表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

魔王と2人の勇者②

※新キャラの青年視点です


漆黒の森の端にあるエルフの村、この村は今危機的な状況に陥っている。

本来ここには来ない筈の森の主が、何故か突然現れたのだ。

森の主は縄張りを持ちそこから離れる事は無い、漆黒の森近くに住む人々は正確に把握しており、決して近づく事は無く、だからこそ危険な漆黒の森近くでも比較的安全に暮らせるはずだった。


エルフの村にいる唯一の人間、少し尖った髪型に緑の鎧を着た冒険者の青年は覚悟を決めて戦の準備をしていた。


「これでよし、いつか倒して見せると誓っていたが、この村で森の主に合うとは思わなかったな、出会ってしまった以上これも運命、目の前で逃げ惑う人々を見捨てては目標である勇者にはなれない」


青年は自らに言い聞かせ、溢れてくる恐怖心を振り払おうとしていた。


「なるほど勇者に成るために大蛇に挑むか、だが少し無謀ではないか」


自分以外は誰もいない筈の部屋に男の声が響いた。

青年の世界では見た事のない服であるタキシードにオールバック、色の薄いサングラスを掛けた、異様な雰囲気を漂わせる男がそこにはいた。


「誰だ!貴様!」


これから森の主である大蛇に挑もうと気持ちを高ぶらせていたこともあり、突如現れた名も知らぬ男相手に剣を抜き、その矛先を向ける。


「なに私の事など気にするな、君が大蛇に挑む姿を眺めに来た、ただの野次馬だ」


青年は目の前の男について分析を始める、この村にはエルフ以外の種族は自分しかいないはずだと、だが目の前の男はエルフでもなく、人間にも見えない、数値で測れるものではないが強い魔力を纏っているのを感じる。

危険な男だ、警戒を解いてはいけないと全力で自らの感覚が警鐘を鳴らしている。


「何者だ、貴様が森の主を仕向けたのか」


青年が殺気を飛ばすほどの臨戦態勢を取っているにも関わらず、その男は気にすることなく、リラックスした様に椅子に座り手にした紅茶に口を付ける。


「まさか、私がそんな無駄な事をする訳が無いだろう。それよりいいのかい、村人が逃げる時間を稼ぐ為に大蛇を引き付けるんだろ、こんな所でグズグズしててもいいのかな」


挑発的な笑顔を見せる男に、青年は本来の目的を思い出す。

目の前の男にかまっている暇はない、青年は男に話掛けながら森の主の元へ走り出して行く。


「何者か知らないが、見ていたければ見ているがいい、この風の勇者ウィンが大蛇を退治するところを」


ウィンは急いで村の中央へ向かう、最初遠くで発見されたはずの森の主は、すでに村の中へ入っていた。

村のエルフ達は逃げ惑っている、森の主は逃げて行くエルフ達を無視するように、村の中心を進んでいた。


「こっちだ、森の主。そもそもここは貴様の縄張りでは無いはず、なぜこんなところに来ている」


ウィンは森の主を引き付ける為、大きな声を張り上げながら森の主の目の前に立ちふさがった。


「・・・・しゅる~・・・」


「ちっ、上位の魔物は知能が高く人間の言葉も喋れると聞いたがそうでも無い奴もいるみたいだな」


次の瞬間、ウィンの死角をを突くように、回り込んだ尻尾が突っ込んで来た。

ドゴン!とウィンが立っていた場所に叩きつけられ土煙が上がる。


「流石は森の主と呼ばれるだけはある、風の魔法で体を軽くしてなかったら避けきれなかったぜ」


とっさの所で避けたウィンは、少し離れた場所に着地する。


不意打ちを避けられた森の主は、次の攻撃へと移る、己の方が強い事を理解し示す様に、今度は前から尻尾と牙を使い単純な力押しで攻める。

実際、攻撃力もスピードも防御力も全て森の主の方がウィンを上回っている。

風の魔法を使い避ける事に集中してはいるが、避けきれず徐々にウィンのダメージは蓄積していった。


「くっ・・避ける事に手いっぱいで、一度も攻撃出来ていないのに、その避ける事させ完全には出来ないのか」


「なに、そんなにも自分を卑下する事はない、実力差を考えたら善戦してると言えるぞ」


先程自分の部屋に現れた男がそこにいた。


「五月蠅い、なんでこんな戦場で堂々と紅茶のんでいるんだよ」


男は何処からか拾って来た椅子に座り、優雅に紅茶を楽しんでいた。


「なに私から見ればこんなもの戦場では無いからだよ」


ウィンはその時異変に気が付く、先程まで休む間もなく攻撃をしてきた森の主が攻撃を止めたのだ、おそらく現れた男を警戒しているのだろう。


「あーヘビ君、安心したまえ私は手を出さないよ、だから私に気を取られて彼への集中を切らしてはいけない、君は彼との戦いに決着を付けるんだ」


「お前はどっちの応援なんだよ」


「なにどちらでも無いさ、それよりその様で勇者と名乗れるのかな?」


森の主と戦い初めてまだ30分と経っていないだろう、しかしウィンの緑の鎧はすでにぼろぼろになっていた。

だがウィンはそんな男の問いかけに笑い捨てる様に答える


「あんた分かって無いな、勇者とは勇気ある者の称号だ、誰もが目を背ける悪事や危機に挑む者こそ勇者なのさ」


そう言って、先程まで防戦一方だったウィンは剣を構え、森の主へ飛び込み始めて攻撃を仕掛けた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