をするのも忘れるほど見入っていた。


「綺麗……」


「でしょ? リゼットは、踊ってる時が一番輝いてるのよ」


ミナが自慢気に言う。

そして、舞を見るミナが静かに口を開いた。



「──ねぇ、リア。わたしたちの約束、ちゃんと覚えてる?」


ミナはゆっくりと顔を向け、リアの瞳を見つめた。


「……手紙、書けた?」


「……はい。」


「そっか……よかった。わたしも、書いてきたわ。今年こそって思って……」


いつもハキハキと喋るミナの声は、少しだけ震えていた。


「去年は、できなかった。でも……あのとき、リアと約束したから。今年は、後悔したくないの……だから、ちゃんと、渡すわ」


リアはミナの手を、そっと握った。


「……きっと、大丈夫。……ミナの、気持ち、ちゃんと届くと思います。」


ふたりは視線を合わせた。



そのとき、リゼットが最後の舞を終え、静かな音楽がふたりの約束を包むように消えていった。


そして、空はゆっくりと色を変える。まだほんのり明るい空に、ひとつ、星が光る。





星灯の夜は、まだ始まったばかり。




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