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戦闘!マルコーシア


 異世界生活30日目、俺はスラムにある狭い路地裏で1人立っていた。『マルコーシア一派掃討作戦』の依頼、作戦はいたってシンプルだ。街の各所にある一派のアジトを精鋭部隊で同時刻に各個強襲、そこから討ち漏れた者達を大通りに繋がる路地に配置された構成員が捕縛するといった感じである。


「……もう始まってんのに、誰一人来ないな」


 師匠、リル先、千冶、エルドさん達はアジトを直接叩きにいく部隊に配属されたものの、俺はランクの関係で路地に回されていた。魔具で開戦の合図が送られてから、とうに10分が経過しただろう。先程まで聞こえていた騒がしい音は鳴りを潜め、遠くの方で微かに戦闘音が聞こえるのみとなった。しかし、これといって此方に近づいてくる音も気配もない。ただただ時間だけが過ぎ、俺の緊張感のみが高まっていた。


「……『探知』」


 あまりマナを消費させたくないが、必要経費として多少目を瞑り魔法を行使する。近づいてくる気配がないか探り、その範囲を広げるが……本丸で争っている以外にこれといったことはない。


「いや、あった……!」


 魔具で戦闘のため持ち場を離れることを報告し、路地をコンクリで封鎖する。鉄筋でも詰めれたら頑丈になるのだが……そんなことしてる暇はない。

 地面を蹴って飛び上がり、高速で移動する存在へ近づく。青髪をたなびかせて屋根を駆けるその人を視認し、なりふり構わずドロップキックをかます。


「ぬぉっ……! 随分な挨拶じゃねぇか!」


「こん前のお返しだゴルァ!」


 マナで強化した跳躍力、魔法で勢いを加速させ、回転しながら飛び蹴りを行う。が、すんでのところで躱された。くるくると空中で目を回し、着地点を見失う。が、なんとか魔法で体勢を立て直して着地をし──


「うっぷ……気持ち悪ぃ」


「何がしたいんだ、お前」


 そりゃあ、こうして気ぃ引いて時間稼ぎをするためだが。


「俺、お前、倒す」


「力の代償に知能が衰えたか?」


「お前に合わせてやってんだよッ!」


 やはりコイツ、この前会った時でも思ったが、ある程度話が通じる。それどころか会話を楽しんでいる素振りすら見せた。だからこそ、其処に付け入る隙はある。

 会話の最中、殴り掛かりインファイトを仕掛けたが、難なく防がれてしまう。しかし、攻撃の手を緩めはしない。


「──坊主、中々やるようになったじゃねぇか! この短期間でよくもまあ成長したもんだ」


「そりゃどうも! この前のリベンジだ、全力でお前をブッ倒す」


「そうか、じゃあ此方も手加減は無しで良いよな?」


「それはあった方が嬉しいかなぁ……!」


 やばい地雷踏んだ。攻めの手を止めない俺に、何度か相手の攻撃が直撃する。痛みは気合いで我慢するが、それはそれとしてジリ貧だな。こうなれば出し惜しみは無しだ、マナを空にするほどの勢いで全力で倒しに掛かる。


「……っと、危ねぇな。どうした! 急に上げてくんじゃねぇの!」


「そっちは仲間がやられてんのに随分悠長だな……!」


「これでやられてるような奴は俺の目的にゃ力不足だ──よっと!」


「──ッつぅ……戦争でもしたいのかよ」


「そうだが」


「なんでまた、そんな全員不幸にしかならんことを起こすのか……!」


「確かに戦争ってのは減るばかりで得はない。だがな、そこで生まれる熱は、どうにも忘れ難いもんだ。命の取り合い、傷付け、痛み、荒ぶる感情、そして高揚感! それだけは何にも代えがたい。オマケに女も、財宝も、名誉も、全てが俺の価値になる! ゆえに、俺は望んだ。永遠に尽きることのない命を賭した闘争を!」


