牛乳粥
牛乳とご飯は合わない。
確か、そんな事を言っていた覚えはある。
しかし、今目の前にあるのは……。
「牛乳粥。牛乳とご飯の可能性を試したくて、一晩考えたの」
一晩考えた結果の牛乳粥。
「真っ先にクリームシチューが思い付いたんだけど、私クリームシチューにご飯は絶対許せない派だし、最初はやっぱりシンプルに攻めるべきかと思ってさ。シリアルとかオートミールなら、おしゃれな海外風の朝ごはんになるのに……見た目も残念」
いつも以上に饒舌に話すゆいこの手には、トーストとコーヒー。
そして残念な牛乳粥は、なぜか俺の前にだけ置かれている。
「あ、牛乳冷たいままかけちゃったけど、温かい方が良かった? レンジに入れてこようか」
どうやら牛乳粥とは言いつつ、シリアルのようにただご飯に牛乳を注いだだけの物らしい。
牛乳粥を手にキッチンに戻っていくゆいこの後についていく。
一分だけレンジをセットしたゆいこだったが、ふと手を止めキッチンを見渡しはじめた。
「砂糖入れたら食べやすいかも! あ、お茶漬けの素を入れるとか、どう?」
至極真面目な顔で聞いてくる。
どう? と言われても。
それなら牛乳じゃなく、普通のお茶漬けで良いのではとしか思えないけど。
レンジをスタートさせ、ゆいこはまた考え込む。
「ミルクリゾットとか、米粉でミルクパンにするとか。パンはちょっと違うか……」
そこまでして牛乳とご飯の組み合わせにこだわらなくても。
レンジから牛乳粥を取り出したゆいこが、俺の顔を見て不満そうに口を尖らせる。
「ねぇヒロ、聞いてる? 何か言ってよ」
何かと言われても。
再び目の前に置かれた牛乳粥の匂いを確かめ、鼻を擦ってそっぽ向く。
「んにゃー」
猫はご飯も牛乳も食べちゃ駄目にゃ。
ちゃっかりお名前拝借しました!!