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ちょっと不思議な夕食

「いらっしゃいませ。」


 来店を知らせるアラームと同時に店員の声があちこちから上がる。

 飲食店でよくある光景。なのだが。


「どこ、ここ。」

「いま帝都で一番話題の食堂って言ったけど。」

「うん、聞いたよ。けど、そうじゃないんだよ。」


 気づいたら異世界だった、というファンタジーな要素に会うこと3年。

 言葉の理解とちょっとした鑑定能力以外は、何もチートをもらえず、薬師のみやらいから薬師に昇格した今日この頃。


 たまたま、異世界で迷子になっていたのをエステリア王国なるところから国外追放されたにも関わらず拾ってくれた隣にいる女の子 ラピスと昇格祝いをかねていま話題の食堂にきた。来たのだが。


「じゃあなに。」

「うん。あれだ。じゃ、心の準備ってやつだ。」


 外見はこの世界に何処にでもある木造建築。なのに、中身は明らかにこの世界の代物ではない。


「いや、意味わからない。そんなんだから引きこもりなのよ。」

「いや、引きこもり関係ないから。少しは、外に出てるし。僕程度で引きこもりなら研究職の人みんな引きこもりだからね。」


 あった頃は、いいところお嬢様の如く、実際そうなんだと思うけど詳しくは知らない、三歩後ろを歩くような雰囲気で言葉使いも丁寧だったのに。

 一緒にいる僕が不甲斐なく甲斐性がないのが悪いのか、魔法適正が高くいままでの鬱憤を晴らすかのようにはっちゃけたのが悪いのか、ずいぶんと逞しくなってしまった。



「いらっしゃいませ。只今、店内満席でして30分から1時間程度お待ちいただきますが、よろしいでしょうか。」

「せっかくここまできたのだから待つ。」

「えー。」

「なによ。」

「いえ、なんでも。」


「こちらの札を持ってお待ちください。」


 入ってすぐぐらいにある受付表を書く変わりに渡された番号札。

 名前を書いても読めないのだからそれに変わる物が必要なのはわかる。けど、適応力高過ぎでは。

 話題になってから半年もたってないのに。


「ところで、さっきの店員さん「なに。」の言葉何語で聞こえた。」

「エステリア語だけど。」


 何故か急にすこぶる不機嫌なったラピスさんを横に置き、僕が聞こえたのは日本語。


「話すと聞くには不自由しないようになっているのかな。どうおもう。」


「え、うん。そうかもしれない。」

 ラピスは言いながら辺りを見渡しているようだ。読める文字を探しているのかな。


 会計カウンターの近く。ネットが張られている中にアニメのキャラクター商品やガム、飴、チョコレートの駄菓子類。「これはこれで貴重な体験なんだけどな。」


 異世界と日本の違いをこんなところで実感するとは。

 それにしてもほんと最近のファミレスっていろいろある。


「どうしたの?」

「薬でも売ったらきっと流行るだろうなって。」


 なんだか不安気な雰囲気をかもし出している。ラピス。僕も一応は狩人組合員。ラピスと供に何回か他の組合員と一緒に討伐を行った。けど、そんな空気は初めての場でも感じたことがない。環境が変わるといってもこうも極端な変化を感じたことはことはないということかな。


「それ大丈夫なの? それにそんなことしたら仕事なくなるよ?」

「その時はラピスの荷物持ちかな。」

「薬売らないかな。」


 ネットの奥にあるねいぐるみを仰視しながらの即答。


「HAHAHA。」


「当店は2時間制になっております。また、全席禁煙にです。口に加えて火を出すものはすべて禁止です。飲酒年齢は20歳以上。成人し他の店で飲酒が大丈夫だとしても当店では飲酒できません。飲酒は年齢確認できる書類を提示していただきエール3杯まで。会計はすべていまお座りの席にて行います。ご注文はこちらの書類に書いてあります。お決まりになりましたらこのボタンを押してください。なお、勝手にテーブルの上にある物を持ち出すことは禁止です。もし欲しいと思う物がありましたら会計時にお声かけください。」


 案内されながら説明を受けた。

 飲酒は駄目か。異世界基準だといけるんだけどな。

 強調するところも多かったしいままでに問題を起こした奴が居たかどうかの想像に容易い。

 警察官居るし。あの警官、どっかで見たことある気がする。

 警察官なんて、日本で傘差し量耳イヤホンで自転車乗って注意越して罰金とられたときにお世話になったぐらいで面識ない。


 気のせい?


「はい。」


「あ、ごめん。わかった。とりあえず、ドリンクバー2つと唐揚げ、マルゲリータとミックスピザ、和風サラダで。」


「ちょっと。」

「ドリンクバー2つ。唐揚げが1つ。マルゲリータとミックスのピザが1つづつ。和風サラダ1つ。以上でよろしいでしょうか。」


「はい。」

「ドリンクバーは」

「大丈夫です。行けばわかりると思います。」


「あ、スープバーあったら2つ追加で。」

「追加で、スープバーが2つ。ご注文は以上でよろしいでしょうか。」

「大丈夫です。」

「免許証か保険証もしくは学生証をお持ちでしたら会計時に提示願います。」

「は〜い。」


 学割あるのか。すごいなファミレス。


「ごめん。適当に注文した。よかった?」


 忘れていた訳ではない。2つ頼んだし。だた馴染み安いだけだ。


 実家恋しいって奴かな。


 それにしてもあの店員顔色一つ変えなかった。さすがプロ。


「うん。大丈夫。」

「飲み物取り行こうか。着いてきて。」


「初めてだよね。」

「こっちに来てからは、ね。」

「そう。」


 さっきから威圧をだした笑顔をしたり、ホッとした顔をしたり、落ち込んだようにも見える顔をしたりと忙しい。


「そのうちなれるよ。」


 問題は此処が僕の知る世界でもそうじゃない可能性。

 さてどうするか。


 ラピスは、紅茶のポットを2つにティーバッグを1。2つの内1つ僕と兼用のプーアル茶とウーロン茶をブレンドしたもの。あとは、ダージリン。そしてなぜかカモミールとペパーミントのティーバッグを合わせた物。

