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魔王と2人の勇者③

森の主とウィンの戦いは決着を迎えようとしていた。

勝敗は誰の眼から見てもあきらかであった、ウィンは自らの魔力を避ける事に集中しなが、隙を見て森の主へ攻撃を仕掛けてはいたが、その刃は固い鱗に阻まれまともなダメージを与えられないでいた。


その戦いをベリアルは少し離れた所から、どこからか拾って来た椅子に座り紅茶を飲みながら眺めていた。


「アルドラ、紅茶のお代わりの前に少しカップを預かってくれるかな」


「かしこまりました。」


何処からともなく現れたアルドラにベリアルはカップを渡すと、胸ポケットからハンカチを取り出し、自らの眼に当て涙を拭った。


「アルドラ、私はこの世界に来て良かったと今心から感じるよ」


ベリアルは感動し震える様な声で話を続ける。


「見てごらん彼の戦いを、守るべき村の為に命を掛け、自らを犠牲にして戦っている、これほど美しい姿は無いだろう」


アルドラは何も言わない、彼女の眼から見ればこれは初めから勝敗の見えていた戦いであり、何も感じる所が無いからだ。


「アルドラ、僕達魔族は基本的に自己中心的な生き物だ、彼の様に自己犠牲の精神で勝ち目の無い戦いを挑む者は、まず居ない」


アルドラの感情を知ってか知らずか、ベリアルは話を続ける。


「あ~私はこの姿が見たくて世界を渡ったんだ、本当に前の世界での私は愚かだった、この姿を見るのにわざわざ自分が王になる必要などなかったんだ、私の心はこんなにも簡単に満たされるというに、」


ベリアルは演技っぽく自分で自分を抱きしめ、自分の感じる感動を表現する。


「そろそろ決着が着きそうだ、最後に彼らに感想でも聞きに行こうか」



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



「しまった!」


森の主とウィンの決着は予想通りの展開で決着が着いた。

長い時間森の主の攻撃を避け続けたウィンは疲労し、足がもつれた所に森の主の尻尾を使った一撃が入り、建物壁にウィンは叩きつけられた。


「う・・・ここまでか」


叩きつけられ倒れ伏すウィンの前にベリアルが拍手をしながらゆっくりと近づいて来た。


「とても素晴らしい戦いだったよ勇者君、君の命を掛け戦う美しい姿は私の心に確かに刻まれた」


「なんだよ・・・俺を笑いに来たのか・・・」


倒れたウィンは眼だけをベリアルに向ける。


「どこに笑う要素があるんだい、君は君の目的を果たしこの戦いに勝利したと言える、おめでとう勇者君」


「・・・勝利?・・・」


「ああ君の目的はこの村のエルフ達が逃げるまでの時間稼ぎだ、安心したまえこの村のエルフ達は誰一人掛ける事無く、時期に安全な所への避難が終わる」


「そうか・・・それは良かった・・・」


そうウィンは言い残すと、意識を失った。


「そうだ君の命を掛けた戦いは無駄では無かった、君は多くの命を救ったのだ、おめでとう」


ベリアルは次に振り向き、森の主である大蛇に視線を移す。


「やあ、もう一人の勝者であるヘビ君、君にもおめでとうと言わなくてはいけないね、でもヘビ君、少し時間が掛かりすぎなんじゃないかな、私の事は気にしなくていいと言ったのに、最後までこっちを警戒するなんて、ダメだよ、ちゃんと目の前の敵に集中しなくちゃ、足元をすくわれてしまうからね」


森の主である大蛇はベリアルの強さを理解してるのだろう、襲い掛かる事はせずただひたすら様子をうかがっている。


「決着はもう着いた訳だが、なぜこの村を襲ったんだい良かったら理由を教えてくれるかい?」


「・・・シャー・・・」


「ふむふむ、ああそれはそれは申し訳ない事をした、謝るよ許してくれ。だが君はこの場所を勝ち取ったわけだ、つまり問題は既に解決している、約束するここには手を出さないと」


ベリアルはまたウィンの方を向く。


「さて、そろそろ戻るか、もう一人の勇者君も頑張っているみたいだしね、このおみやげを持って帰れば彼らも喜ぶだろう」





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