先輩
結局ラブレターの差出人への手掛かりは無しか…………
放課後の学校、生徒玄関へ向かう廊下。俺は一人考え事に集中していた。
「賢太君」
「はい?」
名前を呼ばれ振り返るとそこに立っていたのは…………長い黒髪にどこか色気のある先輩。
この高校は制服のワンポイントの色によって学年が決まる。一年が緑、二年が赤、三年が青だ。つまり今名前を呼んだ人はワンポイントの色が青だから三年生。
「あの…………俺の知り合いですか?」
ん~大分この質問の仕方にも慣れてきたな…………正直慣れたくはないけど…………
「何を言ってるのかしら」
「はい?」
「私と賢太君の仲でしょう?いろんなことをしたじゃない」
そう言って先輩は艶めかしくスカートを少したくし上げる。
俺の視線は自然とそこに…………って、おい!
「いやいや!!ない言ってるんですか!?いやまぁ記憶が無いから一概に否定はできませんけど…………」
「全く、記憶喪失でも相変わらず可愛い反応するのね、賢太君って」
あぁこの人はアレだ。なるべく接しない方がいい系の…………
「賢太君、今私と距離を置こうと考えたでしょ?」
「うっ」
何でわかったんだよ…………
「図星みたいね」
先輩は余裕な表情を見せる。
「はぁ…………ところでどちら様ですか?少なくとも俺の知り合いではあるんですよね?」
そういうと先輩は一気に俺との距離を縮め、顔を覗き込んでくる。
すげ~いい匂いした。
「賢太君って本当に記憶喪失なのね」
「あの…………その台詞、もう何回も聞いてるんですけど」
「それも無理ないわ。だって賢太君って嘘が苦手だったもの。まして冗談なんて」
「そうですか…………」
「ええそうよ。私は荒川明来よ。見て分かる通り賢太君の一つ上の三年生。私のことは以前みたいに明来先輩と呼んでくれればいいわ」
「は、はぁ」
この人、いや先輩ちょっと苦手かも…………大人っぽくて非の打ち所がない超人って感じが…………
「今日はこのくらいでいいわ。賢太君の顔を拝めただけでも満足だわ。それじゃあね」
そう言って先輩は手を振ってその場を去っていった。