御用商人さまからの!? 初の交易クエストでしょ
暫くし 甚八が町人風の男をつれ戻ってくる。
「フェルよ。この者が石塚屋である。石塚屋、これがフェルだ。」と紹介してくれた。
「ご紹介ありがとうございます。航海者のフェルと言います。石塚屋様、この度はお世話になります。」とフェルはお辞儀をする。生粋の異国人ならばお辞儀はないが中身は遠藤のままですからね。
「手前は常陸国の石塚屋です。岡部様より申し付かり フェルさんを一時お預かりします。さて お引き取りして宜しいでしょうかな? 甚八さん。」を笑顔で返す風格ある商人である。
「お引き取り下さい。あと この刀を返そう。」と甚八はショートサーベルをフェルに返す。
「街中で抜いてくれるなよ。警護衆に迷惑だからな。」と釘を刺すのに余念がなかった。
「ありがとうございます。気を付けます。」と甚八に返すフェル。
身支度を整え終え石塚屋に「お待たせしました。」と声をかける。
無事に警備小屋(武家屋敷風の家屋)を出て街道にでる。
「フェルさんとお呼びしますが宜しいですかな?」丁寧に話しかける石塚屋さん。
「はい、それでお願いします。私はどうお呼びすれば、石塚屋さんそれとも旦那様ですか?」呼び方を確認してみた。
「石塚屋だと家だと困るかも知れないですな。みんなで石塚屋ですから ハハハ。旦那様も どの商家の旦那様か区別しないといけませんね。 家の中では旦那様、外では、特に他の旦那衆がいれば 石塚屋の旦那様と呼び掛けて頂くのが良いでしょう。」と丁寧に答えてくれる。
「石塚屋の旦那様、申し訳ないですが周辺の町情報とヒタチのクニについて教えてください。」
「そうですね。まずヒタチは『常陸』といいます。陸を行けはただ道を行くだけでこのクニを回れるから『ヒタミチ』から『ヒタチ』と言うようです。まぁ急峻な山を行かずとも回れれば行商しやすいかと。石塚の町には石塚のお城があり大掾の御殿様が治めております。ここより南に府中のお城があり佐竹様のご分家である東家、北家の御当主様が治められております。府中というか湖沿いに石岡の町がございます。ここより北には袋田の町があります。ここより北東にいけば常陸太田のお城があり佐竹様のご本家が治められています。常陸太田にも城下町があります。さらに東にいくと海沿いに助川という町がありますよ。近くに金山があります。西部は小田の御殿様が治めており城下町があります。南部は下総の千葉の御殿様が治められ木原の町、鹿島の町があります。鹿島といえば鹿島神宮というお社と鹿島湊があります。那珂川の河口付近には北側に那珂湊がありますが佐竹の御殿様に帰順していないのでお気を付けください。那珂川の南側は石塚の御殿様が支援されている大洗磯前神社がありますからそこも集落といえますよ。」
「旦那様、湊町との交易はないのでしょうか?」
「河川を経由すると隣国にも届くので河川運搬が多く。常陸の国の通り陸運もようございますから海運までは。」石塚屋は異国人の若者を見つつ、やはり外洋船か。
・・・あ、あの船では外海での航海に限界があるのか・・・
フェルは一人納得するのであった。
「周りの町と情勢は分かりました。この町、長倉の町、大洗の町、鹿島湊などの交易品を知りたいですね。」
道を歩きつつ話をするものの、やはり銀髪が珍しいのか 通り行く人々の耳目を集めてしまうのに気づいた。
「フェルさん、この先に商家が見えますか? そこが手前の家でございます。商いの詳しい話は中でどうでしょう。」
街道の右側、お城の反対側に数件の軒を連ねるお屋敷群を指して言われる。大名主といえるのだろうか。
「わかりました。」
石塚屋が戻ると番頭以下が出迎えている。細やかに手配をする石塚屋。
「皆、こちらがフェルさんだ。あの岡部様のお言葉にて暫く石塚屋が面倒を見ることになった。よろしくな。」
「「はい」」と番頭以下一同が唱和する。
フェルは軽く会釈する。
そして石塚屋に案内され、奥の間にフェルは通されるのであった。
部屋の入口付近に促され座るフェル。向かい側に石塚屋が座る。
「まず離れを1つご用意し、困らぬよう世話役をご用意しましょう。」そして石塚屋は女中を呼ぶ。
「この娘はリョウと言います。手前どもの下仕えをしているものです」12歳くらいの娘を指しつつ説明してくれる。
「宜しくお願いします。リョウさん。」
「おリョウ、すまないが離れにフェルさんを泊める準備をしてくれ。何かあれば番頭と相談してよい。」
「はい、旦那様。 では失礼します。」と言ってリョウはいそいそと部屋を出て行った。
「本題にはりますかな。まずは塩の作り方を教えていただき、実践して頂きたい。そのうえで納品して頂きたいです。宜しいですかな? フェルさん」
・・・ クエスト 塩の納品 が発生しました ・・・
「はい、喜んで。ただ製塩方法につきましては漠然としかご説明できません。実践と言いましても海水がある海まででませんと、ここでは無理です。納品の量はいかほどでしょうか?旦那様」
「そうですね。フェルさんの船の半分で宜しいでしょうか? なにか前金などご用意するものがあればお伝えください。」フェルは前金を受け取った。
・・・ 製塩方法を漠然と説明した ・・・
流石に工芸スキルを使っての製塩方法は言えなかった。スキル使用は説明しても使えないでしょ。
2017/12/13に初の評価頂きました。ありがとうございます。
より励みに娯楽小説道を貫かせて頂きます。
(作者)フェル