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12 ちょ、それ以上近づかれたら…俺はっ

「かーなーたー、何か面白いことしてよー」

「……」

ソファでダラダラゴロゴロとしている陽羽(ひいろ)の声が耳に届いたが、俺は無視をし続ける。…俺を何だと思ってるんだ。

「ねー、奏多聞こえてる~?」

「…あのな。見てわかんないのか?読書中だ、ど、く、しょっ。ってか友達と遊べばいいだろ?」俺は読んでいた本を振りかざす。

「んー?みんな残りの休みは彼女と過ごすんだってさー。仕方ないよね、俺らイケてるグループだから☆そんな中、奏多の恋のキューピッドである優しいやっさしいオレは、まだ葵さんとちゃんとしたカップルになってない弱虫な奏多と遊んであげよーかなーって☆」

「…そういやそんな存在だったなお前…つーかお前がもう少しちゃんとしてくれたら俺だってすぐ告白」

「はぁ?オレはちゃんと『仕事』してるし。てっきりこの前のお祭りで、あーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

陽羽が突然叫び声をあげたので、驚いて本を放り投げてしまい読んでいたページが分からなくなる。うわっ、最悪だ…

「!?何なんだいきなり!?」

「花火見たし、やったし、アイスも100個食べたのに、一番大事な事忘れてるじゃん!!!よかったぁー夏が終わる前に思い出せて」

「…で。俺は何に付き合わされるんだ?」

「プールだよ、プール!海もいいけど海水ベタベタするし…それにさ、葵さんの水着姿も見たいでしょ☆」

そう言われ、いろんなタイプの水着を着た葵さんを妄、こほん。想像する。うん。悪くない。

「それは是非ともお願いするよ、陽羽君」

「おっさん、鼻血出てるから」



翌日、オレは葵さんと買い物に出掛けた。葵さん水着買ったことないだろうし、どうせなら奏多とお揃いみたいな感じにしてあげたいし。

「はい、じゃあこの中から選んで」オレは、いくつか手にしていた水着を葵さんの目の前に差し出した。

「!!??なんなのよこれ!?どれも布地が少なすぎるじゃないっ!!」

「うん、マイクロビキニってやつだからねー。むっつりおじさんの奏多にはこれぐらいセクシーなやつじゃないと☆それにこれならすぐにエッt」

瞬間、葵さんに口を塞がれた。オレが言わんとしたことが伝わったらしく、全身を真っ赤にしている。

「ば、ば、ばかっ!なんてこと言ってんのよ!?」

「ぐふ、葵さん体中真っ赤だよ?ま。冗談はこれぐらいにして。普通のビキニは嫌なの?葵さん結構おっぱい大きいし、映えると思うんだけどな~」

「……少し顔がいいからって何でもかんでも言っていいわけじゃないと思うわ…」

「え?葵さん知らなかったの!?奏多も一日中おっぱ」

「もうそういう話はいいからっ。あまり肌は出したくないのよ。それにこういう物自体雑誌で見たことはあっても着るのは初めてだし…」

まだ少し頬が赤い葵さんに真実を伝えようとしたが、その全てを言い終わらないうちに話題を変えられてしまう。…まあ、女子には要らぬ現実か…

「わかった。ん~と…じゃあ、これね。泳がないときはぁーえっと、これ着ればいいからさ」

胸元が大きくV字に開いたミニ丈の黒ワンピースタイプの水着と、レース編みで長めの白いカーディガンを、葵さんに渡す。

「…まあこれなら大丈夫だわ。とりあえず試着ね」

少し考えこんでいたが、結果納得して試着室に入っていった。

「……葵さ~ん着られたぁ?ねぇ、あ」

「もう終わったわ、さぁレジに」

「えー!?オレどんな感じなのか見たかったのにー!」

水着姿で出てくると思っていた彼女は、そこに入った時と同じ格好で姿を現した。

「貴方の感想なんかいらないわよ。それに…」

「それに?」

俺が問うと、葵さんは視線をそらし俯いて再び全身を真っ赤に染めた。

「一番最初に見せたいのは。……。奏多くんだから」


「じゃ~ん☆見て見て、奏多☆可愛いでしょ☆」

そこには、スカートタイプの白ビキニを纏ったツインテール女陽羽がいた。

「ぶっっっ!!ごほっごほっごほっっ!」

「あ、ごめんごめん。奏多には刺激が強かったねあはは。でね今度さ、葵さんとプール行くとき、この水着着て行こうかな~って」

「け、けどお前、その姿は数分しかもたないんじゃ」

「あー、あれね、実は嘘なんだよねー。だってああでも言わないといつ奏多に襲われるかわかんないんだもん。ま、ちょーっと本気出せばこんなもんだよ☆」

「…まあいい…しかし。"それ"は女陽羽(お前)の身体なんだよな?陽奈ちゃんのから、ごふっ」

「おっさん、陽奈で変な妄想するなって言ったよな。……ほら、男の水着ってワンパターンじゃん?華やかさも可愛さもないし。どうせ着るなら絶対にこっちって決めてたんだよねー☆」

そう言いながら、陽羽は自分の胸を両手で揉んでいる。ちょ…何してやがる…羨まし…くなんてないからな!

「おま……コホン。しかし女陽羽(そっち)で大丈夫なのか?第一、葵さんはこのこと知らないし。ほら、前に会ったときは何とか誤魔化せたが」

「まあ、そこは何とかするから。奏多は葵さんとエッc」

次の言葉が出てくる前に俺は陽羽の口を塞ぐ。??????????ん?ん?ん?ん?ん?ん!?こいつ今とんでもないことを

「陽羽君?お行儀が良くないぞ?俺はただプールで、ただひたすらに遊ぶことだけを考えてだな」

「全く、素直じゃないんだから。あ、そうそう。あとね、葵さんにぴったりなヤツ選んだん」

「は!?!?!?!?お、お、お前一緒に買いに行ったのか!?」だから、羨ましくなんて、ない、んだからなっ、本当だからなっ

「じゃあ、奏多に一緒に買いに行く勇気、あった訳?」

「そ、れは無い、が…」

「やっぱりね。けど葵さん、奏多に一番に見せたいんだって言って、オレには水着姿見せてないから安心してよ」

「葵さんが、俺に、一番に、」陽羽の言葉に、俺の思考は停止し、ただそれを反芻することしかできなかった。

「わぁーい!プール☆プール☆!」

次の瞬間、陽羽が抱きついてきてソファに座っていた俺の頬に胸を摺り寄せてきた。その柔らかな胸の感触に思考が一気に稼働し、再度急停止した。

頬におっ…おっ、pあifけjふぁkhjgfhらhふぉいhjうぇおいfはいrhご…ぐはっ

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