魔法とルシア
召喚されて二日目。
起きたら夢だったみたいな展開もまあ期待はしたけどそんな事もなく、朝っぱらからルシアのおじさん顔に起こされて憂鬱気味の中、やって来ました魔法講座!
「初めまして勇者様。皇国筆頭宮廷魔術師を勤めております、名をパドマ・ラフティと申します。以後お見知り置きを」
そしてなんと!女だ!
まあ、オバサンだけど。
なんだよ!メイドも結構な歳ばっかだし、皇女もオバサンだし!オバサンしかいねえのかここは!
執事は若いイケメンだったけどね。ケッ。
「トモキカスガだ。よろしくな」
ともあれ魔法だ。身体強化魔法はなんとなくわかったけどそれ以外にもできるっぽいし、その辺期待してるぞ。
ルシアは修練場の端で素振りしている。やはり目は離さないんだな。
しかし魔法に関しては口を挟まないつもりらしい。
「それでは早速開始します。まずは魔力操作から始めましょう。ルシアより全身の身体強化は習得済みと伺っておりますので、そうですね……右腕のみの強化から試してみましょう」
右腕のみね。まずはイメージ。
腹のなかの火が右腕に集まる感覚……。
じわじわと右腕に熱が集まって来た。
「いいでしょう。魔力操作は問題ないようですね。次は魔力量を調整してみましょう。そのまま右腕の魔力を弱めてみてください」
ふむ、火が弱くなるイメージでいいのか?
弱くなる、弱くなる……。
だんだんと右腕の熱が引いていく感覚がある。
なるほど、こうやって強弱つけるんだな。
「問題ありません。魔法の基礎は魔力の操作です。今のように身体の各部位に、必要な量を、必要な時に、必要な強度で魔力を練れるように今後努めてください。それでは次に……」
そうやってしばらく魔力操作の練習をした。
右腕から左腕に、そこから両足や腹や胸、頭など様々な部分に魔力を通してみる。
足に溜めると脚力が増すし、腕は腕力、頭に流すと思考がクリアになったりもする。
目に集めてみると遠くの景色が鮮明に見えたりして面白い。
「これは便利だな……」
「身体強化魔法は適正者もそれなりにいますが、勇者様程の適正者は滅多にいませんよ。しかも貴方の場合それだけではない様子。その部分を確かめてみましょうか」
そう言ってパドマは修練場のベンチに置いていた鞄から大小様々な石を取り出した。赤青緑と色も様々だ。
これらは感応魔石という物で彼女の師匠が作ったものらしい。
曰く、これまで出会った特殊適正者の魔力が込められており、同じ適正の魔力が流れると発光するとのこと。
「へぇ……凄え便利だな。ならさっそくやってみるよ」
ひょいと水色の石を持ち、魔力を流してみると
僅かに発光した。
「それは空間魔法ですね。かなり珍しいですよ。この鞄も空間魔法が込められており、中は見た目より容量が多いのです」
「ほぉ、便利だな。なら俺もそんな鞄作れるってことか?」
「いえ、これは特殊な製法を用いて製作している物なので、個人で作るのは難しいかと……。しかし、空間魔法を使えるのでしたら自分だけの空間を作り、そこを倉庫にしてしまえばいいでしょう。便利な分、かなりの技量を要しますが」
なるほど、そんな使い方もあるのか。
というか、身体強化に空間魔法って、何の関係も無いよな?
ってことはもしかしてまだ適正があるのかもしれないな。
「他のも試してみていいか?」
「ええ、是非お試し下さい」
その後全ての感応魔石を試してみたところ、適正は以下の通りだった。
身体強化魔法
空間魔法
時魔法
重力魔法
闇魔法
理魔法
神魔法
パドマは絶句していた。
俺も絶句していた。
どんだけやねん。
思わず関西弁になってしまう。
パドマ云く、特殊適正は基本1つ、多くても3つ程度らしい。パドマの知る限り最大は5つでそれが師匠らしい。
なるほどなるほど、これが勇者特典か!
