5 お勉強タイム
チートですが何か?
貴族というのは覚えることがたくさんあるみたいだ。基本的な読み書きと計算ができると伝えると、まず教えて貰ったのが、爵位についてだ。貴族には5つの階級があって、上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵という風に別れている。そこに含まれないのは国王陛下や王妃様といった王族や、あとは爵位を持たない平民ということらしい。
次に、礼儀作法や挨拶などのマナーについて。食事の取り方や歩き方までしっかりと教えてもらう。一朝一夕には覚えられないだろうけど、これを克服しないことにはお祖母様と一緒に食事をして貰うことも出来ないそうだ。
地理や歴史についても軽く教わったが、まだまだ覚えきれてない。復習が必要かもしれない。わかっていることは、僕の住んでいる国はレスタール王国という国で、僕はそこの侯爵家の跡取りということだけ。これから毎日頭に入れていくしかないだろう。
剣術についても少しだけ教わった。もっとも、剣術は思ったよりも良かったようで、唯一教師の方に褒めてもらった。
そして、僕が一番驚いたのは・・・
「と、このようにこの世界には魔法と呼ばれる現象が存在します。魔法とは自身の魔力を糧に発動させる力で、強力な武力と言えるでしょう」
「魔力とはそもそもなんなのですか?」
「ある研究者の話だと生命力に近いものと言われております。だからと言って使うと寿命を削ることはまずあり得ません。よほど身の丈に合わない魔法でない限りにおいては安全でしょう」
そう、この世界には魔法と呼ばれる力があるそうだ。魔法には属性というものがあり、火、水、土、風、雷、光、闇そして、それらのどれにも当てはまらない無属性の8つがあるそうだ。今まで知らなかったどころか村の人も何も言ってなかったので、疑問に思っていると、教師の方が簡単に説明してくれた。
「魔法を使えるのは、いえ、魔力を持つためには貴族の血をひいてることが前提条件なのです。だからこそ貴族と平民の間には絶対な壁があるのでしょうね」
「貴族しか使えないのですか?」
「ええ、平民に教えてもそもそも魔力が発現しないのです。だから魔法を使えない」
そうなると、貴族の血筋になんらかのものがあるのだろうか?そんなことを思っていると、教師の方は透明な水晶を取り出してきて言った。
「この水晶に手を触れてみてください。これでおおよその魔法適正を知ることができます」
「触れればいいのですか?」
「はい。もっともこれは形式的なもので、代々貴族にはそれぞれの家で培ってきた魔法適正というのがきちんとあります。ラルス様の場合はメダル侯爵家の証として、土と火の属性が出ると思います」
そう言われたので僕は水晶に触れてみる。すると、何やらよくわからない色が出てきた。何色か混じったような色。まるで8色全てを混ぜてそれを透明化したような変な色。
「あの、先生。これは・・・」
「・・・ラルス様のお母上は王族か何かですか?」
「え?いえ、聞いたこともないですが」
「そうですか・・・いえ、すみません。水晶か壊れてるかもしれませんので後日もう一度別の水晶でやりましょう」
「はい。わかりました」
何やら意味深なことを言うと先生は早々に部屋から出ていった。それを見てから僕は先ほどの水晶の色に関して何やらあまりよくない想像をしてしまうのだった。
「なんだって?」
いきなり訪ねてきた、ラルスの魔法の教師の言葉に思わず目を細めてしまう。しかし、教師はそれに対して臆することなく言った。
「ラルス様の魔力適正が全ての適正を出しました。まるで王族のように」
魔力適正とは基本的にそれぞれの家で決まったものが出る。例え他の貴族を嫁入りさせたり、婿入りさせてもぶれるものではない。しかし、今回ラルスが出したのは明らかにメダル侯爵家のそれではなく王族のような全ての適正がある色だった。その事実に思わず苦々しい表情を浮かべて言ってしまう。
「全く。あれは厄介事ばかり持ち込む。疫病神かね」
「怖れながら、私では彼を導けません。出来れば王族の知識を持つ方にご教授いただかないといけないと思われます」
「まあ、そうさね。わかったよ」
「それから、一応陛下にもご報告を上げたほうがいいかと。ラルス様が正式に跡取りになるのでしたら必要です」
その言葉にため息をついてから、窓の外を見ると丁度雨が降りだしていた。その雨を見ながらこれからの対策に頭を回すのだった。