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なんでも知ってる土佐辺くん。  作者: みやこ嬢
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第8話 エッチなことに興味ある?

 いつも飄々としている土佐辺(とさべ)くんが表情を崩したのが面白くて、僕は堪えきれずに笑ってしまった。ひとしきり笑った後で顔を上げると、彼は恨めしそうにこちらを睨んでいた。


安麻田(あまた)駿河(するが)とよく昼メシ食ってるけど、今日は教室じゃなくて中庭まで行くから何事かと思ったんだよ」

「ああ、ちょっとナイショの話があって」

「へえ?」


 内緒という言葉に反応した。情報通の性質(さが)だろうか。クラスメイトの内緒話にも関心があるようだ。


「それってオレが聞いてもいいやつ?」

「あ、うん。ぶっちゃけ男なら誰でも」


 同年代の男子の意識調査をしたいだけだから、なにも駿河くんに限ったことではない。


「だったらフツーに教室で話せばよくね?」

「だ、ダメだよ! 女子に聞かれちゃう!」

「聞かれたらまずいような話すんの?」

「う、うん」


 本当なら複数の人に聞くべきなんだろうけど、あいにく僕はそういった話が苦手だし、そもそも気軽に話せるような男友達が少ない。今のクラスなら、駿河くんと土佐辺くんくらいだ。


「で、ナイショの話ってなに?」


 言いにくい内容だから、こうして聞き出してくれるのは有り難い。土佐辺くんは聞き上手だ。だから色んな情報が彼の元に集まってくるんだろう。


「えっとね……土佐辺くんは女の子とエッチなことしたいと思う?」


 エッチな、という部分だけ声を小さくして尋ねると、彼はブッと吹いた。机に突っ伏し、肩を震わせて笑っている。


「笑わないでよ! 真剣に聞いてるんだから」

「わ、悪い悪い。まさか安麻田からそーゆー話が出るとは思わなかったから」


 僕もそう思う。


「なんでまた……、あー、アレか。妹絡みの話か」

「どうして分かったの!?」

「そりゃ分かるよ」


 小中と同じ学校だったから、土佐辺くんは僕の妹の亜衣(あい)のことも知っている。


「アイツは確か迅堂(じんどう)と付き合ってたよな。となると……」

「察しが良いのは助かるけど、あんまり具体的に想像しないでくれるかな」


 亜衣と迅堂くんは中学生の頃から交際を始め、高校二年になった現在も続いている。というか、土佐辺くん他校の元同級生のことまで把握してるんだ。すごいな。


「それより、コレを駿河に聞くつもりだったのか? アイツからまともな回答が返ってくるとは思えねーけど」

「だ、だって、他にこんな話できるような人いないんだもん」


 確かに、真面目な優等生タイプの駿河くんにこんな話をしたらフリーズするか説教されるかの二択だろう。いや、案外ズバッと答えてくれるかも?


「平均的な意見って言うなら、男子高校生なんざ性欲の塊みたいなもんだ。運動部のヤツら、部室のロッカーにエロ本置いて共有してるって言ってたし」

「え、学校に持ち込んでるの?」

「卒業した先輩たちの置き土産なんだと」


 なるほど、納得。


「そういう安麻田は?」

「ぼ、僕は、全然……」


 急に矛先を向けられ、慌てて否定する。


「好きなヤツに触りたいとかとか思わねーの?」

「ううん。顔が見れたらそれでいいっていうか……さ、触りたいとかは、別に」

「なんだそりゃ。まあ、一番身近な男がおまえみたいな草食系じゃ妹もピュアになっちまうか」


 亜衣がスレてないのは僕の影響なのか。そのせいで迅堂くんが我慢を強いられているのだとすれば申し訳ない気もする。


 うつむく僕の顔を、頬杖をついた土佐辺くんが覗き込んできた。意地悪そうな笑みを浮かべている。


「てっきり『好きな人なんていない』って言うと思ってたけど、さっきの物言いからすると、いるんだな。好きなヤツ」

「あっ、いや、今のは言葉のアヤで」


 まずい。さっきの問いは引っ掛けだったのか。正直に言うわけにはいかないし、なんとか誤魔化さなきゃ。


「そんなことより土佐辺くんはどうなんだよ。エッチなことに興味あるの?」


 いつの間にか運動部の話になっていて、土佐辺くん自身の意見は聞いていない。もしかして、はぐらかされていたのか。


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