いや、俺としてはもっと身体強化みたいな硬派な感じの方が好みなんだが、これはこれで嬉しい。
「まさかこれ程とは驚きました。ええ、勇者というのはこれ程なのですね。魔力量も素晴らしい。これならば鍛錬すれば魔王討伐も可能でしょう」
そういえばそんな話だったな。
俺自身乗り気じゃないから忘れてたけど……。魔王か……。
「魔王ってそんなに強いのか?」
そこらへんイマイチ実感が湧かない。俺からすればルシアも強いし、恐らくパドマも俺より強いんだろう。何となくそんな気がするが、魔王に至っては見たこともないからな。
「それはもう。悔しい限りですが、私が10人いて、更にルシアが10人いても恐らく歯が立たないでしょう」
なんだって?
ルシア10人だと⁉︎
「おいおい、10人どころか、ルシア一人にも勝てねえんだぞ。そんな化け物俺が倒せると思うか?」
「あ、いえ、勇者様がこのまま鍛錬を積めば、間違いなく我々では足元にも及ばなくなります。今はまだその才能が開花していないだけですよ」
まあ魔王討伐なんてする気は無いのだが、これだけ親切にされると微かに情も湧いてくる。
「まあ、なるようになるか。んじゃ、それぞれの魔法できる限り教えてくれ!」
「ええ。ですが……少々問題が……」
「問題?」
まさか俺の魔力が足りないとかそういうオチだったりして……いやいや、これでも魔力は多い方らしいし大丈夫……なはず。不安だ。
「いえ、勇者様には問題ありませんよ。私が闇、理、神魔法についてほぼ分からないのです」
あ、なんだそういうことか。
「まあ、残念っちゃ残念だけど仕方ねえよ。こちとら教えてもらってる立場だ。文句はねえって!」
「そう言って貰えると有難い限りです。しかし、一方的な都合で勇者様を呼びつけてしまった上に満足に教える事も出来ないとは……。後程私の方で詳しく調べてみますので、後日改めてご教授致しますね」
い、一応罪悪感とかあるんだな……。いや、そもそも召喚に関しては皇王の独断だったのだろうか?
まあ、どのみち帰る方法も教えて貰えなそうだから今はいい。
「それではまずは空間魔法から始めます」
こうして、俺の魔術訓練が再開した。
夜。
今日は一日中魔法の訓練をしていた。
おかげでかなり魔法の使い方もわかってきた。
そしてもう一つわかったことは、俺の魔力の回復速度が異常らしいこと。
一日中魔力を使い続けても減りはするが底は見えない。パドマが軽く調べたところ、急速に魔力が回復しているのが観測されたらしい。
無限では無いが限りなく無尽蔵な魔力。
とはいえ魔力はそれなりのエネルギーを使うのだろう。
昼、夜と猛烈な空腹感に抗えず大量の飯を食ってルシアやメイド達を驚かせた。
タダ飯食いみたいな感じでちょっと悪い気がしたけど許せ。
そんなこんなで今は今日の復習を自室でしている。
傍に居るルシアはそれを時折観察しながら瞑想している。
たった2日だがこいつが側にいるのに慣れてきた。だが、監視されていると思うといい気はしない。
時期尚早かも知れないが、しかし良い機会かも知れない。
この後どうなるかなんて解らないが、今日の魔法訓練は意外な方面でも役に立ったらしい。
「なあルシア」
「……はい?」
瞑想中だからか返事に一呼吸あった。というか、そんなに気を抜いて良いのかよ。一応俺にはこの国を恨む理由があるんだぞ。
「いや、なんていうか、俺って結局魔王討伐に行くしかないのかと思ってさ。俺からしたら魔王は俺に対して何かしたわけではないんだし、討伐する理由が無いんだよな。」
こいつが気を抜いてるから、こっちまで気が抜けてこんな事を呟いてしまう。
別にルシアがどうとか皇国がどうとかも考えてない。
魔王に関してもだ。特別恨みがあるわけでも逆に親しみなんてのも勿論ない。
