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魔王と少年①

静かな森が広がる、朝日が差し込み夜明けを知らせる様に、優しい風が吹いている。

5人は無事に新世界へと渡ったが、そこは森の中だった。


「さて無事に新世界に着いたわけだが、ここが何処だか分かるかいローレンス」


「いや森の中だという事しか分からん、使い魔でも飛ばしてみたらどうだ?」


「そうだな、召喚魔法は世界が違うせいか術式を少し組みなおさねば使えんな、だが私の魔力を使った疑似生命体ならこちらの世界でもすぐ使えそうだ」


ベリアルは自らの魔力を小鳥の様な形にして約100羽を空へ放った。


「これで少し待てばここが何処だか分かるだろう、さあ新世界に来た記念に紅茶を一杯頂こうか、アルドラ準備をしてくれるかな」


「申し訳ありません、淹れるための道具を持って来ておりません」


「大丈夫だよアルドラ、必要な道具は全て持って来ている、どの世界に行くにしても私にとって一番必要なものだからね」


歪んだ空間から、豪華な白いテーブルに、それに合わせた白い椅子、紅茶を淹れるのに必要なテーポットなどが出された。


「さあ皆も記念の一杯だ、共に楽しもう」


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



「ああ、この静かな森で飲む紅茶も良いものだ、城は無くとも今この空間こそが我が領地とも言えるな」


少しの時が経ち、ベリアル達は別世界に来たというのに落ち着いた雰囲気で、紅茶を飲んでいた。


「おっ、早速使い魔がこの世界の者を見つけたぞ、我々と同じ様な姿かたちをしているな、世界が変わろうとこの姿は不変の法則があるのかもしれんな」


何も無い空間を見つめながら、まるで目の前に有るかの様にベリアルは語る。


「私は見に行こうと思うが、君達はついて来るかい?」


「ワシは遠慮しておこう、この世界の魔力の流れなど調べたい事が山ほど有るからな」

ローレンスが答える。


「では私がお供致しましょう、王では無くなったとはいえベリアル様をお一人で向かわせるわけにはまいりません、ゴレムあなたはベリアル様の最初の領地となったこの空間を守りなさい」


メイドのアルドラが答え、自らは余り意思表明をしないゴレムに命令を与える。


「…………」


ゴレムは返事をしないが、ベルアルの座る白いテーブルと椅子の前に陣取った。


「エディ、君はどうする」


「私はここでローレンス様のお手伝いでもして待ちましょう、この魔力の感じなら護衛は元魔女のあなたがいれば問題ないでしょう」


ベリアルは全員の意思を確認すると、席を立ち歩き出した。


「では第一原住民とコンタクトを取ってみようか」



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□




「これは生きているのか死んでいるのか、君の目から見てどうかねアルドラ」


「はい、手前の子供達はかろうじて生きてはいますが時間の問題でしょう、すこし離れた所にいる老人達はすでに亡くなっていますね」


ベリアルとアルドラは森の中を進み、この世界で最初に見つけた人の所へ来た。

しかし、そこには最早歩く事さえままならない子供達と、既に亡くなっている老人達がいるだけであった。


「やあ少年、私の名前はベリアル、異世界では魔王をやっていた者だ、できれば君からこの世界の事をいくつか聞きたいのだが、その前に一つ質問に答えてくれないか。 君は生きたいのか、それともこのまま死にたいか」


黒髪の少年と少女に、まるで久しぶりに会った親戚の様に優しくベリアルは語りかけた。


「い……妹には手を出すな……手を出したら俺が殺してやる……」


声を発した少年は、一回り年下の女の子をかばう様に倒れていたが、その眼だけは鋭くベリアルを睨んでいた。


「ああ良い眼だ、そのまっすぐな瞳とてもいい、この世界に来て最初に会うのが君の様な素晴らしい眼をした少年で有ることに神に感謝をするよ、この世界に神が居ればだけどね」


「い……妹には……手を出すな……お……俺の事はどうしたっていい……妹だけは……」


「なんだ、死ぬことは受け入れているのか?だがその眼は死に行くにはもったいないぞ。妹を守りたければ生きるといい、全ては君の選択だ、もはや喋る事もままならない妹の分も君が選択し答えるのだ」


役者の様に振付をし、少年に問い掛けるベリアル。


「…………いき……たい」


少年には選択の余地など無かったのだろう、少年は最後の力を振り絞り声を発した。


「よろしい、君は私のこの世界で最初の部下としよう、私にはこの世界に関わりすぎない様に君の様な部下が必要なのだ。なに心配はいらない、妹の安全は約束しよう」


少年はゆっくり目を閉じて気を失った。


「さあアルドラ、生と死を操る魔女と呼ばれた君なら簡単な事だろう、この兄弟の体を回復させてくれ、それとそうだな、世話係としてあそこで亡くなっている老人の中から適当に選んでスケルトン化してくれ」


「おおせのままに」






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