表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/20

4話.追放の日

朝焼けが宮廷の石畳を照らし、冷たい風が吹き抜ける。


リュシアは衛兵たちに両腕を掴まれ、無情にも宮廷の外へと引きずり出された。


彼女の身に着けているのは粗末な薄衣一枚。高貴な占い師としての装飾品や華やかな衣服はすべて剥ぎ取られ、ただの追放者として放り出されるのだ。


「これが皇帝に仕えた者の末路か。哀れなものだな。」


どこからか、そんな嘲笑が飛んできた。


宮廷の高台から、数人の貴族たちが面白がるようにリュシアを見下ろしていた。


その中には、彼女を陥れたガルダスの姿もあった。


「占い師殿、未来が見えるのなら、これからの貧しい暮らしも覚悟しているのか?」


ガルダスが嘲るように言うと、周囲の貴族たちもそれに倣って笑い声を上げる。


「これからは、路傍で小銭でも恵んでもらうのだな!」


「いや、もう占いもできないのだから、何の価値もないか。」


「みじめな姿で都をさまようのか、それとも田舎で死ぬのか、どちらだ?」


リュシアは一言も発さなかった。彼らの言葉は耳に届いていたが、それに反応する価値もない。


衛兵が門の前で彼女の腕を乱暴に振り払うと、リュシアは地面に倒れ込んだ。


「さあ、行け。もうお前の居場所はここにはない。」


冷たく言い放ち、衛兵たちはすぐに門の内側へ戻った。


重厚な鉄の扉が、彼女の目の前でゆっくりと閉ざされる。


――もう二度と、この門の内側には戻らない。


リュシアは地面に手をつき、静かに立ち上がる。


風が吹いた。


その瞬間、どこからか小さなすすり泣きが聞こえた。


リュシアが顔を上げると、宮廷の陰に隠れるようにして、数人の使用人たちがこちらを見つめていた。


彼らは涙を浮かべ、しかし貴族たちに見つからないように、ただじっと彼女を見送るしかなかった。


「……お嬢様……」


小さな声が、彼女の耳に届いた。


リュシアは微笑むと、そっと首を振る。


(大丈夫よ。)


言葉にはしなかったが、その表情がすべてを物語っていた。


彼女は振り返ることなく、歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーー


宮廷の塔の一角から、静かにその姿を見つめる男がいた。


レオナード・ヴァルト将軍。


彼はこれまで無表情を貫いてきたが、今は違う。


奥歯を噛み締め、拳を握りしめ、去っていくリュシアを見つめていた。


(お前を見捨てたのは俺ではない。だが、それでも――)


リュシアが小さくなっていく姿を見ながら、彼は心の中で誓う。


(必ずお前を見つける。)


レオナードの目には、決意の炎が宿っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


リュシアは宮廷から離れ、ただひたすらに歩いた。


どこへ行けばいいのか分からない。頼る者もいない。


だが――


「もう、二度と宮廷には戻らない。」


そう決めたのだから、振り返る必要などないのだ。


冷たい風が吹き抜ける中、彼女は前だけを見据え、歩き続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