2 お祖母様との邂逅
色々とスタートがあれな感じに(^_^;)
メダル侯爵家は馬車で2日かかる距離にあった。夜営をしながら着いたメダル侯爵家は想像以上に大きな屋敷で、少しだけ気遅れしそうになるが、きちんと向き合おうと思いながら中に入る。使用人からの視線も若干刺々しいものがあったけど、僕が挨拶がわりに会釈をすると驚いたような表情に変わった。
「ラルス様。使用人にはかしこまらなくてもいいのですよ」
「あ、そうなのですか。でも、使用人の方も立派にお仕事されているので、敬意を忘れてはいけないと思いまして」
「貴族というのはそういうものなんです」
そう言いながら案内してくれる執事のクラウドさんに続いていくと、ある部屋の前までは案内される。執事さんはノックをしてから言った。
「大奥様。連れてきました」
『入りな』
その言葉に扉を開けると、中には凛々しい姿のおばあさんがいた。その人は僕に視線を向けると睨んでるようにこちらを見て言った。
「お前が、あの愛人の子供か?」
「はじめまして。ラルスと申します」
「ふん。あの性悪によく似てること。気にくわない」
そう言ってからこちらに近づいてくると、おばあさんは僕に一度ビンタをしてから言った。
「こんな気にくわない顔をしていても、メダル侯爵家の血筋をひいてるんだ。せいぜい励んでもらうよ」
「はい。僕なんかでお役に立てるなら喜んでやらせていただきます。あの、お祖母様と呼んでもよろしいのでしょうか?」
そう聞くとおばあさんは少しだけ驚いた表情をしてからそっぽを向いて言った。
「・・・好きにしな」
「ありがとうございます。お祖母様」
「あの性悪みたいにピーピー泣くかと思ったけど、随分と大人しいことだね」
「痛みには慣れてますので」
「・・・慣れてるだって?」
その言葉にお祖母様はこちらに近づいてくると僕の衣服の一部をめくってから痣を見て目尻を鋭くした。
「これはなんだい?」
「お気になさらず。これは僕が母さんから頂いた愛情と罰ですので」
「罰だって?」
「はい。僕が産まれたことで母さんは不幸になりました。なので僕はこれからの人生を罪を償うために生きようと思っています」
その言葉におばあさんは何やら苦虫を潰したような表情をしてから言った。
「あんた・・・壊れてるのかい?」
「至って正常です。僕は産まれたこと自体が間違っていました。なので、僕は人の役に立ちたいのです。そうして罪を償うことしか僕には出来ませんので」
「・・・もう、いい。下がりな」
「はい。お祖母様。何かありましたらお呼びください」
そう言ってから僕は部屋をあとにする。扉の前で待っていた執事さんは少しだけ聞こえたのか複雑な表情をしていた。
「ラルス様。お部屋にご案内します」
「ありがとうございます」
「ラルス様、私ごときではお役に立てないかもしれませんが、何なりとお申し付けください」
「そんなことないですよ。クラウドさんはとても優しい人だと思います」
「いいえ、私などまだまだですよ」
そんな会話をしながら部屋に向かう。案内された部屋は凄く広くてベッドも大きい。そもそもこういうしっかりした造りのベッドで寝たことないので少しだけ楽しみでもあった。
「大奥様」
夜、珍しくお酒を飲む主人に執事のクラウドは思わず聞いていた。
「ラルス様のことどうお考えですか?」
「あの性悪そっくりで吐き気がするさね」
「あの後侍女に確認させましたところ、体にいたるところに生傷が目立ちます昔のものも多いですがここ最近のものもあります」
「だろうね」
なんとなく予想出来ていたことに思わずそう頷く。
「10歳の子供が一人で生きてきたので仕方ないかもしれませんが、明らかにラルス様は歪んだ価値観を持っております」
「それを今さら変えろなんて無理な話さね。それより頭にくるのはあの性悪だ」
一気にお酒を飲んでから言った。
「子供に最後まで気を使わせてあの世に行ったなんて、情けない」
「大奥様。よろしいのでしょうか?あのままではラルス様はいつか壊れてしまいますよ」
「だが、あれは確かに信念を持っていた」
再び注がれたグラスを持ちながら言った。
「なら、しばらくは様子見だよ」
「かしこまりました」