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第1話 少女リア




風が、木々の間を通り抜ける音がした。



草の香りと、湿った土の匂い。

湛える空気は、冷たく澄んでいた。

朝露が葉をつたう。

鳥のさえずりが遠くで響く。



──少女が、倒れていた。



白い肌。冷えきった手。

乱れた銀色の髪が、枯葉の上に広がっている。


薄い服の胸元が、わずかに上下しているのを見て、イファは安堵の息をついた。



「……生きてる」



彼はそっとしゃがみこみ、少女の肩に手を伸ばした。



どこから来たのか、どうしてこんな森の奥に──



疑問は山ほどあったが、今はそれどころではない。



「……大丈夫?」



声をかけても、その少女は反応しない。

不安な気持ちは拭われることなく、微かに震える手で少女の体にそっと触れる。


こんなに冷たい──


彼は急いで上着を脱ぎ、少女にかけた。


もう一度声をかけようとして、ふと気づく。




彼女の胸元が、うっすらと光っていた。




青白く、やわらかな光。


それは脈動するように、静かに、規則的に明滅している。



何だ──



触れてはいけない。

そんな直感がイファの胸をよぎった。


光は恐ろしいほどに美しく、ほのかにあたたかかった。

規則的なそれは、彼の不安を掻き立てる。

まるで、自分に助けを求めているようだった。


再び声をかけても、少女は、まだ意識を取り戻さない。



イファは深く息を吸うと、そっとその体を抱えあげた。想像していたよりもずっと軽い。陶器のような白く、綺麗な肌には、ところどころに小さなあざや傷があった。



一体、なぜ──



小さな村へ戻る道は、ここからまだしばらくかかる。


「大丈夫。……俺が、守る」


そう言って、彼は歩き出した。自分と約束するように。


朝の陽の光が、彼女の銀色の髪を照らす。

自分と同じくらいの歳だろうか…。




風が、彼の背中を押すように通り過ぎてゆく。

それでも、少女のまぶたは、まだ閉じられたまま。

イファは、しっかりと前を見て歩いていた。




そして、この出会いが彼の運命を、世界の未来を変えることになる。


それはまだ、誰も知らない物語のはじまりだった。



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