プロローグ②
あれから丁度二週間が経った。
俺は精密検査等々を受けたのち無事退院。今日久々に高校に通う予定なのだが…………
入院中に誰一人お見舞いに来ないってどゆこと!?
俺って高校で嫌われ役だったのか?
まぁ家に帰って自室に入ってみれ大体想像ついたけど…………
何せ、何にもないのだから。あったのは勉強付けに辞典がびっしり敷き詰められた本棚。
これで俺が進級できた理由も分かった。ついでに沙耶が大丈夫と言っていた理由も。
自分で言うのは何だが、どうやら俺は勉強はできるらしい。まぁ裏を返せば勉強以外は何にもないってことだな。
「お兄ちゃん、顔色が悪いですけど大丈夫ですか?」
「あぁ…………なんとかな」
「大丈夫です!私はいつでもお兄ちゃんの味方ですから!」
「お、おう…………」
いや中学生の妹に慰められてる俺って…………
「それじゃあ、沙耶はこっち方向なので」
「あぁ、気をつけてな」
「はい!お兄ちゃんも元気出してくださいね!」
こうして俺は沙耶と別れて高校への道なりを一人で歩いてるわけだが。
やたらと注目を浴びているのは気のせいだろうか。
いや気のせいであってくれ…………
ーーーー
「えっと……富田君は本当に記憶喪失なんですよね?」
「はい先生。疑う気持ちは分からなくもありませんけど、流石に記憶喪失を装う痛いことはしませんよ?」
時と場所は進み朝の高校、職員室。俺は担任の先生、山田先生に呼び出されていた。
「そうよね…………ごめんなさい疑って」
「いえ…………」
「まぁ大体の事情は親御さんから聞いているから心配しなくていいわ。それに学力だけど…………富田君なら問題ないわね」
一体俺という人間はどれほど勉強ができたんだ!?
「あの……俺ってどんな人だったんですかね?」
「まぁ、普通の人ではあったわ」
まぁ?やたら引っかかる言い方だな。
「話はこれくらいにしましょうか。一限に遅れますよ」
「はぁ…………」
大して話しても無いと思うけど…………
ーーーー
どうやら俺は勉強はできていたみたいだな。交友関係は皆無だったと…………
俺は鞄の中から少し折れ曲がった国語のノートを取り出した。
そしてノートのページを開いた時に一枚の紙きれが落ちてきた。
それを開いて俺は凍り付いた。更に頬が熱くなる間隔。まだ寒さも残る春だというのに全身の毛穴から汗が噴き出てきそうな…………
『好きです。付き合ってください』
「これって…………ラブレター?」