第39話 隠さなければならない恋
どうしよう、どうしよう。迅堂くんに片想いしていることを先輩に知られてしまった。男同士ってだけでもマズいのに、相手は妹の彼氏。誰にも言わず、ひっそり好きでいるつもりだった。最近になって不毛な恋愛に嫌気がさして、諦めようとしていた矢先のことだ。
傍から見て、僕ってそんなに分かりやすいんだろうか。先輩が隠し撮りした写真に写る僕は頬を染め、照れ臭そうに笑い、熱のこもった目を彼に向けていた。迅堂くんの前で、いつもあんな好意丸出しの顔をしていたのか。バレバレじゃないか。
もし亜衣や迅堂くんに知られたらどうなるんだろう。軽蔑されるか、気持ち悪いと思われるか。二人ともサッパリした性格だから、男同士云々はスルーしてくれそうな気もする。
一番の問題は『亜衣の彼氏に片想いしてる』っていう点だ。今後も二人が交際を続けていくのなら僕との縁は切れない。二人が僕に気を使って距離を置いてしまったら、万が一別れてしまったらどうしよう。そうならないように絶対に隠し通さなくては。
『今回のコレは貸しにしておくよ』
貸しってどういう意味だろう。
秘密にしておいてくれるのかな。
文化祭に遊びに来ていたし、亜衣や迅堂くんのことを知ってるみたいだったけど、先輩も友だちか知り合いがあの学校にいるんだろうか。誰かを通じて話を聞いたのかもしれない。
気にはなるけど確認する術がない。連絡先どころか先輩の名前やクラスさえ知らない。いや、前に図書館で先輩の知り合いらしき人が名前を呼んでいたような気がする。なんという名前だったか覚えていない。
そういえば、先輩と図書館以外で会ったのは今回が初めてだ。うちの学校では一度も顔を合わせたことがないのに。