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なんでも知ってる土佐辺くん。  作者: みやこ嬢
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第17話 勉強会3日目


 火曜から始まった勉強会も三日目。今日は駿河(するが)くんも参加している。

 教える側に回る楽しさに気付いたけれど、僕も勉強をしなくてはならない。苦手な科目を中心に教科書を読み返して復習していく。自分がきちんと理屈を理解していないと教えられない、という理由もある。


「珍しく真面目だな」

「僕はいつも真面目だよ」

「はは、そうだったかぁ?」


 隣に座る土佐辺(とさべ)くんが、いつになく真剣に教科書を見る僕をからかってくる。こんな風に軽口を叩き合えるようになったのもここ数日のことだ。


 いろんな場面で頼りにされはするけど、とっつきにくい雰囲気があるからか、土佐辺くんは特定の人と特別仲が良いということはない。誰とでもフラットな付き合いだ。そんな中で、僕は気を許してもらっている感じがする。なんだかんだで小学校の頃から知ってる相手だ。逆に仲良くなるのが遅すぎたのかもしれない。


「そういえば、ここ市民じゃなきゃ本は借りれないのかな」


 僕の住む市の図書館は市内在住の人以外には貸出できない決まりがある。


「この図書館は市内の学校や職場に通ってる人も貸し出しOKだぞ。オレ利用カード持ってるし」

「え、そうなの? 僕もカード作れる?」

「学生証があればすぐ発行してもらえるよ」


 そう言いながら、土佐辺くんはカバンから自分の図書館利用カードを取り出して見せてくれた。名前と所属、利用期限などが記載されている。所属は学校名、期限は卒業予定の時期までだ。


 今まで一度も利用したことがなかったけれど、せっかく学校の近くにあるのだから利用しない手はない。チラッと見た感じ、図書スペースはかなり広い。きっと役に立つ本がたくさんある。


「僕、カード作ってくるね」

「今からか?」

「勉強会の後だと閉館間際になっちゃうから」


 平日の利用時間は午後六時まで。閉館間際の時間帯は貸出や返却の手続きをする人が増えるため、利用カード作成をお願いするのは憚られる。


「ついていこうか?」

「大丈夫だよ、ありがと」


 一階のカウンターに行くだけなら一人で出来る。カバンから出した学生証を握り締め、僕は会議室を出た。






「今からカードをお作りしますので五分ほどお待ちください。出来ましたらお名前を呼びますね」

「お願いします」


 係の人に利用申請書と学生証を提出し、少し待つことになった。カウンターから離れすぎない程度に図書スペースを見て回る。ジャンルごとに区画が分けられ、建物の奥まで本棚が整然と並んでいる。地元の図書館より広くて専門的な本が多そうだ。


「あれっ、また会ったね」

「こんにちは、先輩」


 ぶらぶら歩いていたら、先輩から声を掛けられた。カウンター近くの自習スペースで勉強していたのだろう。癖っ毛を揺らしながら、僕のすぐ傍まで近付いてくる。


「本を借りに来たの?」

「いえ、僕まだここの利用カード持ってないので、今その手続きをしてもらってて」


 ちらりとカウンターを見れば、係の人はまだカード発行作業の途中のようで、奥の席でパソコンを操作していた。


 なんか距離が近い人だなと思っていたけど、理由が分かった。それはここが図書館の中だからだ。先輩はいつも僕の耳元で小さな声で囁く。館内で大声出したら怒られちゃうからね。


「今日もやってるの? 勉強会」

「はい。来週からテストですから」

「頑張ってて偉いね~」

「あ、ありがとうございます」


 ヨシヨシと、小さな子を褒めるように頭を撫でられた。やっぱり先輩は距離が近い。


安麻田 瑠衣(あまた るい)さーん、お待たせしました」


 名前を呼ばれてカウンターを見ると、係の人がこちらに手を振っているのが見えた。図書館の利用カードが出来上がったようだ。


「じゃあ、僕行きますね」

「うん、またね()()()()


 先輩と別れ、真新しいカードを受け取り、僕はみんなが待つ会議室へと戻った。


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