何てことない日常
「おはよう、賢太君」
「おはようございます、先輩」
翌朝の校門、俺は出会ってしまった。荒川明来先輩に。
この先輩、実は高校でも有名な先輩らしく、現生徒会長にして男子から絶大な人気を誇っているとか。
「そんなに緊張しなくていいのよ?」
「別に緊張してませんよ」
「あら、そう」
そういって先輩は俺の耳に息を吹きかけてきた。
「ひぃ!!」
「可愛い」
「何やってるんですか先輩!!」
「何って充電よ。賢太君パワーの充電」
「あ~そうですか。どうぞ勝手にしててください」
全くこの先輩は…………周りの目を気にしろってんだよ…………
そして先輩は満足したのか、踵を返して去ってしまった。
ーーーー
時は進み昼休憩の時間帯。
俺は相変わらず屋上で一人購買の菓子パンを口にしていた。
「賢太」
「お、おう璃々」
俺が反応すると璃々は隣にちょこんと腰を下ろした。
「ど、どうした?」
「今朝、先輩といたでしょ」
「よく知ってるな」
「そ、それは…………き、聞いたのよ!!友達から」
「いや、別に何も疑ってないからな?決してお前がこっそり陰から見てたなんて疑ってないから」
「いじわる」
いや、図星かよ。てか自分で自分の首絞めたよな、コイツ。
「で、何の用だよ」
「記憶は戻りそうなの?」
「それが全然。そんな兆候も一切なし」
「そう…………」
何なんだ?心配でもしてくれてるのか?いや、そんなわけないわ。
「で、それだけか?」
「何よ、文句ある?」
「何も無いよ」
「…………」
「…………」
少しの間沈黙が俺たちを包み込んだ。
「賢太、友達ぐらい作りなさいよ」
「あの………俺ってそんなに友達って少なかったのか?」
「う~ん…………いたとは思うわよ」
「何だよ。その濁した言い方」
「まぁとにかく、男の友達くらい作っておきなさいよ」
「お、おう…………」
「じゃあ私行くね」
何で協力的なんだ?それも友人関係に関して…………まぁいいか。