七話 見えざる者
大変長らく更新できずに申し訳ございません。
陳謝、陳謝です!
こうもあっさりと前回の発言のフラグを回収するとは筧自身も思っておりませんでした。
何が「執筆のペースがつかめてきた」だよ!調子乗るな!前回の内容忘れるわ!
こんな稚拙な文章で書いた小説でも読んで下さっている方々がいるというのに、誠に申し訳ないことこの上ないです。
しかし、遅れても必ず更新いたしますのでご容赦を。
またこの小説をいつもお読みになってくださる皆様へ。
「感謝、感謝です!」( *´艸`)
月が二人の真上まで登ってきた頃にやっと夢乃の涙は止まり、いや砂漠のように枯れ果てていた。
「やっと落ち着いた?」
自分の肩に顔を埋めて未だ微動だにしない夢乃に声を掛ける。
その呼びかけに反応して肩のところでコクンと頷く。
しかしそれだけで一切声は出さない。
「あのー、夢乃さん?泣き止んだならそろそろ離れて欲しいなー、なんて……」
すると彼方の背中に回っている夢乃の両腕が抱く力を増す。
「あれぇー、おかしい」
思わず素っ頓狂な声を出す彼方。自分が言ったことの正反対のことをしてくる。
「あのー、夢乃さーん?」
「イヤ」
「え?なに?」
「離れたくない」
「どーして?」
「彼方くんのせいで顔真っ赤だし、泣いたから目も腫れてるし。こんな顔彼方くんに見られたくない」
「うっ、僕はただ自分の気持ちが分かってそれが嬉しくて……」
改めて口にすると恥ずかしい。今さっき自分の意志で発言したばかりなのに、今となっては数分前の自分に敬意すら持つ。
しかしそれと同時に自分の醜さにも気が付いてしまった。
「夢乃、ごめんね」
「え?なんでまた謝ってるの?」
「申し訳なくってさ。夢乃は今までもの凄く大変な思いをしてここまでやって来たって言うのに、僕はそんな夢乃の気持ちも考えずに告白なんかして、なんか迷惑な奴だなって。本当にごめん」
「ばか!」
それを聞いた夢乃は彼方を手で押しやって離れると、そのまま立ち上がり座ったままの彼方を見下ろした。
「あたしはね、彼方くん、嬉しかったの。何回も言うようだけど半端者で名前も地位も無くしたあたしに新しい名前を付けてくれたこと、甘えさせてくれたこと、あまつさえあたしに告白までしてくれた!」
怒鳴っている夢乃の声は号泣したせいでガラガラで、さっき出尽くしたはずの涙もまた溢れてきている。
「そこまであたしに尽くしてくれた彼方くんがなんであたしに謝るの!?気持ちは分るよ、謝りたくなる気持ちは。それが日本人の美徳だもの。でも、でもね、そのごめんはあたしへの気持ちが全部嘘だったってことになるの!」
大声を出したせいで息が上がって、うまく呼吸ができない、頭もフラフラして意識が朦朧とする。
でもこれだけは伝えなければ。
空囲彼方という少年に感謝しているということも、救われたということも、そして自分もあなたに恋をしたということも。
ダメだ、意識が遠のく。「ハァ、ハァ、ハァ」息も荒くなって酸素がうまく取り込めない。
「もう、無理」
そう呟いて夢乃は倒れた。
「夢乃!夢乃!?返事をしてくれ!夢乃!」
急すぎる展開に彼方の思考回路は混線してまともな判断がこなせない。
意識を失い、荒い呼吸を続けている夢乃。
「妖ってこうなると一体どうなっちゃうんだ!?あーえっと!思い出せ僕!河童に秘薬でも貰おうか!?
ダメだ、この川には河童はいない!」
挙句、結論は出ず、
「よし、家に連れて帰ろう」
こうなった。
夢乃の身体は想像以上に軽く、最早重さすら感じなかった。
その分速く走ることができ、親が帰ってくる前に自室に飛び込んだ。
「連れて来たまではいいけど、ここからどうしよう」
症状は風邪にも見受けられるが相手はこの世のものではない。
「あー!もう!落ち着け、僕!」
テンパっていては話にならない。落ち着いて頭をフル回転させるがなかなか名案は浮かばず、結局自分が風邪を引いた時のように対応する他なかった。
「これでよしっと」
一通り風邪薬をそろえて夢乃には氷枕をさせた。親が今朝買ってきてくれた生理食塩水も用意する。
そこであることを思い出した。
「身体が全然だるくない」
夕方までは歩くのもやっとだったのにも関わらず、あの河原で目が覚めてからすこぶる調子がいい。
まるで風邪が無かったことになっているみたいに。
「夢乃、もしかして君が……」
「ただいまー、彼方寝てるー?」
「母さん!?やばい、寝たふりしないと!」
隣のベッドを見やるが夢乃が苦しそうに横たわっている。
添い寝するか!?どーする、空囲彼方!
そうこうしているうちにタイムリミットはやって来た。
ガチャ
「あれ、なんで寝てないの、あんた」
「いやぁ、これはそのう、何というかですねぇ……」
「……」
母親が黙った。これはやばいぞ。
「あんたねぇ、風邪ひいた時くらい大人しく寝てなさい!」
「ごめんなさーい!」
するとベッドの毛布がもぞもぞと動く。
頭まで毛布で夢乃を覆ったのでばれまいと思ってはいたがまさか起きるとは。
終わった、と彼方は思った。
もう毛布から夢乃の頭がはみ出している。起きてはいないがばれたと、ベッドを見ながら意気消沈していると、衝撃の一言が彼方を襲った。
「なにベッドを見つめてるの、寝たいなら早く寝なさい」
「え?」
「え?じゃないわよ、まさかベッドに何か隠してるの?」
「いや、ちがっ、そういうわけじゃ!」
バサッ
母親が毛布を引っぺがす。そして夢乃の姿が露になった。
「今度こそ終わったぁー……。」
「ってなにもないじゃない、全くもう、早く寝なさい」
「え、なにもない?」
「どう見たってどこにもなにもないわよ、茶番は終わりよ、おやすみ」
そう言って部屋を後にする母親。
色んな意味で一人取り残された彼方は毛布を剝ぎ取られても尚、寝続けている夢乃を見つめながら、そっと毛布を掛け直したのであった。
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