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なんでも知ってる土佐辺くん。  作者: みやこ嬢
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第12話 決まらない衣装選び

 勉強の合間に文化祭について聞いてみた。


「アタシたちのクラスはお化け屋敷やるんだ~。遮光カーテンがある視聴覚室借りて、中に迷路みたいなの作って~」

「へえ、面白そう。二人ともお化け役やるの?」

「アタシは表で呼び込みするの!」

「俺は驚かせる係」


 なるほど適材適所。納得の分担だ。


「当日遊びに行くね」

「ウチの学校ガラ悪いぞ。大丈夫か?」


 迅堂(じんどう)くんが心配してくれている。しかし、通ってる本人が改めて注意を促すほど治安が悪いのか。高校だよね? 貧民街(スラム)じゃないよね?


「だ、大丈夫! 一人じゃないから」

「誰かと一緒に回るの? カノジョ?」

「違うよ。男友だち!」

「なーんだ」


 一緒に行くのが男だと分かった途端に亜衣(あい)は興味を無くした。悪かったな、僕に恋人はいない。


土佐辺(とさべ)くんて覚えてる? 彼と行く予定」

「覚えてる覚えてる! 土佐辺くんと一緒なら安心だね。ねっ、(あきら)

「だな。土佐辺から離れるなよ瑠衣(るい)

「わ、分かってるよ」


 めちゃくちゃ念を押された。


「でも意外だな。土佐辺と仲良かったっけ」

「小学生の時から同じ学校なの、男子は土佐辺くんと駿河(するが)くんくらいだからね」


 僕が通う将英(しょうえい)学園は隣の市にある進学校。通える範囲には他に普通科高校と工科高校があり、亜衣たちは市内の工科高校に通っている。


「土佐辺くんとは文化祭の実行委員を一緒にやることになったんだ」

「ああ、だから見学しに来るんだ」

「そう。そっちの文化祭の二週間後にやるからね。参考になればと思って」

「見て驚くなよ? 毎年すっげーから」

「楽しみにしてる」


 出し物はもう決まってるけど、ポスターとか看板とか呼び込みの仕方とかを参考にしたい。実行委員になる前はそんな風に思ったことすらなかった。僕が学校行事に積極的に参加するなんて初めてかもしれない。誘ってくれた土佐辺くんに感謝だ。


「で、瑠衣のクラスは何やるの?」

「ウッ……」


 この流れなら当然聞かれるよね。服を借りなきゃならないから亜衣には教えるつもりだったけど、迅堂くんには知られたくなかったな。でも、言わざるを得ない。


「……クラスのみんなで、男装と女装を」

「男装と女装~?」

「瑠衣、女の格好すんのか」

「う、うん……」


 笑われるかな。


「えー、絶対似合うじゃん!」

「瑠衣は亜衣に似て可愛いからな」

「全っ然嬉しくないんだけど」


 確かに顔は亜衣に似てるけど、僕は身長も体つきも声も男。服を変えただけで女の子になれるわけじゃない。好きな人に好かれるわけじゃない。


「じゃあ、アタシのお気に入りの服を貸してあげる! 瑠衣を一番人気にしてみせるわ!」

「ええ~?」

「だな。瑠衣ならナンバーワン間違いなしだ」

「迅堂くんまで!」

「こうしちゃいらんないわ! 早速服を選ばなきゃ!」

「亜衣、テスト勉強は!?」


 亜衣は隣にある自分の部屋で服選びを始めてしまった。僕の部屋で迅堂くんと二人きりになるのは何気に初めてで緊張する。


「瑠衣」

「なに?」


 しばらく無言で教科書を見ていた迅堂くんが急に話し掛けてきた。いつになく真剣な表情で、まっすぐ僕を見つめている。


「この前ケンカした時、仲直りするように亜衣に話をしてくれたんだろ。ありがとな」

「う、ううん、気にしないで」

「俺バカだからさ、いっつも考えるより先に行動して後から反省することばっかなんだ。だから瑠衣が味方で居てくれて助かってる」


 そんな風に思われていたなんて。良かった、嬉しい。迅堂くんは感情的になりやすいけど、落ち着いて考えて、きちんと自分の非を認めることができる人だ。


「僕はいつだって迅堂くんの味方だよ。『可愛い妹の彼氏』で『僕の大事な友だち』だもん」

「これからもよろしくな」

「うん、もちろん!」


 ニッと笑い合い、軽く拳をぶつけ合う。迅堂くんが幸せならばそれでいい。亜衣と仲良くしていてくれれば満足だ。


「おっまたせー! どれにしようか迷ったけど、やっぱミニスカは外せないよね!」


 亜衣が持ってきた服を見て、僕たちは「何これ」と声を揃えた。膝より遥かに短いマイクロミニのスカート。他の服も布面積が少ないものばかり。


「なんだよその短いスカート! そんなん持ってたのか亜衣!」

「なに怒ってんの(あきら)。コレ可愛くて安かったから買ったんだけどぉ、ぱんつ見えそうだから外で着たことはないんだよね~。もったいないからさ~」


 そんなものを兄に着せるつもりか!

 亜衣が選んだ服は全部露出が多かったので却下した。


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