プロローグ①
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さぁ今起きていることは決して夢なんかではない。
俺は現在進行形で病院と思われる場所のベッドに横たわっている。そして周りには中学生ぐらいの女の子、白衣を着た先生とナース。
どうやら俺は、僕は?いや何でもいいけど記憶喪失らしい。
きれいさっぱり記憶が欠落してる。名前は当然、家族構成もこうなった経緯も全部。
「お兄ちゃん!!目を覚ましたんですね!!」
あ~うん。そうなんだけど、お兄ちゃんってことは血縁関係にあるってことだよな…………
「富田さん、親御さんに連絡いたしますね」
「はい!」
俺の傍で話がどんどん進んでいく。
あと、まあ『俺』でいいよな。そっちの方がしっくりくるし。
「お兄ちゃん!!」
このかわいい子は…………まぁ抱き着かれて悪い気分にはならないな。
「ところで…………俺って誰?」
「はい?」
「あ、いや…………覚えて無くて?」
「え、ええ~!?」
てなわけで俺は記憶喪失で何もかもきれいさっぱり忘れていた。
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「え~っとつまり君は俺の妹の沙耶ってことだよな?」
「はい!」
「で、俺の名前は富田賢太と」
「はい!」
うん。名前と家族構成は大体わかった。俺の名前は富田賢太で妹の沙耶と父、母の四人の家族構成。
そして今から四か月前の去年の冬に俺は交通事故にあったと。
「沙耶は嬉しいです!お兄ちゃんが目を覚ましてくれて。でも記憶喪失というのはショックです…………」
「あ~うん」
「先生曰く、その記憶障害もしばらくしたら元に戻るそうですよ」
「そうなんだ」
「あの~元気ありませんね」
「そりゃあ、記憶喪失って言われて元気でいられるわけないだろ?」
「そうですけど…………心配には及びません!お兄ちゃんの記憶が戻るまでこの沙耶が身の回りの世話は何でもしますから」
そうか…………それは有難いけど、一番の心配は高校なんだよな…………
俺が交通事故にあったのは4か月前。つまり俺が高校一年の冬なわけで、今はその翌年の春。同級生は皆進級してる。
この疎外感は一体…………
しかも俺って進級できるのか?高校に入って即留年なんて御免だぞ?
大学ならまだしも高校か…………高校中退なんて肩書は嫌だな。
「お兄ちゃんは高校が心配なんですか?」
「う、うん…………」
「多分ですけど、心配はいらないと思います」
「ん?どうして?」
「それは…………時機に分かると思います」
「?」
この時沙耶が大丈夫と言っていた根拠は分からないけど、こうして俺は新たな一歩?を踏み出したのだった。