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なんでも知ってる土佐辺くん。  作者: みやこ嬢
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第31話 テストの結果

 翌朝、駅のホームには土佐辺(とさべ)くんの姿があった。僕に気付くと軽く手を上げて笑い掛けてくる。偶然じゃない。同じ電車に乗れるように早く来てるんだ。


「昨日、結局なんだったの?」

「あー……知った顔が居たから挨拶しに」

「そうだったんだ」


 文化祭の実行委員会が終わった後に土佐辺くんがどこかへ行ったのは知り合いに声を掛けるためだったのか。とてもそんな風には見えなかったけど、本人が言うのならそうなのだろう。

 話題はそのまま明日の文化祭見学の話になった。


「どーやって行くかな」

「そんなに遠くないし、歩いていく?」

「そだな。バスに乗るほどでもないか」


 亜衣(あい)迅堂(じんどう)くんが通う工科高校は僕の家からだと徒歩で十五分くらいの場所にある。迅堂くんは自転車、亜衣は徒歩通学だ。


「土佐辺くんの家と僕んちの中間地点くらいで待ち合わせしようか」

「いや、安麻田(あまた)んちに迎えに行く」

「僕んち知ってるの?」

「小学校ん時おまえが風邪で休んだ日にプリント届けたことある」

「えっ、あれ土佐辺くんだったんだ!」


 確かに高学年の頃、亜衣と二人で風邪をこじらせて三日くらい休んだことがあり、学校帰りにクラスメイトが宿題のプリントを届けてくれた。名乗らずにすぐ帰ってしまったと母さんから聞いていたが、まさか土佐辺くんだったとは。


「よく覚えてたね」

「オレ記憶力いいから」


 小学校三年生の遠足のことも覚えていたし、本当に記憶力が良いんだろう。だから成績も良い。


 いやいや、きちんと勉強してる姿を見たじゃないか。土佐辺くんは表では余裕があるように演じて、裏での努力を周りに悟らせない。物知りなのも頭が良いのも彼の努力の成果。簡単に羨んではいけない。






 テストが全部返ってきた。初日に受けた三教科はケアレスミスが多く、いつもより点数が低かった。それ以外はまあ予想通りって感じの点数。駿河(するが)くんと土佐辺くんは幾つか満点があったみたいで、答案用紙を返す際に先生が誉めていた。やっぱりあの二人には敵わない。


「安麻田ーっ、赤点回避したぞ!」

「おまえのおかげだ、心の友よ!」


 スポーツ推薦組が数人、感極まった様子で抱きついてきた。彼らは一日も休まず勉強会に参加している。苦手科目を中心に、分かるまで何度も何度も質問するほど真剣に取り組んでいた。


「君たちが頑張ったからだよ」

「ぁ安麻田ぁああ~ッ!」

「良いやつだなおまえ~!!」


 男泣きする彼らを宥めていたら、土佐辺くんが間に割り入っててきた。


「おまえら、オレにゃ礼は無しか」

「うるせー、おまえ怖ぇんだよ!」

「一回で理解できねーと怒るし!」

「なんだとこの野郎、表出ろや!」


 そう、土佐辺くんの解説は非常に高度で、しかも次から次へと教える問題が変わるスパルタ式。ついていけなくなった人を個別でフォローするのが勉強会での僕の役割だった。故に、スポーツ推薦組のほとんどは僕が教えたことになる。


 あの時は土佐辺くんの教え方が下手なのかもと思ってしまったけど、たぶん僕に役割を与えるためにワザと難しく説明していたんだろう。おかげで、同じクラスでありながら今まで疎遠だったスポーツ推薦組と仲良くなれた。というか、たった数日でめちゃくちゃ懐かれてる。


「安麻田ぁ~! 土佐辺が怖いよ~!」


 身を隠すように僕の後ろに回るスポーツ推薦組。そんな彼らを土佐辺くんは苦々しい表情で睨み付けている。あれ、めっちゃ怒ってるな。


 助け舟を求めて視線を彷徨わせれば、勉強会の発案者である檜葉(ひば)さんは駿河くんと談笑していて、こちらに全く気付いていない様子だった。


 どうしたものかと困っていたら「おまえら安麻田にくっつき過ぎだ!」と土佐辺くんがスポーツ推薦組をひっぺがしに来た。


 この騒ぎの中心が僕だなんて嫌過ぎる。


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