「──ッ随分と傍迷惑なこって、欲望の発散は1人でやれよ……!」


「そりゃお前達からしたらそうだろうさ。だからって手前の欲望を我慢させ続けんのは限界が来る。人間ってのは欲望のまま生きて死ぬ生物だぜ? 弱い奴(テメェら)が勝手に定めた道徳や倫理(ルール)強い奴()が従う道理がねぇなぁ!」


 主張を強く言い終えると同時に、勢いのまま拳が俺を襲う。それを受けきると、相手は嬉しそうに笑った。遊び甲斐のある玩具を持った子供のような、屈託のない笑顔。これ以上は話して解決するもんじゃない。だったら──


「……まだパワーが上がるか! 嬉しいねぇ! もっとだ! もっと打ってこい!」


 一心不乱に殴り蹴る、時に噛みつき魔法を使う。俺が出来ること全部を相手にぶつけ、遠慮なく暴行を加える。勿論相手もただ受けるだけじゃない。防ぎ往なし返し技をくらわす。骨に罅が入り、打たれた所から内外問わず出血する。傷付いたところから回復魔法を掛けて治し、再び万全の状態へ引き戻す。互いに、ほぼノーガードの殴り合いだ。


「そうだ! これだよ! 驚いた、良いなお前!」


 此方のマナが底を尽きてきたというのに、相手は疲れる素振りすら見せない。身に付けていた魔石からマナを吸収して回復させるが……魔石の数は有限だ。持つかどうか分からない。けれどそこは気合いと根性で耐える。


「『光線』!」


「ッ、随分と派手な魔法を使う……!」


 飛び蹴りの反動を利用して魔法で距離を取り、掌を相手に向けて魔法を唱え、相手の身体を覆う程の赤いビームを放出する。が相手は光線を真正面から受け、光の中を進み俺の元へ。拳が届く距離になった時、相手が拳を此方へ放ち……俺は掌を反対に向け、ビームの推進力と魔法を使って蹴りを相手にくらわせる。

 両者痛み分け、気づけば彼方も肩で息をしているようだ。良かった、どうやら体力が無限という訳ではなさそうだ。


「はっ! 最高だよお前! 魔法使いってのは直接殴り合わねぇ臆病者ばっかだと思ってたが、そうか、こんな戦い方をする奴がいるか! しかし見たところお前も限界が近いだろ? どうした、なぜ増援を呼ばん?」


「お前が呼んでないからな、フェアプレーの精神だ」


「殺し合いにフェアも卑怯もあるものか、お前1人じゃ俺を殺しきれんぞ」


「殺す気なんてねぇもんで、お前が気絶するまで戦うだけだ」


「相変わらずの甘ちゃんぶりだな、死んだら後悔すら出来ねぇぞ」


「死ぬ気も更々ないんでな。──もう嫌だと思うまで、俺がテメェの相手になってやるよ」


「いいのか、死ぬぞ?」


「上等……!」


 コイツが求めてるのは闘争で、そこで発生する熱に執着してる。だから、俺が相手になれば他の奴に被害はいかない。後は魔石が尽きないように立ち回るだけだ。痛みも、ツラさも、全て耐えれば問題なし。何時間だろうが相手になってやる。

 魔法、徒手空拳、剣、槍、盾、投げ道具。その応酬を繰り返し、太陽は傾き始める。

 ──どれほど戦っていただろうか。戦いの最中、互いの身体は反動で吹き飛び、徐々に場所を移動させ、塀を越え舞台は森へ。互いに満身創痍、服は破れ血に濡れ、傷は絶えない。

 相手は魔法使ってないのに、よくもまあ持ちこたえられる……しかし、血を流し、とうに体力も集中力も限界だろう。


「いい加減満足してくれねぇかなぁっ……!」


「まだだ、戦争ん時はもっとキツかったぜ……!」


 まだ戦う、争う。血は宙を舞い、痣を負う。相手は確実に消耗しているが、未だその強さは健在だ。だが、やはり、隙が増えてきた。とはいえ此方も限界だ、魔石も残すは1つ。だからこっからは……一か八かの大仕上げ、使えば最後のアレを使う。