「……勇者殿、いや、トモキ殿は魔王討伐に反対ですか?」
勇者と呼ばないのは今はその肩書きでは無く俺自身の意思を問いたいからか、それとも別の思惑があるのか。
しかしどちらにせよ俺は俺であり、勇者という肩書きも別に特別視していない。
その考えからも答えは変わらない。
「結局どこまでいっても俺からしたら、それこそ文字通り別世界の話なんだよ。魔王が悪いとか、人類の危機だとか。だから乗り気にはなれないかな」
「……」
暫く静寂が空間を支配した。
特に緊張感があるわけでも無く、かといって穏やかという訳でもない。
無
ただそれだけ。
「トモキ殿。私は立場上それに対する返答は否と言わなければなりません」
分かってる。そして、あんたがただ俺の監視のみに携わっていただけでもないのも。
「私には闇魔法の適正があります」
知ってる。
さっきから瞑想に見せかけて闇魔法使ってたもんな。
昨日もそうしていたんだろう。
しかし闇魔法への適正は俺の方が高かったらしく、無意識下でそれを防いでいたのだ。
闇魔法は主に拘束や苦痛に比重を置いた魔法だ。闇の鎖で拘束したり、酸性の闇を放出したり。
しかし、その真価はそれでは無い。
洗脳、又は支配。
闇魔法の適正がある者同士では効果を得辛く、その適正が上位のものには凡そ効果がないが、そもそも適正者が少ない。
人族で発現するのは稀で、魔族には多いがそれでも100人にも満たないらしい。
当に誤算だったのだろう。召喚した勇者を闇魔法で洗脳し、魔王への恨みを植え付け、討伐に対して前向きにさせる。
その企みは、俺に闇魔法の適正があったが為に失敗した。
そして、俺がそれに気づいている事もルシアは察している。
だからこそ、今そんな事を話すのだろう。
「昨日の剣の立会いの段階では、トモキ殿は精々魔王軍の勢力を多少削ぐ程度で限界だと思っていました」
そりゃそうだろう。ルシア十人でも勝てない相手に、ルシア一人にすら勝てない俺がどうこうできる訳がない。
舐められてる事にムカつきはするがまあ事実なんだ。
「しかし、今日の魔法の訓練を見て考えを改めざるを得ませんでした」
7つの適正に無尽蔵の魔力。
素の魔力量も多い。
確かに大きな戦力だ。無くすは惜しいだろうな。
やっぱり自由は貰えないのだろう。
「トモキ殿は実感が無いのかも知れませんが、その魔法適正とポテンシャルはもはや魔王のそれより上でしょう。圧倒的に経験が足りない点に目を瞑ればですが」
うん、実感はないな。
強いと言われることに否やはないが、現にルシアに勝てずにいる。
なるほど、これが経験の差というものなのだろう。
「ルシアは、俺をどうするつもりなんだ?」
結局これだ。俺はこの後どうなるのか。
別の方法で俺を飼うか、懐柔して縛り付けるか、若しくは敵に回る事を恐れて始末するか。
思いつくのはこれくらいだが、どれも俺からしたらノーサンキューだ。
「……トモキ殿は理魔法の適正もありましたね。理魔法と空間魔法の混合魔法に結界というものがあります。パドマは知らなかったようですが、理魔法というのは他の魔法に掛け合わせて使うのが基本です。例えば、水魔法に理魔法に掛け合わせて氷を使う者もおりました。そして、この結界という空間はその外の空間と隔絶した空間となるのです。つまり……」
その中での出来事は外から観測できないということか。
「やり方は?」
「まずは結界で覆う範囲を空間魔法で覆ってください」
俺とルシアが入る正方形の空間を魔力で覆う。
「次は想像です。覆った空間を別の空間と認識し、外と隔絶しているというイメージです」
むむ、難しい……。
だいたい結界って某漫画の妖怪退治のしか……。
そうか、この空間内が自分の世界。外は別の世界と認識。出入りする全てを拒絶すれば……。
