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魔王と少年③

魔王に助けられた黒髪の少年アイルは魔王に今日までの事を話した。


「なるほど口減らしね、見るかに余り豊かな村には見えないからね」


「知ったように言うけど俺の村を直接見た訳じゃ無いんだろ」


「私は使い魔と感覚を共有できるんだよ、使い魔を通して村を見ているし、村人の会話も聞いている、例えば君たちの両親は既に亡くなっていて、エリザの元に預けられていた事、村の支援でギリギリ生きていた君たちが、自ら名乗り出て口減らしに志願した事、村の人達が噂話しをしているよ」


ベリアルが実に楽しそうに話す。


「なかなか人生は上手く行かないものだね、この森を無事に抜け豊かであろう村や町に着けば確かに生き延びる可能性は有ったかもしれない、しかし、老人と子供で森を抜けるのは無理があったね」


「うぅ・・・そうだよ、だからもう村には戻れない、なんでもするからここに居させてくれ」


「ここが何処だか分かっているのかい?君達が死の森と恐れる漆黒の森だよ」


「だだ大丈夫なのか?この森には凶悪な魔物が沢山いて、特に森の主に会った日には一流の冒険者でも死んでしまうんだぞ」


漆黒の森、豊かな自然が広がる代わりに多くの危険な魔獣が生息し、この世界でも上位に入る危険地帯となっている。


「ああ少なくともここは安全だよ、まだ森の調査は途中だけど今の所たいした魔獣はいない、皆可愛いものだよ、むしろ彼らが私達に会いたく無いようで、みんな離れてしまっているよ」


ベリアルの持つ強大な魔力に魔獣達は恐れ逃げてしまい、危険地帯である漆黒の森で最も安全な地区になっている。


「・・・あ・・ありがとう」


「どうした急にしおらしくなって」


「まだ助けて貰ったお礼を言ってなかったと思って」


「なに気にするな、これから君も私がこの世界を楽しむ為に協力してもらう予定だからね」


「では新しい部下が出来た記念に、アルドラ紅茶を頼む」


「はい」



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



アルドラが入れた紅茶を飲んで一息つける。

アイルとエミの兄妹は初めて飲んだ紅茶の味に驚き、その初めての味を楽しんでいた。


「楽しむって、世界征服でもするんですか?」


一通り紅茶を楽しんだアイルがベリアルに尋ねる。


「まさか、その失敗は既に前の世界で済ませて来たよ」


「え!世界征服を失敗したんですか?」


「違う違う、この私に掛かれば世界征服などそう難しい事では無い、間違っていたのは世界征服という目的が失敗だったのだ」


「???どういう事ですか???」


よく分からない答えにアイルは訝しそうな顔をする。


「創造してみてごらんアイル君、平和で争いも無い安全な世界を」


アイルは精一杯創造の翼を広げ答える。


「とてもいい世界だと思います」


アイルの答えにベリアルは笑いながら答える。


「そうだね、君たち村人から見ればそうだろう。だが私は世界を征服した魔王だぞ、その私へ部下から日々上がってくる報告は、「本日も異常ありません」ばかりだ。ちょっとしたトラブルなら部下達で解決できるよう完璧な組織体制もととのえてしまったので、私の元に来る前に解決してしまう、これをどう思う」


「えっと・・・退屈なのかもしれません」


「そうだ退屈だったのだ、100年間もの間だぞ、毎日毎日「異常なし」の報告しか聞けない日々、私は退屈のあまり死ぬかとおもったほどだ」


手振りを加え感情を込めてベリアルは話す。


「それは大変でしたね・・・;」


「そうだそれに我々魔族は己の欲望が強い、私はね兵士が必死になって戦う姿が、部下が目的を達成した時に見せるあの顔が好きで魔王になったのだ。あれは良いものだ、特に戦争中の命と命のぶつかり合い、あの一瞬に見せる魂の輝きは、どんな宝石にも勝る美しさが有る」


席から立ち上がり、まるで役者のように語るベリアルに、アイルは圧倒され言葉が出ない。


「世界を征服し平和な世界が完成してしまったら、もうそれが見れない、これほど悲しい事は無かったよ、私は本当に愚かだった、一時の喜びの為にまい進し、その先に有る未来を考えなかったのだ」


ベリアルは本当に悲しそうな声で語る。


「だからこの世界では慎重に動かなければならない、私は自分でいうのもなんだが、大抵の事は何でもこなせる、だが私が係ると楽しい時間は一瞬で終わってしまう」


「だからこの世界では直接征服しないと言う事ですか?」


「そうだ、手を出した方が面白くなりそうなら手を出すが、そうでないなら極力私は手を出さずに観察に徹するつもりだ。そもそも私が最も見たいのは魂が最高に輝く瞬間であって私自身が関わらなくても良かったのだ」


舞台役者の様に動き回るベリアルは、そう言うと動きを止めてアイルの顔を見た。


「だから私自身が直接関わるべきで無い時は、君に手伝ってもらうつもりだ、君はただの一般人私の指示で君が動いたとしてもこの世界に与える影響などたかが知れている、もしこの世界に危機がトラブルが有れば、この世界の人々が救うべきじゃないかな?」


「そうですけど、僕対した事できませんよ」


ベリアルはアイルの頭に手を乗せ、優しく撫でて語り掛ける。


「それでいいんだ、君はただ一生懸命私の指示に従い動けばいい、後は君を含めたこの世界の人々が精一杯その命を掛けてトラブルを解決すればいい、私はその時に見せる輝きを見て自らの欲望を満たすだけだ」


「僕達が・・」


「特に君達人間種には期待しているよ、この世界で初めて会った君はとても良い眼をしている、きっとこの世界には君の様に良い眼をしている者が沢山いるはずだ、楽しみだよ、この世界はきっと私を満足させてくれるはずだ」


魔王と呼ばれていた男ベリアルは、その肩書とは裏腹に慈愛に満ちた表情を見せていた。


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