「今の強さじゃ勝てない相手の対処法? そら逃げりゃ良いだけだろ」


 依頼3日前の食事中、リル先は容赦なく正論を言う。それはそうなのだが……


「逃げちゃいけない時はどうするんです?」


「そういう状況にならんよう立ち回る。他にも対処法は幾つかあるが……そういう話じゃないわな」


「……はい。お陰様で強くはなれましたけど、今のままじゃ、マルコーシアと相対した時、俺は絶対に勝てないです」


「自分の強さをよく理解してるようで……ま、備えあればなんとやらだ。厄介事に自ら首突っ込むのは止めろと言いたいところだが、お前さんにゃ難しいだろ?」


「いやぁ、こればっかしは性分なもんで」


「それは生まれつきじゃなくて、アイツに感化された結果だろうが……そうだ、リル先。リスク高いっスけど、アレ覚えさせるのはどうでしょう?」


「……アレかぁ。私も考えはしたが、倒しきれん時のことを考えるとリスキーすぎないか?」


「アレ……?」


「そう、アレ。正式名称は今んとこ無い技……現象?」


「一応分類としちゃ魔法だな、生体機能に働きかける。良い機会だ、お前が名前つけてみるか?」


「えぇ……俺ネーミングセンス無いんでそういうのはちょっと」


「大丈夫だ、幾ら中二臭い名前だろうが嗤ってやるから」


「性格悪いぞお前!」






 マナを生成するスピードを上げ、使えるマナを増やす。体内に循環するマナの量が爆発的に増加することで、身体のあらゆる放出口からマナが溢れて全身を覆い、魔法の威力上昇や内外から身体を強化、変化させて強くする。その名は──


「──『限界突破(リミットオーバー)……!』」


 あ、これ凄い楽しい!多分他の人に聞かれてたら、後々恥ずかしさで悶えること確実だろうが、今はこの高揚感に身を任せる。勿論使用上のデメリットはある。マナを消費しきれずに身体が爆発したり、そもそもマナの前借りなので体力消費が激しく、数分すれば身体が悲鳴を上げて気絶する。しかし、強化された数分間は、どんな相手でも負ける気がしない。


「ジャイアントキリングじゃあ!」


「おまっ!? それが隠し札かよ、楽しませてくれるじゃねぇの!」


 木々を足場にして縦横無尽に飛び回り、背後から相手へ突撃する。此方の攻撃を巧く捌いているものの、血を流しすぎたまま動き回り、相手はもう限界だ。だから──


「ハハハハハ! もっ……なぁっ!?」


「視野狭すぎ、だからこうして足元を掬われるのさ」


 木の根を延ばし、空中に奴を固定する。木々を足場にしていたのは、翻弄するだけでなく、触った時に魔法を掛けて相手を捕縛する為。アイツは延びてきた木の根を即座に引きちぎる……が、問題ない。その空中で無防備になる数秒が欲しかった。

 アイツの正面に生えている大木の側面に着地し、跳躍力強化、足裏からマナを噴射して推進力確保。


「今度は避けんなよ……!」


「……へっ、来いよ!」


 口元を綻ばせ、真っ直ぐ相手の眼を見る。大木を蹴って、身体は空を切り、勢いよく相手の腹に目掛けて足が突き刺さる。マルコーシアは自らを縛っていた木の根と共に、背後の木へ轟音を立てて追突し、そのままピクリとも動かなくなった。


「──勝っ……たぁ」


 放出されていたマナは空に消え、俺は身体に力が入らず膝から崩れ落ちる。回復魔法の使いすぎ、更には限界突破(リミットオーバー)の代償で、意識がプツンと暗闇に消える。魔具を握り込んだまま、俺は地面に倒れ込み……最後に見えたのは黄金色の光に照らされた地面だった。


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