 茶葉の他にティーバッグと品揃えが充実する中で何故それを選ぶ。

 僕はメロンソーダとコーラ。メロンソーダを注ぐ前にその場カルピス。着色料と人工甘味料の味が懐かしい。

 そして、濃い。

 味覚の変化をこんなことで感じたくなかった。


 ラピスはジュースのコーンスープとミネストローネにびっくりしていた。向こうスープは色ついてないからな。


 スープ? 味噌汁とを選んだよ。日本人だし。あと、コーンスープ。


「これだけでお腹膨れそう。」

「水物だからね。」

「ほんとうにあったんたね。それ。」

「あるんですよ。」


 出会って間もない頃、国の話をした。その事を思いだしたようだ。「失礼。隣よろしいでしょうか。」

 警察官が声と一緒名刺を差しだしてきる。


 佐藤太郎。


 一番か二番に多い名字に書類を書く見本でよくみる太郎。


 ありふれていそうで、名前が意外と少ないから、ありふれてない。


 けど、その名前をよく知っている。見たことあるわけだ。


「警察官ね。一番縁無さそうな。よく試験受かったな。記憶通りなら僕と対策ないバカなのに。」

「警察官は公務員の中では他より人気ないから筆記ギリギリでも体力試験と面接でなんとかなる。」

「噂だと自衛隊もどっちかっていうと入りやすいらしいしよ。」

「離職率高いからな。」

「ふーん。」

「おめでとう。」

「ありがとう。」


 当然のように僕ラピスの隣に移動し、さっきまで僕が座っていた隣。僕と正面に来るように座る頬を緩めた警察官。

 そして、ラピスをおいてけぼりにして話す2人。まっ、1人は僕なのだが。


 知っている奴で間違いない。


「老けたな。」

「10年、経ってるんだ。そりゅそうさ。」


「10年ね。」


 僕の時間は16の時から3年しか進んでない。方や26。本来なら僕も。


 こう言うの寂しいって言うのかな。何か空いた感じ。

 浦島太郎ってこんな気持ちだったのかな。


「おばさんとおじさん元気?」

「ぼちぼち。」

「父さんと母さんは?」


 ラピスの気配が変わるのが、嫌でもわかる。現に反対側にいる太郎も顔を一度向けた。


「落ち込んだけどいまは相変わらず。仕事してる方が楽なんだろう。」

「そう。僕の携帯通じる?」

「無理。貸そうか。」

「あっ。あ〜。」

「考えとく。」


 曖昧な答え方。

 本当なら即答出来ても可笑しくない。

 行けたら行くのような答え方をした。


「そっか。」

「聞かないのか。」

「迷ってる。」

「いいのかそれで。」

「駄目だろうな。失踪宣告で死んだことになってるけど、目の前に居るし。」


「10年は長いね。」

「年取るとあっという間だけどな。」


 10年分の重みがのしかかる。


 僕はラピスのおかげでかろうじて生きている。けど、もし僕と同じような人がいたらそうでない場合もある。

 きっと、そういうことだろう。


 重みある空気が場に広がり、注文した商品が置かれる時に出た音が場違いと感じる程。


 そして、最後におにぎりをおいで戻ろうとする店員。


「頼んでないけど。」

「サービスです。」

「米食えってさ。ところで、そっちって米あるの?」

「西か南の方で水麦っていうのがあるらしい。多分、それじゃねえ。」

「食べたことはないと。」


 唐揚げを一つ、つまようじを刺して食べた太郎。

 手づかみじゃないことに少し驚いた。

 これも時間の流れか。


「行動範囲狭いから。」


「帰るの?」

「仕事中。おばさんたちには隣の娘含めうまく言っておく。」

「盛るなよ。」

「どうかな。」

「盛るなら結婚したぐらいまで許す。」


 太郎は、僕の隣に目を向けて笑った。

 ラピスが赤い顔をしながら僕の空いている手を握っている。


「考えとく。」


「太郎。」

「ん。」

「僕、今日、薬師。そっちでいうと診察ができる薬剤師。それになったよ。これ免許、許可書。」


 手元にある鞄から丸まった紙を取りだし、首にぶら下げている紐に付いている白いタグを見せる。


「そっか。何かあったら頼む。」

「どうかな。うまく会えればいいけど。」

「それもそうか。まっ、怪我と病気には気をつけな。医者の不摂生ってたまにニュースで流れるし。後で顔出すよ。」

「あぁ。」


「アオ。」

「ん。」

「おめでとう。」

「ありがとう。」


 自然と頬が緩む。

 そして、体から力が抜け、疲労感が。


 緊張してた。久しぶりにあったからかな。


「いいの? 」

「大丈夫。あれで頼りになる。うまく言ってくれるよ。なんせ正義の味方の仲間みたいな組織にいるんだし。」

「あっ、いゃっ、・・・うん。」


「食べよっか。」

「うん。」

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