「……こうか?」
「見事です」
不思議な空間だった。
先程と変わらず部屋にいるのに、まるで音が聞こえない。
まるで俺とルシア以外消失したようだ。
うえ、それはそれで気持ち悪い。
「これから話すことは私の独り言であり、特に重要でもなんでもない戯言です」
やっぱりそうくるか。
最悪この空間で狙われることも覚悟していたが凡そこの展開は想像できた。
「一月後、陛下は魔族への宣戦を布告するおつもりです。そしてその際の切り札は恐らく、トモキ殿でしょう。しかし、私の見立てでは一月の鍛錬では魔王に及ばないのではと考えております。」
「……それで?」
思わずため息が出た。
一月後に魔王討伐に出ることが決定されているのに、俺にはそれを知らせていないとは。
まあ、知らせない理由も分からなくはないが、それでも知らせないよりマシだろうに。
「陛下が勇者召喚に踏み出したのは過去の人魔対戦の文献に於ける、救国の勇者の記述を発見したからです。そこにはこう記されていたとか。『備えしは一月。振るいしは二月。悲願叶ひし弥生なり』」
さっぱりわからん。
が、一月備えろって安直に捉えたのか、それとも俺には理解できない解釈があったのか。
だが、何か違和感を感じる。
弥生って三月だっけ?
なんでこれだけ旧暦なんだよ。
「我々もこの記述の解読に自信はありません。何せ、この言葉は勇者本人による記述らしく、未知の言語でした故」
「えっ、じゃあ俺が見れば解読できるんじゃないか?」
忘れていたが、俺は召喚された時に言語を理解する魔法が組み込まれていたらしく、あらゆる言語が俺には理解できるようになっていた。
「それに同じ召喚された勇者なら同郷かもしれないしな」
「いえ、この翻訳が間違いで、真の意味が皇国にとって喜ばしくない内容であった場合を考えて秘匿しているのでしょう。その辺りは私にまで話が及んでおりませんので推測ですが」
めんどくせえ。ハナから利用する気満々じゃねえか。分かってたけど。
「それで?なんでそんな話を?」
「……私個人としては、この文の最後の悲願叶ひし弥生なりという部分がどうにも理解できず。陛下は恐らく魔王討伐が成ると捉えておいででしょうが、それは間違いではないかと思うのです。根拠はないのですが」
「そんなこと言えば、皇王の推測も根拠なんざ無いだろ」
「ええ、その通りです。故に一月後の宣戦布告に不安を感じているのです」
ふむ、何となく話が読めてきたぞ。
「つまりその宣戦布告を中止、もしくは延期できればいいということか?」
「その通りです。そして、切り札であるトモキ殿ならそれが可能である……と思うのです」
成る程ね。
全面的にルシアを信用するわけではないが、この話は渡りに船だ。
俺がこの国から逃亡すれば魔王軍への切り札である俺が消える。そして戦力が心許なくなった皇王は宣戦布告を中止、もしくは延期にするだろう。
もっとも、皇王は俺がこの国を出るのを大人しく見逃すと思えないし、予想もしているはずだ。何らかの障害や罠は既に用意しているのだろう。例えばルシアとかな。
「で、俺がここから逃げようとしてる事も察してるんだろ?」
直球でいい。
どうせ今気づいてなくてもいずれ気が付く筈だ。
それにルシアが俺を観察している間、俺も逆にこいつを観察していたのだ。
こいつの鋭さや勘の良さはある程度察している。
「……ええ」
ほらな。
伏し目がちに答えているのは果たして責任感かそれとも別の何かか。
そこまでは分からないが、これだけは聞かなければならない。
「邪魔はするのか?それとも、協力するのか?」
もしくは目を瞑るか。
そう、そうやって、今のお前みたいに目を閉じて見ないふりをするのか。
それが答えなのか?
