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1話.お前の占いは役に立たぬ

宮廷の大広間。


占い師リュシアは呼び出されていた。


煌びやかな装飾、華やかな衣装を纏った貴族たちが集まる中、リュシアは堂々と立っていた。


目の前には皇帝、そして重臣たちが座り、いくつかの烛台が周囲を照らしている。


リュシアは黒いローブを身にまとい、肩に掛けた金の髪飾りが薄明かりに輝いている。


手にした小さなカードをひとつ、またひとつと並べ、静かに未来を読み取っていく。


その顔には深い集中と静けさが漂っていた。


「それでは、最後の占いを始めます。」


リュシアは静かな声で告げた。


この国の行く末を皇帝直々に占って欲しいとお達しがあった。


皇帝オスカーは腕を組み、無言で占いの様子を見守る。


周囲の貴族たちも少しざわつきながら、息を呑んで見守っている。


リュシアがカードを一枚引き、広げると...


そこには「破滅」と書かれた文字が現れる。


「未来には破滅が待っている。特に、貴族ガルダス様、あなたの未来に強く暗い影が差し込んでいます。」リュシアはカードを指さして言った。


その言葉を聞いた瞬間、名のある貴族ガルダスが顔色を変え、目を細める。


「何を言っている!?」


ガルダスが声を荒げた。


「私に破滅など訪れるはずがない! そんな占いなどで私の未来を決めつけるのは許されぬ!」


リュシアはそのまま冷静に答える。


「占いは決して意図的に捻じ曲げられるものではありません。私が見るのは、ただ未来そのものです。」


「でたらめだ!」ガルダスが席を立ち上がると、皇帝オスカーが静かに手を振って彼を制した。


「ガルダス、静まれ。リュシア、何故そんな予言をしたのだ?」オスカーが低い声で問いかけた。


リュシアは少し黙ってから、再び視線を合わせて答える。


「ガルダス様が私たちに隠している事がある。あなたの取引が、今後宮廷に深刻な影響を与えることになる。未来がそれを示しているのです。」


その言葉に、周囲の重臣たちもざわめき始めた。


宮廷内でのガルダスの商業的な影響力が大きいため、リュシアの言葉がただの占いに留まらないことを感じ取ったのだ。


「お前の占いは役に立たぬ。」


オスカーが冷たく言い放った。


その言葉には冷徹な決意が込められていた。


リュシアは黙って頭を垂れ、少しの間、静寂が広間を包んだ。


やがて、リュシアが再び顔を上げる。


「では、これが最後の占いです。」


彼女の声は以前よりもさらに低く、深い響きを持っていた。


「私が見た未来は、貴族たちの利益が衝突し、宮廷全体が崩壊へと向かう姿です。そして、あなた方が目を背けている問題が必ず表面化し、すべてを覆すことになるでしょう。」


皇帝オスカーがその言葉に対して反応する間もなく、リュシアは静かにカードを集めて、再び袋の中にしまい込んだ。


「……お前の占いは、やはり役に立たぬ。」


オスカーは最後に冷たい言葉を繰り返し、重臣たちもその言葉に同調し罵声をあびせてきた。


リュシアはその場から立ち上がり、深く一礼した。


「お言葉通りです。ですが、未来は私の手のひらの中にあります。誰も避けられぬ運命の流れを変えることはできません。」


そして、彼女は広間を後にした。


背後から聞こえる貴族たちのざわめき、そして皇帝オスカーの無言の視線を背に、リュシアは静かに退室した。


その足音が大広間に響く中、誰もが未来に不安と恐れを感じていた。


その予言の真実が、すぐにでも現実になってしまうのではないかと、誰もが薄々感じ取っていたからだ。

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