私を見てパパを思い出さないでね
最近、白髪が増えてきた。苦労しているというよりも、経年的なものである。育毛剤を塗布するために髪をかき上げると、夥しいまでに白線がなびく。認めたくない瞬間だ。
中学校卒業と同時に恋人が妊娠し十八歳になったら結婚しようとした(が結局結婚せずお互いに別の相手とくっついた)知り合いがいるが、そのとき産まれた子供にめでたく子供が誕生し、三十五歳でおじいちゃんになったことを噂で聞いた。認めたくない瞬間だ。
高校時代から精神的に成長していないせいだろうか、それとも、いつまでも子供じみた生活を送っているせいだろうか。『老けた』ということを認められない自分がいるのだが、鏡に映った醜く崩れた身体や白髪を目の当たりにすると、神様に現実を突きつけられたような気がして、遠い目になってしまう頻度が多くなってきた。「ママはアイドル」という中山美穂主演のドラマを鑑賞中に興奮のあまり「お母さん!」と叫び、家族から失笑を喰らったことが懐かしい。
今度入った新入社員のお父さんとあまり変わらない年齢であることに絶望を通り越して笑いがこみ上げてくる。抗うことのできない時の流れを「新入社員」というリアルな存在に感じて、諦めにも似た無力感が身体中を支配する。
今さら、年相応の振る舞いができるかといったら、できないわけで。かといって、若者の象徴であるピュアな気持ちを持ち合わせているかといえば、むしろ諦観の果てにある虚無に浸かりきった魂にギトギトとした劣等感をまぶしてどうにか心の安定を図っている状態だ。
若者ではなく中年になりきれない(というより認めたくない)私がやろうとしたことは、年相応に仕事を頑張ることではなく、見た目を少しでも若く見せることだった。仕事はその気になればいつだって頑張れる機会があるが、三十代中盤というこの微妙な年齢は今しかないのだ。おそらく、四十歳頃から禿げてくるだろう。ますますお腹だって出てくる。そうなる前に若作りをして、新しい出会いに備えたいという欲求を持つことを「愚かしい」の一言で断罪することができようか。不摂生がデフォルト設定のこの私には、賞味期限はあと数年もないのだよ(「テメエの賞味期限なんてとっくに終わってる、つーか、ハナから腐ってんだよっ」とか、そういうことは思っていても口に出しちゃダメだよ?)。
賞味期限を延ばすためにまず取り組んだことは、タンパク質の摂取を確実に行うことだった。身体を形成している肉や皮膚はタンパク質が重要な要素となっている。これまでは、炭水化物メインだった食生活をタンパク質メインに切り替えた。朝食は、豆乳にザバスのプロテイン(瞬発系)を混ぜて飲み、吸収を良くするために「1日分の野菜」ジュースを飲んでいる。
次は肌の手入れだ。石鹸でしか顔を洗ったことがなく、洗顔後もそのまま放置していたが、ビオレのマシュマロホイップで洗顔を行い、エリクシール(さっぱり)の化粧水と乳液で水分補給し、美容液HAKUで美白効果を付与している。3日に一回は就寝前にナイトクリームを使用することも忘れない。
髪にも注意を払っている。まずは白髪だ。1月に使用した白髪染めは、真っ黒にするタイプではない。ドラッグストアで迷っていると、店員さんが「漆黒は白髪が伸びてきたときに目立つから、少し明るめの色で染めるといいですよ。」とアドバイスをくれたからだ。1月に使用した余りを5月に使用したが、前回に染まった部分の色がさらに落ちて茶色くなり過ぎた感がある。髪型に関しては、短かったときにろくな思い出がないので、鏡を見たときに思い出さないように、伸ばしているだけだ。シャンプー・リンスはアジエンス。3日に一回はトリートメント、1週間に一回はヘアパック。禿げるまでの時間を少しでも先送りにするため、毎日のカロヤンガッシュも欠かさない。
最後は、体重管理だ。酒好きの自分にはこれが一番難しいが、これがもっとも重要なのだ。太るとシャープさがなくなり、顔の締まりも悪くなるし、体型も崩れて、メタボ中年そのものになってしまう。いくら肌がきれいで髪型が整えられても、メタボ体型では全てが台無しになってしまう。週に二回のサイクリングで汗を流していたが、最近、さぼっているから、体重が増加傾向にある。
本当は年相応に生きたかったんだけどな。
遠回りしているかも知れないけど、いつか自然な「老い」の中に幸せを見出したいと思う。
8年前に書いたものです。
今では、化粧水はDHCのフラーレン、乳液代わりにスパコラ294。
白髪染めはむしろ黒いヤーツを愛用してます。
食生活も激変。朝から冷凍スパゲティと納豆です。
……もう育毛剤は使ってません。察してください。