「……私は陛下に仕える騎士です。そして、その事を誇りに思っております」
「つまり皇王には逆らえないということか?」
僅かに沈黙が流れる。
ルシアは目を閉じ深慮の姿勢だ。
俺自身はどうだ、こいつをどう思っている?
たった2日だがそれなりに世話になった。剣の扱いも学び、この世界の常識もある程度教わった。
しかし、皇王の命令とはいえ俺を監視し、挙げ句の果てに洗脳しようとしていたのだ。そして恐らく、俺が皇国に牙を剥く素振りを見せれば拘束か、最悪殺すようにも命じられているのだろう。
わからない。
今のこいつは信用してもいいと思うが、その行動からは信用し得ない。
結局これも成るように成ると割り切るのがいいのか。
ウジウジ悩むのは性に合わないな。
「ルシア、俺はあんたを信用する。そして、今度は俺の独り言だ。聞くかどうかは任せるよ」
ルシアは目を開き、俺の視線と合わせてくる。
その目には深い決意と皇国への忠誠が見えた気がした。
「俺は10日後この国を出る為に力を蓄える。そして冒険者として他国に行き、帰還方法を探す旅に出ようと思う」
そう、どれだけ魔法適正に恵まれていても、やはり自分の家には帰りたいものだ。
母親のご飯に父親の下らないギャグ。
地元の友人とも下らない話をして、クラスの連中とバカみたいにはしゃぐ。
そんな生活はやっぱり捨てられない。
異世界召喚されてその世界に住み込むような恵まれない人生を送っていたような主人公達とは違い、俺は俺なりに恵まれた生活を築き上げていたんだ。
「しかし皇王がどんな出方をするか読めない。武力行使だけならまだいいが、他国に対して指名手配とか、そういった根回しをされると今後動き辛くなるからできるだけ避けたいんだが、それには協力者が欲しい」
「それは、私に陛下とこの国を裏切れということですか?」
ルシアの目が細くなる。やはり厳しいか。
「言っただろ独り言だって。まあでも、俺が居なくなることで魔王軍への宣戦布告が決行される可能性はかなり減るわけだろ?お互い利益はある。利害の一致というやつだ」
「だとしても、私は陛下の命に背く事は……」
あの皇王にここまで忠誠を誓うのか。
俺からすれば皇王は拉致と微監禁の犯罪者でしかないのだが、あれでも一国を仕切る王なんだな。
常識の違いといえばそれまでだがそれでも何だか納得がいかない。
そもそも俺はまだ成人もしてない高校生だ。国がどうこうとかそんな奴に委ねる方が御門違いだし、余所者を戦略の要にする皇王が有能とも思えない。
ルシアは信用する事にしたんだ。だったらこいつの判断に任せよう。俺はちょこっと思ったことを呟くだけ。独り言なんだからな。
「騎士を目指したのは、皇王のためか、国民のためか、それとももっと身近な人の為か。後はルシアが決めることだ。俺は俺の道を行くって今決めた。何としても帰還方法を見つけて、家族と飯を食う。それだけだ」
よし、覚悟は決めた。不安もあるし殺されるかもしれないという恐怖もある。だが、このまま皇王の意思通りに動くことのほうが不安を覚えるんだ。
成るように成る。
「……トモキ殿。ありがとうございます」
そっと頭を下げるルシアを横目に見て結界を解いた。
返事は不要だ。その言葉で確信した。
10日後だ。
それまでにできるだけ鍛えて、この世界で生き抜く力をつける。
その為にもあんたは必要なんだ。
「明日もよろしくな」
卓上のロウソクの灯りを吹き消し、ベットに潜り込む。
ルシアの僅かに乱れた息音を聞きつつそっと目を閉じた。
ルシアが美女だったらなあとか考えたのは仕方がないだろう……。