Miss.Friends
意識の中で、俺はアルバイトをしてた。
でも一人の女が不憫でならない。
人の孤独は黒歴史を賄いながらも、明日も明後日も、現行から段々静まる悪夢を見ている。
Miss.Friends
うるさい女がいた。
たったひとりでも、さんざん喚き散らし、まわりの人を窮地に追い込むのだ。
缶コーヒーを飲んでおちついていた彼は、その女の口数の多さにそれほど嫌気はささなかったが、もう少し控えた方が良いとは思っていた。
その女は、ここの仲間内でも彼女の友達の間でも、やはり良くは思われていない様子で、なにかと不憫な態だった。
彼女は、自分が嫌われている、と誰かから直接言われたでもないが、人間の性、それとなく気付いてはいた。
ある晩、皆その日を終わらせて、彼女もそれなりに疲れていた様子で、次第に彼に近づいてきた。
彼はいつものように缶コーヒーを飲みながら、その夜はじめて彼女に質問をした。
”疲れた?”と、一言ではあったが、彼女にはずっしりきた言葉である。
その言葉が、心の水のしみたカーテンをおろした様で、彼女は狂ったように彼に悩みごとを語ってきた。
彼はどうするワケでもなく、ただ黙って聞いていた。彼女は、随分前から自分の評判は気にしていたと言う。
しかしその言い様は、ここでは相当禁物だった。
皆が耳を欹てて聞いている。
善人ばかりではない、どちらかと言うと、悪人の方が多いここでは、自分の否を認めたが最期、つけ込む輩が多いのである。
彼女は、どこからか別のところから自分を眺めている様に彼に喋り、彼はため息を呑み込む。
彼女は心の中から自分を見ていたのだ。
しばらくして、喋り疲れて黙った彼女の背後は、真っ黒に染まり込み、彼女は気付かず、彼は黙っていた。
その人群は、彼女を呑み込んだ挙句、その前にいた彼をも呑み込んだ。
彼は思わず自分の身を案じていたのだ。
二人とも狂って死んだように見えた。
人々は各々話し出し、彼と彼女について噂する者はなかった。
人にまつわる物語には、得てして活力を湧かせるものが内在してます。
孤独をモノにできるかどうかは、人を大切にできているかどうかに付随しております。