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6 いざ戦場(デート)へ

「今日は楽しかったわ、ありがとう」

「あの、さ。葵。」

「何?」

「言いにくいんだが…」

「真面目な顔して、どうしたのよ?」

「すまない。父から…さんと結婚しろと言われた。だから」

「嘘よね」

「…葵」

「嘘、そんなの知らないわ!私は貴方のことこんなにも好きなのに!なのに何で!貴方も私のこ」

「君のことはもう…愛しては、いない…っ」

「何よそれ。…に、逃げましょう、誰にも邪魔されないところに!貴方だって本心では」

「もうやめてくれ!…もう終わりにしよう。…すまん」


「ふぅ〜ん。それでまだここにいる訳?」

「おかしい、かな?」

陽羽ひいろくんの正体を知りたくて、私は彼を家に招いた。

「ううん、全然。オレだって陽奈と喧嘩別れしたらやっぱいつまでだって…いや、陽菜の代わりはいないけど☆」

「陽奈って」

「陽奈はオレの超可愛い妹♡優しくってさ、頭も良くって、スタイル抜群で!!!」

私の質問に、少し興奮して食い気味に、彼はそう答えた。

これって。

「つまり陽羽くんはシスコン(妹思い) なのね」

「えっへへ、そうなんだー。けど、葵さんの気持ち。ちゃんと分かるよ」

それまで興奮してへらへらと笑っていた陽羽くんは、急に優しい笑顔になり、そんな言葉を私に投げた。

どきっ

美少年の微笑みに思わず胸が高鳴る。もしや彼が運命の

「あの、ね私」

「ところでさ、奏多がぎこちなくデートに誘ってくると思うけど、呆れないであげてね。あれで奏多めっちゃ男気出してるから」

「小野塚くんが…」

「そう!あとそれ!オレも『小野塚』だからさ、なんかややこしいんだよね~。ってことで名前で呼んだげてよ?」

「そうだったのね、ごめんなさい。えと、『奏多くん』…こんな感じかな?」

「そうそう☆いい感じ☆」

そう言って彼は、私の作ったケーキを口に放り込んだ。


「葵さんの秘密聞いちゃったから、あの事謝っとかなきゃね」

しばらくの沈黙の後、ケーキを食べ終えたタイミングで陽羽くんは話し始めた。

「何?」

「実はこの前のおかずの事件、犯人オレなんだ」

「え」

「だってその方が面白くなると思わない?奏多が葵さんと一緒に行くか、オレが葵さんを諦めさせるか」

「なんで貴方は私の」

「運命の人なのに、って?」

「だって私は奏多くんと陽羽くんとしか話せないのよ。だから二人のどちらか」

「残念だけどオレは違うよ。そもそも陽菜にしか興味ないしさ☆」

彼は、天使の笑顔で無邪気に答える。

「だけど何で」

「まあ、そんなことどーだっていいじゃんか」

このシスコン、一体…

睨む私に構わず、陽羽くんは話を続ける。

「ともかくさ、二人で少しでも同じ時間を過ごすことは奏多の夢でもあるんだ。そんな夢を叶えてくれるヤツに『相手は幽霊だから付き合うな』なんて言われても訳分かんないでしょ?かと言って葵さんがあの事件の真相を話したとしてもそれも何の目的で?ってなるよ、きっと。最終的には葵さんのこと全て話さなきゃいけなくなって…そしたら今の奏多なら離れていくと思う」

「奏多くんはそんなんじゃ」

「自分の命と、いち幽霊の運命。葵さんだって同じことをするんじゃない?」

「私…は…」

「よし!じゃ、奏多んとこ行こう☆奏多が葵さんに惚れてることは事実なんだから☆」

「どうして」

「いいから、いいから☆オレの一番の仕事は奏多の夢を叶えることなの。だから『賭け』までは葵さんのことも応援するよ」

「いいの?私、本気よ?」

「良かった、オレも本気だから!じゃあ、下で待ってるね」


「ったく、あのバカ。弁当食いやがって」

昼休み。弁当箱の蓋を開けると、中身は空っぽだった。

陽羽が朝食はいらないと言ったのを少し変に思っていたのだが、こういう事だったのか…。何考えてんだ…?


少しむしゃくしゃした気持ちでコンビニ弁当を買い、気分転換をしようと会社近くの公園のベンチに座った。

いざ弁当を食べようとしたところで、聞き覚えのある声が俺を呼んだ。

「かーなーたっ」

「良かったらご一緒していいですか?」

声のした方を見ると、今一番見たくない顔と、その後ろに、葵さん!?


「会社、この辺なんですか?」

「あ、はい。あのビルです。えっと、葵さんは…」

「私もこの辺で。ここからは見えないんですけど。今日は天気がいいから外で食べたくって」

初めて見るスーツ姿の葵さん。うん、こっちもいいな~。

「お、俺もです!こんな日はオフィスに籠ってちゃもったいないと思って」

「そうですよね。さあ、食べましょうか」

「はい!」

「ふふん♪オレのおかげだね♪」

葵さんに聞こえないよう、陽羽がそっと耳打ちをする。

「ま、まあ、そうなったな」

…こういうことだったのか。ということは


「そろそろ戻りますね。ご一緒出来て楽しかったです」

「お、俺も楽しかったです」

「…それじゃ」

食べる間、ずっとプラネタリウムのことが気になっていたが、結局言い出すことが出来ず、二人の弁当は空になった。

…まあ、今はまだ

「もう奏多のバカ」

葵さんが俺のもとを離れようとしたその時

「かーなーたー♡もう♡奏多♡これいつ連れてってくれるのぉ?」

ジャケットのポケットに突っ込んだと思っていたそれを持った女子高生の陽羽が現れ、俺にすり寄ってきた。

「その子…」

「あ、いや!この子はっ」

葵さんのことはお構いなしにさらにすり寄ってきて腕に絡んでくる。

む、胸が…やわらけぇ…や、やば…jふぁwjアイhf議オアひおえじゅ青p・イおさ

「ほら、奏多♡あ!土曜日お休みでしょう?ねぇねぇ♡」

「しかし、これはだな、えっと」

なお狼狽える俺に、それまでの甘ったるい可愛い声ではない、陽羽おとこの声がぼそっと呟いた。

「何してんだよバカとっとと誘えこのエロおやじがっ」

…あ、これやっぱりあの陽羽なんだ

その言葉に、冷静になった俺は立ち去ろうとする葵さんに向かって叫んだ。

もう!やけだ!ここで男を見せないでどうする!!!陽羽!これが俺の本気だ!

「あ、葵さんっ!!良かったらデートしましょう!!??」

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