表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんでも知ってる土佐辺くん。  作者: みやこ嬢
11/64

第11話 そばにいるだけでいい

 土曜の午後、迅堂(じんどう)くんを我が家に招いて一緒にテスト勉強をした。亜衣(あい)の部屋だと漫画やゲームなどの気が散るアイテムが多過ぎるから僕の部屋で。


「だから、この公式さえ覚えておけば、あとは数字を当てはめて計算するだけなんだよ」

「なるほど?」

「こういうのは何度も解いて頭に叩き込むしかないんだよね。二人ともやってみて」

「はぁい」

「分かった」


 折り畳みの机を部屋の真ん中に置き、隣り合って座る二人の前で解説する。あらかじめ用意しておいたプリントをやらせ、間違えたところを教えていく。コツを掴めば、計算ミスさえしなければ赤点は免れるはずだ。迅堂くんは理数系は割と強い。一度理解してしまえば大丈夫。問題は集中力がない亜衣のほうだ。


 テスト範囲は少し違うけど、教えることで僕の復習にもなる。二人が問題を解いている間に自分の勉強もできるからね。


 それにしても、迅堂くんが僕の部屋にいるの新鮮だな。家に遊びに来ても、いつもはリビングか亜衣の部屋ばかり。僕の部屋に入ったのなんて小学生の頃以来かもしれない。


瑠衣(るい)ぃ、ここ分かんねー」

「どこ? ああ、これはね……」


 たまに呼ばれ、つまづいた部分を見て要点を教える。隣に座り、肩が触れそうになるだけでドキドキしてしまう。勉強会、開いて良かった。


 僕は迅堂くん……妹の彼氏が好きだ。彼とどうにかなりたいわけではない。亜衣から奪いたいとか、自分だけを見てほしいとは思わない。ただ目の届く範囲に居てくれればいい。まだ気が早いけど、将来亜衣と結婚したら、迅堂くんと僕は義理の兄弟。つまり身内になる。そうなったら縁が切れることはない。




『好きなヤツが目の前にいれば触りたくなるし、他の誰よりもピッタリくっつきたくなるのは当たり前のことだ』




 ふと、土佐辺(とさべ)くんの言葉を思い出した。


 当たり前なんて僕には当てはまらない。

 だって、もう普通の道からズレている。

 土佐辺くんが言ったのは単なる一般論。

 僕は好きな人に触れなくても構わない。




「瑠衣~、アタシも分かんない!」

「あ、そこ分かる。俺が教えてやるよ」

「ウソっ、アタシ(あきら)に負けてる!?」


 目の前で仲睦まじく肩寄せ合う亜衣(双子の妹)迅堂くん(好きな人)を見ても微笑ましいと思う以上の感情はない。


 嫉妬する資格もない。

 そばで見ていられるだけでいい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