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2話.仕組まれた失脚

リュシアは宮廷の大広間を後にし、しばらく廊下を歩いていた。


彼女の心には一抹の不安と、深い悲しみが残っている。


だが、それを振り払うように足を進める。


予言した未来が避けられない運命であろうとも、今はただ、目の前の現実を受け止めなければならない。


しかし、何もかもが変わり始めていることを、リュシアはまだ知る由もなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


その夜、リュシアの部屋にひとりの宮廷の書記官が訪れた。


顔色はやや青白く、肩を落としている。リュシアは驚いたように立ち上がる。


「何か用か?」リュシアが問いかける。


書記官は恐る恐る口を開いた。「リュシア様…どうやら、あの占いの記録に…手を加えられたようです。」


リュシアは眉をひそめた。


「手を加えた?誰が?」


書記官はしばらく黙ってから、低い声で続ける。


「ガルダス様です。彼はあなたを追い落とすため、すでに暗躍していたようです。あなたの占いの記録を捏造し、過去にあなたが占った未来が外れたように見せかけ、他の者にその証拠を提示しています。」


リュシアは言葉を失った。


心の中で激しい怒りと共に冷徹な現実が広がっていくのを感じた。


あの、ガルダスがここまで策を巡らせていたとは…。


彼女の立場を奪うために、裏で巧妙に動いていたのだ。


「さらに…」


書記官は言葉を続けた。


「魔術師ギルドにまで手を回し、あなたが宮廷占い師にふさわしくないとする意見を捏造し、偽の証言を作り上げています。ギルドの幹部たちもその証言を元に、あなたを排除するように圧力をかけているのです。」


リュシアの目が鋭くなる。


魔術師ギルドの幹部が、彼女を守るどころか、ガルダスの意図に加担しているというのか。


ギルドとはこれまでも親しく仕事をし、良好な関係を築けていた。


しかし...


これまで信じてきた者たちが、彼女を裏切っていた事実が徐々に明らかになっていく。


リュシアは静かに吐息をついた。


「すべて、ガルダスの仕業か。」


彼女は冷静に言った。


「おそらく…」


書記官は肩を震わせながら答えた。


「ガルダス様が宮廷での商業的な影響力を拡大するためには、あなたの存在が邪魔になっていたのでしょう。あなたがあまりに的確に未来を予言し、彼の取引や計画に反する結果をもたらしたことが、彼の逆鱗に触れたのです。」


リュシアはその言葉をしばらく黙って聞き、その後ゆっくりと頷いた。


「それなら、もう私の存在は宮廷に必要ないということか。」


書記官はうつむいたまま答えた。


「…申し訳ありません、リュシア様。すでに他の者たちも、あなたに対して冷たい態度を取るようになっています。あなたが本当に予言を的中させていたことは、もはや誰も信じていないようです。」


リュシアは目を閉じ、深い息をついた。裏切られたとは思わない。


ガルダスは、そういう人物だと最初から感じていた。


しかし、これほどまでに巧妙に仕組まれていたとは、思いもしなかった。


だが、彼女が感じるのはただの怒りではない。


むしろ、これからの自分に対する冷徹な覚悟のようなものだった。


「もう、何もかもが終わったのね...」


リュシアは静かに呟いた。


「力になれずすみません...」


「いいのよ。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


その後、リュシアはガルダスが仕組んだ騙しの証拠を突きつけられることになった。


魔術師ギルドからは、


「ふさわしくない」


として職務を解任され、宮廷占い師の役目を奪われることとなった。


そして、リュシアは宮廷内で孤立していく。


彼女に味方していた少数の貴族たちも次々に手のひらを返し、ガルダスに取り込まれていった。


かつて彼女の占いを信じていた者たちも、ガルダスの巧妙な陰謀によって、リュシアから距離を置くようになった。


リュシアは宮廷内で立場を失い、孤独と不信の中でその日の終わりを迎えた。


彼女の心の中に湧き上がるのは、敗北感ではなく、冷徹な計画を立てるための覚悟だけだった。


あの広間で予言した未来が、今ここで始まったのだと、彼女は強く感じていた。


「だが、すべては私が予言した通りになるわ。」


リュシアは独り言を漏らし、翌朝、再び宮廷を去る決意を固めた。

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